今回は、公的年金の概要を簡単に説明して、私的年金の1つである「個人年金保険」を検討する際の注意点も説明します。
公的年金にあたる国民年金と厚生年金の概要
国民年金と厚生年金の対象となる人や保険料について解説します。●国民年金の被保険者
基本的に日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金制度の対象となります。
国民年金の被保険者は第1号~3号被保険者に区分されています。
・第1号被保険者は、自営業者、フリーランス、会社を退職した人、学生などです。60歳までに老齢基礎年金を満額受給できないなどの場合、60歳以降でも国民年金に任意加入することができます。
・第2号被保険者は、厚生年金に加入する会社員・公務員・パートなどです。
・第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者です。
●国民年金の保険料
第1号被保険者が負担する国民年金保険料は1カ月あたり1万6980円(令和6年度)です。第2号被保険者は、給料から厚生年金保険料が天引きされて国民年金保険料を支払っていることになります。第3号被保険者は、個別に納める必要はありませんが、第2号被保険者全体で負担しています。
●厚生年金の被保険者
厚生年金に加入するのは、会社員や公務員で、国民年金の第2号被保険者です。厚生年金の加入要件に該当すれば、70歳まで加入できます。
●厚生年金の保険料
厚生年金保険料は、毎月の給与を一定のルールで区分した「標準報酬月額」と賞与(標準賞与額)に、保険料率(18.3%)をかけて算出されますが、負担は個人と会社で折半となります。
公的年金から支給される年金で老後の生活費は足りる?
公的年金から支給される年金は、原則65歳になったらもらえる「老齢年金」。けがや病気によって障害を負ったときの「障害年金」。国民年金・厚生年金に加入していた人が死亡したとき、その人に生計を維持されていた遺族が受け取る「遺族年金」の3つがあります。公的年金制度は、2階建てとなっており、1階部分が国民年金(基礎年金)で2階部分が厚生年金となります。国民年金の加入者に対しては、要件を満たすことで基礎部分の老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金が支払われます。
老齢基礎年金の受給額は、加入期間で異なりますが、20~60歳まで40年間すべて加入している場合は年81万6000円(令和6年度・満額)です。
一方、厚生年金の加入者は、要件を満たすことで老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金がもらえます。
老齢厚生年金の受給額は加入期間や給与・賞与額が影響するため個人差がありますが、厚生労働省「2022(令和4)年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、男女の平均月額は14万3973円(老齢基礎年金含む)です。では、公的年金から支給される年金で老後の生活費は足りるのでしょうか。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職世帯の消費支出は単身世帯で月約14万5000円、夫婦世帯で月約25万円とのことです。
公的年金だけで老後の準備が足りない場合には、貯蓄を取り崩すことになりますが、現役時代から検討するとよいのが私的年金のひとつである「個人年金保険」です。
個人年金保険は、民間の生命保険会社などから販売されています。毎月一定額の保険料を払い込み、契約時に決めた年齢(60歳など)から、年金を受け取ります。
年金受給期間は、5年・10年など期間が決まっている「確定年金」と、一生涯受け取れる「終身年金」があります。
個人年金保険には以下のようなのメリットがあります。
【個人年金のメリット】
・60歳以降、再雇用などでの収入減を個人年金保険で補うことができる
・個人年金保険は、生命保険料控除が受けられるため、所得税・住民税が安くなる
一方で、「個人年金保険」に加入する際は、以下のような注意点もあります。
公的年金で足りないお金は私的年金で補う? 選択肢の一つとなる「個人年金保険」の注意点
公的年金の上乗せとして個人年金保険を検討する際は以下の2つに注意しましょう。【1】インフレに弱い
個人年金保険は、契約時点に将来受け取る年金の目標額までお金を貯め、それを一定年齢から取り崩して受取ります。個人年金に加入してから受取るまでの期間は長期間にわたる場合が多く、その間、インフレに見舞われることがあるかもしれません。
インフレとは、モノの価値が上がり、お金の価値が下がることをいいます。そうなれば、積み立てていた個人年金保険の価値そのものが目減りすることになります。
【2】途中解約すると元本割れとなる
個人年金保険は、毎月一定額を払い込みます。もし、途中で解約する場合は、契約内容や加入期間に応じて解約返戻金が支払われますが、今まで払い込んだ保険料よりも少ない場合がほとんどです。
「公的年金だけで老後を過ごすのは、心もとない……」という場合は、私的年金として個人年金保険を検討することもあるかもしれません。その際は、注意点をよく確認するようにしましょう。