Q. プロテイン製品は腎臓に悪いのでしょうか?
プロテイン製品の腎臓への影響は?
プロテイン製品は腎臓に悪いという説があるようです。科学的に本当のことなのか、プロテイン製品の活用法と注意点も含めて、わかりやすく解説します。
Q. 「ダイエットを兼ねた筋トレのためにスポーツジムに通い、毎日プロテイン製品も飲むようにしていました。最近、プロテインは腎臓に悪いと聞いて心配になったのですが、本当でしょうか?」
A. 腎臓への影響は不明ですが、タンパク質不足は食品から補うのがベストです
プロテイン(protein)は英語で「タンパク質」を指す言葉で、肉や魚などに含まれる栄養素のひとつです。私たちの体の骨や肉、皮膚などはタンパク質でできていますから、体を健康に保つためには、タンパク質不足はよくありません。その意味では本来の「プロテイン」は体に欠かせません。一方、近年は、こうしたタンパク質を主成分としたサプリメントが「プロテイン」と称して売られるようになり、筋トレやダイエット目的で利用されています。この記事では、こうしたサプリメントのことを「プロテイン製品」と記します。
タンパク質は、20種類のアミノ酸が連結された高分子化合物です。どのようにアミノ酸が配列されているかで、自然界には異なる多種類のタンパク質が存在しています。骨や皮膚を形作っているコラーゲンや、筋肉の収縮を担うアクチンやミオシン、体内の物質の化学変化を起こす各種酵素なども、すべてタンパク質です。
普通の食事でとれるタンパク質と、プロテイン製品に含まれるタンパク質は、何に由来しているかによって多少の違いはありますが、いずれもアミノ酸から構成されています。そのため、食べた後は胃腸内で分解され、すべてバラバラのアミノ酸になってから同じように体に吸収されていきます。「プロテイン製品の腎臓への影響」が気になるのなら、タンパク質の過剰摂取が腎臓にどのような影響を及ぼすか、つまり、アミノ酸が腎臓でどう処理されるかを考えればいいことになります。
アミノ酸は、比較的小さな分子です。血液がろ過されて原尿が生成されるときに、アミノ酸は腎臓の血管の壁を通り抜けることができ、原尿中に移行します。しかし、アミノ酸は体に必要なものなので、そのまま排泄されず、一部は尿細管の壁を通って体内に再び回収されます。つまり、血液中のアミノ酸量が多いほど、腎臓の仕事量が増え、負担になります。こう考えると、「タンパク質の過剰摂取は、腎臓に良くない」と考えられます。
しかし、タンパク質の過剰摂取が本当に腎臓に悪いのかどうかは、実はまだ明確な答えが出ておらず、議論中の段階です。最近の研究では、健康体であればタンパク質を多めに摂取しても以前に考えられていたほどの悪影響はなく、むしろ「タンパク質不足」の方を気にすべきだといわれています。
近年は、ダイエットブームの影響などから日本人のタンパク質摂取量が低下傾向にあり、改善が望ましいとされています。とくに若い女性のダイエットによるタンパク質不足は、将来高齢になったときに「虚弱体質」や「老衰」につながります。体重ばかりに気にして栄養バランスのとれた食事を心がけていないと、将来大きな後悔をすることになります。
そうした意味では、タンパク質不足が気になる場合に、適量のプロテイン製品を補助的に活用するのは、悪いことではないかもしれません。
しかし、タンパク質の摂取をプロテイン製品ばかりに頼るのは好ましくありません。肉、魚、卵、乳製品、大豆など、良質なタンパク質が摂れる食材はたくさんありますし、私たち人類は、こうした食材を上手に利用して健康を維持してきました。自然の食材には、タンパク質以外にも健康に役立つ栄養素がたくさん含まれているので、それらを削ぎ落したプロテイン製品だけを摂取することで「偏食」になり、新たな栄養不足を引き起こす恐れもあります。
サプリメントはあくまで補助食品であることを忘れてはいけません。いろいろな栄養素が混在している自然の食材の良い点を、改めて見直すべきではないでしょうか。