ただ、時々、なんだかレアだからということでオークションで高値で取引されていたり、廃番商品の人気が再燃したりもします。 筆者が持っているいくつかの筆記具でも、気が付くと人気になっているものがあったので、そういう一例として、ここで紹介してみようと思います。
ただし、どれも“道具”として見た場合、特に優れているというものではありません。どちらかというと、コレクターズアイテムですから、「ふーん、こういうのあったんだー」というくらいの気持ちで読んでいただければと思います。
PALOMINO「BLACKWING 725」
まずは、今回調べてみるまで、まさかプレミアが付いているとは思いもしなかった、PALOMINOの消しゴム付き鉛筆「BLACKWING 725」。このBLACKWINGは、アメリカ・カリフォルニアのメーカーによる高級消しゴム付き鉛筆です。そして、実は日本製。だから、日本のメーカーには無い独自のデザインに加えて、鉛筆としての品質も高く、日本でも人気の製品です。・「ボブ・ディラン」にゆかりがある そして、BLACKWINGはいろいろなコラボによるデザインの製品を発表していて、この「725」は、1965年7月25日、『第5回ニューポート・フォーク・フェスティバル』で、ボブ・ディランが初めてエレキ・ギターを持って観客の前に立ち、大ブーイングを浴びたその年から50周年を記念して作られたモデル。なので、その日を表す「725」が型番になっています。
そして、その時、ボブ・ディランが持っていたフェンダーのストラトキャスターの色であるサンバーストをイメージした塗装が施されています。
ギター好きでもある筆者は当時、すぐに飛びついて、鉛筆としては高価な1本360円のこれを5本ほど購入。友人にプレゼントしたりしていました。現在、1本5000円ほどで取引されているようです。
マドンナ『THE GIRLIE SHOW』のフローティングペン
音楽ネタをもうひとつ。こちらは、マドンナの1993年のツアー『THE GIRLIE SHOW』のコンサートグッズとして売られていた、フローティングペンです。12月の福岡ドームでのライブに行った際に購入しました。アルバム『EROTICA』のプロモーションツアーで、昔の猥雑なショーをイメージさせる演出は、コンサートグッズの企画にも徹底されていました。このボールペンも、大昔に海外のお土産物として流行した「ボールペンの軸に女性の姿」が印刷されていて、ペンを逆さにすると服が消えてしまうという趣向のもの。
軸を回して芯を出す方式が主流のフローティングペンとしては珍しい“細身のノック式”で、リフィルの交換も可能。なかなかスタイリッシュなデザインで物としても悪くないのですが、まあ、ジョークグッズですね。
コンサートグッズにしては比較的安価で、当時1000円くらいではなかったかと思います。これが、eBayなどの海外オークションで3万円くらいで取引されています。一緒に買った、単に覗くと女性のヌード写真が見えるというだけのグッズでさえ、約1万5000円の値がついていました。マドンナの人気のおかげですね。
ペリカン「No.1 ボールペン」
ボールペンでは、ペリカンの「No.1」も、以前から人気が高い製品ですね。ルイジ・コラーニがデザインした樹脂製の安価なボールペンで、日本では1000円前後で販売されていました。当時は最も買いやすい価格のペリカン製品として、デザインや使い勝手も良く人気があったのですが、いつの間にか日本では売られなくなり、その後、生産自体が終了してしまいました。
・今見ても良くできたボールペン 滑らかな曲線のクリップ、お洒落なサイドノックのレバー、握るところに向けて太くなった軸のラインの美しさと握りやすさなど、今見ても良くできたボールペンです。パーカータイプのリフィルが使えるので、今なら、「ジェットストリーム」のリフィルを使うこともできます。オークションでは、2500円~5000円の間くらいで落札されているようです。
trystrams「BALL POINT PEN/ PRIMINE」
日本人デザイナーによるボールペンの名品も紹介しておきます。Twitterでも多くのフォロワーを持ち、著書も大ヒットしているプロダクトデザイナーの秋田道夫さんが、コクヨのデザインブランド、trystramsの製品としてデザインした「BALL POINT PEN/ PRIMINE」です。まだ、日本のボールペンメーカーのほとんどが、高級タイプの製品に手を付けていなかった時代に、1万円という価格で販売された、鏡面仕上げのステンレス製ボールペンです。
・中古市場やオークションでもほぼ見かけないレアな一品 クリップもグリップもない、金属製のスティックのような外見で、キャップを外すと真っ黒なグリップとペン先が現れるコントラストが美しい、現在でも、他に類を見ないタイプのボールペンです。
そして、キャップ部分は、重さが偏らせてあるので、キャップを閉じた状態でなら、机の上に置いた時に、勝手に転がっていくことがありません。
しかも、なんと、リフィルはPILOTの「アクロボール」のものが使えるので、さらさらと滑らかに書くことができます。生産終了して結構時間が経ちますが、中古市場やオークションでもほぼ見かけることがないレアなボールペンです。
トンボ鉛筆「ZOOM 858」
最後に、日本が誇るトンボ鉛筆のデザイン筆記具ブランド「ZOOM」から、筆者のお気に入りの生産終了品を紹介します。 「Zoom 858」という名前の水性ボールペンは、この短くて太いずんぐりした形が特長です。しかも、そのずんぐり具合がとても極端なのです。細身のペンや短いペン、長いペンなどは比較的よく見かけますが、まるで、高級万年筆のパロディのような、このバランスの筆記具は、なかなかレアだと思うのです。・ザラッとした不思議な手触りが特徴的 この愛嬌のあるフォルムはエッグの愛称で当時人気があって、白モデルやツヤのある黒モデルなど、いくつかのバリエーションがあったと記憶します。
筆者の手元にあるのは、梨地仕上げというよりもっとザラッとした、不思議な手触りのマットな黒軸です。当時の価格で2000円くらいでしょうか。調べたところ、eBayでは約6000円で取引されていました。