ただ、話していて思ったのだが、意識して日本事情にアンテナを張っていなくても、比較的浦島太郎状態が軽症で済む海外滞在先の一つが「韓国」ではないだろうか。
インフラやさまざまな制度、暮らしの在り方など、日本とよく似た点が多く、文化交流的な側面でも親密な間柄にある。そのあたりの事情を掘り下げるならば、日韓の歴史的、政治的な問題に言及することは避けられないし、韓国の人々が抱く日本に対する複雑な想いや葛藤についても忘れてはいけないのだが……。そのことをふまえた上で、本稿では、身近に常に日本文化がある韓国の様子に限定してお話ししてみようと思う。
日本の大衆文化の流入は規制されていたが……
韓国は1990年代末まで日本の大衆文化の流入を法律によって規制していたが、実際にはさまざまなルートで日本文化は韓国内にも広まっており、その当時にもいろいろな歌謡曲やアニメ、娯楽、ファッション雑誌など、韓国内で接することも不可能ではなかった。80~90年代に小学生~大学生であった世代の方たちと話していても、「子どものころX JAPANのファンだった」「女性誌『non-no(ノンノ)』を愛読していた」などという人にしばしば出会う。1998年「日韓共同宣言」後の韓国における日本大衆文化の段階的開放以降は、 映画『Love Letter』が大ヒットするなど、それまで日本の大衆文化に関心がなかった層にもさまざまな日本のコンテンツが知られるようになった。
だから幅広い年齢層の韓国の人たちと、私たちが子どものときに観たアニメや流行った音楽などについて、ちょっとした思い出話に花を咲かせることもできる。2023年現在はなおさら。日本の流行はすぐに韓国に上陸し消費される。
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