同じ「10%」だが、そこには落とし穴が
買い物の“おまけ”としてポイントがもらえるポイントサービスが浸透してきました。会員限定で「10%ポイント還元」といった戦略を行なっているお店もよく目にします。ポイント還元につられて会員になったという経験、身に覚えがある人も多いのではないでしょうか。ではここでクイズです。今すぐ購入しなくてはならない10万円の商品が、「10%ポイント還元」と「10%割引」のどちらかを選んで購入できるとしたら、どちらを選びますか?
「◯%ポイント還元」と「◯%割引」、どちらがお得?
「◯%割引」の方がお得! 割引率が上がるとさらに差が開く
「10%ポイント還元」も「10%割引」も同じ10%なのだから、同じだけお得のはず、と感じるかもしれませんが、実は間違い。多くの人がこのような勘違いをしています。両者を比較してみましょう。◆ポイント還元の割引率
10万円の支払いでもらえるポイントは、「10万円×10%=1万円」です。
つまり、10万円の支払いで11万円の買い物ができることになりますから、割引率は「1万円÷11万円=約9.1%」となります。
◆10%割引の割引率
10%割引の場合は、「10万円×10%=1万円」が割引されます。
つまり、9万円の支払いで10万円の商品が手に入るので、割引率は当然ながら「1万円÷10万円=10%」となります。
以上のように、10%ポイント還元の割引率は10%ではなく、実は約9.1%なのです。どちらも同じく1万円分のメリットがあることに変わりないのですが、「いくら分の商品が手に入るのか」という分母が異なります。分母が大きくなれば、それだけ割引率は半減。10%ポイント還元と10%割引を比較すると、0.9%の差が生まれることになります。
さらに、同じ商品が20%還元であれば、10万円で12万円の商品を購入できることになり、割引率は「2万円÷12万円=約16.7%」に。20%割引との差は3.3%に開きます。ポイント還元率がアップするほど、「◯%割引」との差は大きく広がっていくのです。
「ポイントを使うための消費」に注意!
また、ポイント還元は「ポイントを使わないとお得にならない」ため、貯まったポイントを使うための新たな消費が発生します。ポイントが貯まっているからという理由で、普段買わない贅沢品や、あまり必要ないものを買ってしまいやすくなります。これも、その場ですぐにお得が手に入る“即効性”のある割引との大きな違いです。せっかく貯めたポイントを浪費したり、ポイントが足りないからといって余計なお金を使ったりしないように注意しなければなりません。
ポイントサービスも上手に付き合えば節約になる
ポイント還元と割引を比較すると、パーセンテージが同じであれば割引の方がお得。ただし、ポイントにしかないメリットがあることも確かです。「ポイ活」という言葉があるように、クレジットカードやQRコード決済などを組み合わせてポイントの2重取り・3重取りができたり、ポイントサービスを利用するほどランクが上がって還元率もアップするなどの優遇を受けられたり、ポイントサービスならではの楽しさもあります。
大切なのは、「ポイントを貯めること・使うこと」自体を目的にしないこと。ポイントをお金と同じように大切に扱って、必要なときに消費することを心がけましょう。もし「10%ポイント還元」につられて会員になったとしても、その後もそのお店で生活に必要なものを買うようにすれば、大きな節約につながります。「割引」と「ポイント還元」の違いを知ったうえで、ポイントサービスと上手に付き合いましょう。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)