米国時間の2023年6月6日より実施されたアップルの開発者イベント「WWDC 2023」では、頭に装着することで現実空間上でさまざまなアプリが利用できる「空間コンピュータ」をうたうXRデバイス「Vision Pro」が発表され、非常に大きな注目を集めました。
今回のWWDCではそれ以外にもさまざまなデバイスやサービスが発表され、中でも注目されたのは各種デバイスに向けたOSのアップデートです。とりわけ多くの人が利用しているiPhone向けのOS「iOS」の新バージョンとなる「iOS 17」は、現在のAI技術の基礎となっている機械学習をふんだんに活用し、コミュニケーションに関する機能を強化しているのが大きなポイントとなっています。
iPhone向けOSの新バージョン「iOS 17」。機械学習技術を活用してコミュニケーション関連の機能を大幅に強化しているのがポイントだ
ここではその中から、代表的な機能をいくつか紹介しておきましょう。なおiOS 17の提供は2023年秋を予定しており、対象機種は2018年発売の「iPhone XS」以降となっています。
iOS 17の注目ポイント(1)電話アプリのアップデート
まずはiPhoneの主要アプリのひとつである「電話」のアップデートです。iOS 17では電話アプリにアップデートがなされ、新たに「連絡先ポスター」という機能が追加されます。
「電話」アプリのアップデートのひとつ「連絡先ポスター」は、着信時に表示される顔写真や名前などをポスターのようにカスタマイズできる機能だ
これは着信時の表示をポスターのようにカスタマイズできる機能で、顔写真や自身で作成できる音声付きの絵文字「ミー文字(アニ文字)」などを設定し、自己表現のツールとして活用できるようにしたもの。写真だけでなく名前を示す文字の設定も可能で、日本語と中国語は縦書きにも対応しています。
・「ライブ留守番電話」も追加
留守番電話に記録中の内容をテキストに起こしてくれる「ライブ留守番電話」。電話に出ることなく内容を把握できるので、着信した通話に出るかどうかを判断しやすくなる
そしてもう1つ、電話アプリに追加されるのが「ライブ留守番電話」。これは留守番電話に録音中の内容をテキストに起こしてくれる機能で、その内容を見て電話に出るかどうかを判断できるようになります。
iOS 17の注目ポイント(2)FaceTimeに留守番電話機能が
FaceTimeもアップデートされ、新たにメッセージを残すことができるようになります。これは要するにFaceTime版の留守番電話で、相手が出ない時はビデオでメッセージを残せる機能です。
iOS 17の注目ポイント(3)「ステッカー」(スタンプ)の自作が可能に
iOS 17では、iMessageなどで送ることができるステッカー(スタンプ)に関するアップデートもなされています。
撮影した写真などからステッカー(スタンプ)を作成し、iMessageなどで活用できる。Live Photoからも作成できるので動くスタンプも作成可能だ
Live Photoなどから被写体を切り出し、エフェクトを追加するなどしてステッカーを作成。それをキーボード上から呼び出せるようにし、iMessageなどさまざまなアプリで使えるようになります。撮影した写真からステッカーを作成できるので、より楽しいコミュニケーションの実現に貢献するのではないでしょうか。
iOS 17の注目ポイント(4)キーボードの「自動修正」
電話などと同様、iOSの基本的な機能となっているキーボードにも、新たな機能として「自動修正」が加わります。これはユーザーが入力した内容をリアルタイムで学習し、文法のミスを修正してくれたり、予測変換の精度を向上してくれたりするもの。クラウドではなく端末上で機械学習処理をこなすことにより、プライバシーに配慮しながらも精度を高められるのがメリットとなっています。
同時にiOS 17では、音声入力に関しても新しい音声認識モデルが導入され、精度が高められているとのこと。文字入力全体での精度向上がなされることが期待されます。
iOS 17の注目ポイント(5)連絡先を簡単に交換できる「NameDrop」
NameDropとは、「AirDrop」の仕組みを活用して連絡先を交換する機能。iPhone同士を近づけることで、目の前の相手と手軽に連絡先を交換できるほか、コンテンツの共有等にも活用できるとのことです。
iPhone同士を近づけるだけで、目の前にいる人と連絡先交換ができるようになる「NameDrop」。日本人にはある意味懐かしさを感じさせる機能ともいえる
携帯電話を長く使っている人であれば、かつての「赤外線」に近いイメージで連絡先を交換するもの、といえば分かりやすいでしょうか。もちろん使われている技術や仕組みなどは全く違っているのですが、ある種ノスタルジーを感じさせる機能でもあります。
iOS 17の注目ポイント(6)日記を習慣付けられる「ジャーナル」
iPhone上で日記をつけられる「ジャーナル」は、写真や居場所など、その日の出来事から日記をつける要素を提案してくれるので三日坊主になりにくい
ちょっと変わった機能として挙げられるのが「ジャーナル」です。これはiPhone上で日記を付けることができる機能なのですが、日々iPhoneに保存された写真や場所などから、機械学習によって日記につける要素の候補を提案してくれるのが大きな特徴。日記にチャレンジしても三日坊主となってしまいがちな人に、大いに役立つ機能といえるのではないでしょうか。
iOS 17の注目ポイント(7)充電中にインテリアとして使える「スタンバイ」
iOS 17ではiPhoneの使用中だけでなく、充電中に利用できる機能の強化もなされており、それが「スタンバイ」です。これは横向きの状態で充電することにより、iPhone上に時計やカレンダーなど、さまざまなウィジェットを表示しておけるものになります。
充電中のiPhoneに時計などを表示できる「スタンバイ」。iPhone 14 Proを使えば画面を常時表示しておけるので、インテリアとしても活用できる
ディスプレイの常時表示に対応したiPhone 14 Proでは充電中に時計などを常時表示しておけるので、iPhoneをインテリアとして活用できることが期待されます。