別居や妻の逆襲が本当かどうかはわからないが、結婚して33年もたつならそろそろ「それぞれの生き方」を問うてもいいのではないだろうか。
夫のひとり暮らしが始まって
「夫の単身赴任を機に別居が3年ほど続いています。お互い気が楽になったのか、以前より関係がよくなりました」そう言うのはヨウコさん(55歳)だ。28歳のときに結婚した同い年の夫が3年前に転勤になった。通おうと思えば通える距離だが、ヨウコさんは夫の身体的負担を考えて単身赴任を勧めた。
「私もパートとはいえ仕事があるし、友人たちとの関係もある。今さら夫の赴任先についていってもやることがない。ひとり息子は成人していましたし、それぞれ自分の生活を大事にしてもいいのではないかと思ったんです」
夫は最初のうち、赴任先で夫婦ふたりで暮らすつもりがあったようだが、妻の言葉に少し刺激を受けたようだった。
「老後手前のひとり暮らしもいいかもしれないと言い出して。どうしても家事がしんどかったら手伝いに行くからと送り出しました。週末に帰ってくるのを、ふたりとも楽しみにしています。1週間ぶりに会うと話が弾みますね。うちは大ゲンカもしたことがないし、仲が悪いわけではないけれど、それでも20年以上、一緒に暮らしていたら互いに飽きていたんだと思う。別居することで新鮮な関係が戻ってきました」
夫は多忙なときは近所の定食屋に行くこともあるが、基本的にはひとりで炊事もしているとか。週末、料理を披露してくれたりもするようになった。
「スマホで料理を検索しながら作っているんですって。先日は息子も久々に顔を見せて、夫の料理を堪能しました。『たまに集まると、家族のありがたみがわかる』と息子も笑顔でしたね。ずっと一緒にいると“家族”という言葉が妙に重くなったりするんだろうけど、私も別居するようになって肩の荷が下りた気がします」
夫の単身赴任は、あと2年ほどで終わる予定だが、夫婦ともにもっと続いてもいいと感じているそうだ。
>早期退職を実現した50代夫婦の場合