ラインカラーはグリーン、路線記号は千代田線の英字表記「Chiyoda」の頭文字をとってCとしている。本稿では、駅ナンバリングの順にしたがって、代々木上原駅(C01)から説明していこう。
1. 小田急線との直通運転
代々木上原駅は高架となっている小田急線との接続駅で、2面4線のうち、2番線は千代田線からの到着ホーム、3番線が綾瀬方面へ向かう出発ホームとなる。代々木上原から小田急線に直通する電車は、かつては小田急線が過密ダイヤだったので、本数が少なかった。しかし2018年3月に、代々木上原~登戸間の複々線化がやっとのことで完成したので、直通電車が大幅に増加した。現在では、平日の昼間は向ヶ丘遊園行きの急行が1時間に3往復、朝と夕方以降の時間帯は向ヶ丘遊園行きのほかに成城学園前行き、相模大野行き、本厚木行き、伊勢原行きがあり、列車種別も準急、各駅停車などバラエティーに富む(特急ロマンスカーについては次項で詳述する)。
2. 地下鉄線内を走る小田急ロマンスカー
千代田線内を小田急ロマンスカーが走っている。通称「青いロマンスカー」と呼ばれるMSE(Multi Super Express)を使用し、地下鉄線内を走るということもあって前面展望室は設けられていない。北千住発箱根湯本行きの観光用「メトロはこね」号(平日1往復、土休日3往復)のほか、朝夕の通勤特急として「メトロモーニングウェイ」(本厚木⇒北千住)、「メトロホームウェイ」(北千住⇒本厚木、大手町⇒本厚木)が運転されている。千代田線内の停車駅は、表参道、霞ケ関、大手町、北千住のみ。代々木上原駅は運転士交代のための運転停車で、ドアは開かない。また、千代田線内のみの乗車はできない。
3. 大手町駅始発のロマンスカーは、どこで折り返す?
平日夕方のロマンスカー「メトロホームウェイ」は、5本のうち1本だけが北千住始発、あとの4本は大手町始発だ。代々木上原から大手町方面へ向かう夕方以降の列車の設定はなく、回送で運転される。そして、大手町駅には折り返し施設がない。どこで車両の折り返しを行うのかというと、湯島駅の北千住寄りの上下線<千代田線ではA線(代々木上原方面へ向かう線)、B線(綾瀬方面へ向かう線)と呼ぶ>の間に留置線があり、ここで折り返して大手町駅まで回送されるのだ。一方、北千住発のロマンスカーは、綾瀬車両基地にて折り返す場合と綾瀬駅の先で折り返す場合がある。
4. 代々木公園地下にある車両基地
千代田線の車両基地は、地上にある北綾瀬の車両基地が広く知られている。しかし、もう1カ所、代々木公園の地下にも車両基地があるのだが、地下にあり、外から見えないこともあって一般にはあまり知られていない。位置的には、明治神宮前駅と代々木公園駅の間である。朝、8時台と9時台にA線(代々木上原方面行き)を走る明治神宮前行きの電車が7本ある。この電車は、明治神宮前駅で乗客を降ろすと回送電車となり、代々木公園駅の手前で引き上げ線に入り、その後バックして地下の車両基地に留置される。この基地には10両編成の電車が8本収容できるスペースがあるので、ここで夕方のラッシュ時まで休んでいる。
5. 霞ケ関駅にある謎の連絡線
霞ケ関駅に、代々木上原寄りのB線(綾瀬方面行き)から分岐する単線の線路がある。B線からはバックしないと入線できないが、この線路は近くを走る有楽町線の桜田門駅とつながっている。8・9号連絡側線と呼ばれ、もっぱら、有楽町線や南北線の車両を綾瀬車両基地に回送するために使われる。2008~2011年にかけて新木場駅と小田急線を直通する臨時特急「ベイリゾート」は、この連絡線を通過して、有楽町線と千代田線、小田急線を直通していた(有楽町線のトリビア10選の06&07参照)。
6. 新御茶ノ水駅での乗り換え路線は別の駅名
新御茶ノ水駅では、都営新宿線および東京メトロ丸ノ内線と乗り換えができる。しかし、駅名は3つの線それぞれに異なる。都営新宿線は小川町駅、丸ノ内線は淡路町駅と名乗り、一見すると全く違う駅のようだ。丸ノ内線と千代田線との乗り換えは、都営新宿線の小川町脇の地下道を5分以上歩くため、かなり時間がかかる。この両線の乗り換えは大手町駅、霞ケ関駅でも可能だ。御茶ノ水駅と新御茶ノ水駅は地上を歩く上、乗り換え指定駅にはなっていないので、運賃は別払いとなり、新たな初乗り運賃がかかるので注意を要する。
7. 2層構造の駅が4つ連続
地下鉄の駅には、島式ホームの両側に上下線(東京メトロではA線、B線)ホームがある場合、上下線(A線、B線)を挟むように2つのホームが向かい合う駅がある。このほか、A線とB線ホームが2階建て(2層)構造になっていることもある。これは地上を走る道路が狭く線路を2本並べて設置することができないときに見かける。千代田線の根津(C14)、千駄木(C15)、西日暮里(C16)、町屋(C17)は、狭い道路下に線路が敷かれたため、駅のみならず駅間の線路も2層構造が連続する特異な区間だ。
8. JR常磐線との「迷惑」乗り入れ
千代田線は綾瀬駅でJR常磐線の緩行線(各駅停車)とつながり直通運転を前提とし、一体となった運行形態となっている。常磐線の各駅から大手町や霞ケ関へ通勤するには乗り換え不要となり、利便性が向上した。一方、亀有、金町の2駅に関しては、やっかいな問題が生じた。千代田線開業前は、各駅停車のみだったので、乗り換えなしに上野に行けたのに、千代田線開業に伴い快速電車の運行開始とともに、両駅は快速が通過となり、上野へは乗り換え必須となってしまった。これが、中央線の御茶ノ水駅のように同じホームで快速と各駅停車の対面乗り換えができれば、大きな騒ぎとはならなかったであろう。ところが、快速と各駅停車の乗り換え駅となる北千住駅は、快速のホームが地上、各駅停車は千代田線に直通するホームとなるため地下深くとなり、乗り換えが非常に不便になってしまったのだ。
これは、1つには常磐線の異常ともいえる混雑を回避するため、乗客の移動ルートを分散させる意味合いもあったと思われる。千代田線で西日暮里に出て京浜東北線や山手線を利用するというルートを第2のメインルートにしようとする構想である。しかし、このルートを利用すると、北千住~西日暮里(綾瀬~北千住は千代田線区間であるが、特例として旧国鉄(現・JR)の区間にもなっている)は東京メトロの区間なので、JRの運賃プラス東京メトロの運賃が必要となり、割高となる。通過連絡運輸の特例が適用されるとしても、全区間JRではないので、北千住で常磐線快速電車に乗り換えた方が安いのだ。
こうした事情から「迷惑乗り入れ」なる言葉が生まれ、この問題は半世紀たっても解決されないままで、2022年秋には訴訟が起きている。
9. 北綾瀬支線
綾瀬駅から千代田線電車の多くはJR常磐線緩行線(各駅停車)に乗り入れているのだが、車両基地付近までは、沿線住民の便宜を図って北綾瀬駅が設けられた。かつては、綾瀬駅と北綾瀬間は千代田線の支線として、2駅を折り返すだけの短編成の電車が運行されていた。しかし2019年に北綾瀬駅のホームが10両編成に対応できるよう延伸され、千代田線本線の電車が直接乗り入れるようになった。現在、昼間は20分ごとに北綾瀬行きが走り、その間には3両編成の綾瀬~北綾瀬間の区間運転が設定され、綾瀬~北綾瀬間は10分間隔となっている。
10. 北綾瀬の車両基地には有楽町線などの車両も姿を見せる
北綾瀬にある車両基地には、千代田線の車両のみならず、有楽町線、副都心線や南北線の車両も姿を見せる。有楽町線の車両は、本稿05で説明した連絡線を経由、南北線は市ケ谷駅構内にある連絡線を使って有楽町線に入り、有楽町線の車両と同じ経路で千代田線に入線するのである。その名の通り東京のど真ん中を南北に走り抜ける千代田線。電車を待っていると「青いロマンスカー」が通過するなど、乗り慣れないと知られざる事柄も多々あり興味深い路線だ。話のネタにも使える話題を知っておくのも一興であろう。