「そうめんスライダー」シリーズや「究極シリーズ」を開発した平林千明さんって、どんな人?
最新作の「究極のおにぎり」とタカラトミーアーツFV事業部企画課の平林千明さん
平林さんは、桑沢デザイン研究所で工業デザインを学び、卒業後、文具メーカーにデザイナーとして就職しますが、会社は半年ほどで解散。おもちゃメーカーのトミー(当時)に入社しますが、そのすぐ後にタカラと合併。
「立体物が好きだったんです。生活雑貨を作りたくて文具メーカーに就職しましたし、そういう、生活の中で使えるものが好きなんでしょうね。それで、おもちゃメーカーに入社させていただいて」と平林さん。
入社2年目に初めて作った製品はなぜヒットしたのか
タカラトミーでは、最初は上司のアシスタント的な位置で、人形の洋服などをデザインしていたけれど、ずっとそれでは面白くないと、どんどん企画を出していたそうです。「それで、入社2年目くらいのときに企画が初めて通って作ったのが、『DECOTTI(デコッティ)』という食品サンプルを模したキーホルダーを自作できるというキットでした。その頃、ホイップクリームような形の樹脂のアクセサリーを個人で作っている人がいたりして、リアルなスイーツを作るホビーの流れがあったんです。それで、パティシエの辻口博啓さんに監修をお願いして、スイーツの形のキーホルダーが作れるセットをオールインワンにまとめたんです。大人が趣味として楽しんで遊べる製品として発売しました」と平林さん。 これが、10万個売れる大ヒットとなります。しかも、この製品のホイップクリーム状の樹脂は、お風呂のタイルをくっつけるときなどに使うコーキング剤を使っているのですが、それも平林さんが自分でメーカーを探して、電話して仕入れのお願いもしたそうです。もちろん、辻口さんへのコラボも彼女が自分で思いついて、自分で交渉しています。最初から、こういうものが作りたいというアイデアが先にあって、それをヒットさせるにはどうすればいいかを自分で探してくるという、現在の彼女のものづくりのスタイルはでき上がっていたようです。
「おもちゃメーカーがやらないようなことをやっているかもしれないですね。といっても、私は化学的な成分とか、動きのメカニズムに詳しいわけではないので、そのあたりはプロに相談しています。ただ、よく分かっていないから、詳しい人が無理だと諦めるようなことも、少ない知識で技術屋さんにゴリゴリお願いして、結果、相手もいろいろ考えて実現してくださるというところもあると思います」と平林さんは屈託なく笑います。
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