医師の年収を詳しく見ていきましょう。
本記事では最新の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに、医師の年収を詳しく見ていきましょう。
最新!医師の平均年収
はじめに、医師の平均年収を見てみましょう。 令和4年の統計によると医師の平均年収は1428万円です。一般企業の部長職の平均年収は約913万円であり、医師はそれより500万円以上も高い収入を得ています。男女別に見てみると男性は1514万円、女性は1138万円であり、376万円もの差があります。この年収差の理由の一つに、医師の数が男女で大きく差があることが挙げられます。
「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、男性医師は約26万2000人、女性医師は約7万7000人であり、その差は3.4倍。そのため病院長や教授といった役職に就く人数も男性の方が多くなり、平均年収にも差が表れるようです。その他に、女性が出産や育児の影響を受けやすいことも理由の一つと考えられます。出産前後は必ず休職せざるを得ず、復職後は育児のためにフルタイムで勤務できないケースもあることから、男性より女性の方が年収が低くなる傾向が見られるのかもしれません。
医師の平均年収は、直近6年間でどう推移している?
次に、平成29年~令和4年の医師の年収の推移を見てみましょう。 直近3年間は、男女計の平均年収が1300万円以上の高水準を維持しています。一方で、男女間の年収差は拡大傾向にあり、令和元年は211万円の差でしたが、令和4年は376万円の差となっています。先ほど、年収差の理由の一つに出産・育児による女性の勤務時間の減少を挙げましたが、近年は男性が育児休暇を取得し、女性に代わって育児を行う動きが大きくなっており、今後このような年収格差が改善されるか注目です。
ずっと安定してる? 年代別で医師の平均年収をチェック
続いて、年代別の平均年収について見てみましょう。 男女ともに30代半ばには1000万円を突破し、男性は40代後半になると2000万円を突破します。その後、50代は年収が上がらなくなりますが、男性は1800万円台、女性は1700万円前後と依然として高水準の年収を維持することができます。なお、医師の定年はさまざまです。勤務医は一般的に60歳または65歳ですが、定めていない病院も多いようです。また、開業医は勤務医と異なり定めがありません。また、診療科にもよりますが、医師の数は不足していることが多く、60代以降も活躍の場が多くあります。そのため、表のように60代以降も収入が安定していると考えられます。
診療科別に年収の違いがある?
次に、診療科別の年収を見てみましょう。 グラフは勤務医の診療科別の年収を表しています。1400万円を超えているのは、脳神経外科と産科・婦人科の2つだけです。続いて外科と麻酔科が1300万円台という結果になっています。いずれの診療科も1000万円を超えているため一般的に高収入といえますが、1位の脳神経外科と最下位の眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科では400万円もの開きがあります。
勤務医と開業医の平均年収も比較
なお、ここまで勤務医の年収を見てきましたが、最後に開業医の年収も紹介しましょう。 開業医とは、個人で医院や診療所を経営している医者のことです。したがってここでは開業医=病院長として定義し、表では開業医を「病院長」と「医師」に区別していません。この表を見ると、開業医の平均年収は2699.7万円であり、勤務医の医師とは約1230万円の年収差があります。勤務医の病院長と比較してもほとんど変わらない年収です。開業医は医師一人の力で患者を診察しなければいけない苦労がありますが、経営が安定すれば勤務医よりもはるかに多くの収入を得ることができると考えられます。
医師は一般的な会社員よりも高い収入を得ることができ、さらに定年後もその年収が続く可能性があります。まさに「手に職」となる代表的な職業です。しかし、高い収入を得られる代わりに、それに見合った働きを要求されるのも事実でしょう。人間の健康を支え、命を救う、責任の重い仕事だからこその収入と言えるのではないでしょうか。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)