悪口が人を不快にするのはなぜ? いじめ・ハラスメントの加害者になることも
人を傷つける悪口。いじめやハラスメントなど、仲間内での冗談では済まなくなることも……
「あの人、ちょっとおかしいよね。どんくさくて笑っちゃう」
気の置けない付き合いの人たちが集まると、そこにいない人の悪口に花が咲き、軽い調子でトゲのある言葉が次々に飛び出すこともあるようです。悪口に夢中になっている本人たちは、その言葉の影響などは考えていないのかもしれません。しかし、それを耳にした人たちは、悪口を言われている人と全く関係なくても、とてもいやな気分になってしまうものです。
そして、仲間内のたわいない話のつもりであったとしても、悪口として誰かの悪い噂話を繰り返していると、いじめやハラスメントの加害者とみなされてしまうこともあるため、注意したいものです。
では、なぜ悪口は、無関係な人の気持ちまで不快にさせてしまうのでしょう? 悪口を言うときの表情や口調、態度は、周りの人に傲慢さや暴力性を感じさせてしまいます。そのため、悪口を聞いた人は、とっさに「この人とかかわると良いことがなさそう」「危険な人たちかもしれない」などと感じてしまうのかもしれません。
悪口を言う人は昔以上に嫌われる?「SDGs」による人権意識の高まり
筆者の記憶する限りでは、2010年ごろまでは「悪口」は今よりもっと軽く受け止められていたように思います。しかし現代では、とても親しい仲間内の会話のなかでさえ悪口はやめ、不快にしない言葉を選んで伝えていこう、と思う人が増えているのではないでしょうか。この背景には、はっきり意識している人は少ないかもしれませんが、2015年に国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)の影響があるように思います。SDGsの17の目標には、人権に関する目標が多く(例:貧困をなくす、ジェンダー平等、人や国の不平等をなくす、など)、「だれ一人取り残さず」協力して生きていく社会になるために一人ひとりができることを考えよう、というメッセージが込められています。
私たちの日ごろの生活にも、SDGsのメッセージは気づかぬうちにたくさん取り入れられています。人を攻撃する言葉はつつしみ、人権を大切にする言葉を選んで使っていこう。そんな意識が学校生活や社会生活のなかで、人々の間にじわじわと広まり浸透しつつあります。だからこそ、普段の会話のなかでも、悪口が避けられる傾向にあるのだと思います。
悪口を無理なくやめる! 悪口をやめる3つの方法
SDGsをはじめとした人権尊重の意識を持つ人は、これから先ますます増えていくでしょうし、だからこそ、私たち一人ひとりが悪口を減らす意識を持つことも、さらに強く求められていくと思います。とはいえ、「人間関係のストレスを一人で抱えこむなんて無理!」「心に溜めた気持ちをだれかに聞いてほしい!」と思うことも、正直あるでしょう。それを「悪口」という形で吐き出さないようにするためには、どうしていけばよいのでしょうか? 次の3つのポイントを押さえておきましょう。
悪口をやめる方法1. ダイバーシティを意識し、「違い」を許容する
まずは、人のことをできるだけ悪くとらえない意識をもつことです。そのためにおぼえておきたいのが、「ダイバーシティ」(多様性)という言葉です。他人の行動が自分の常識に合わないとしても、多くの場合、それは単なる「違い」であり「まちがい」ではありません。人それぞれに価値観は異なり、育った文化、置かれた環境、慣れ親しんでいる生活によって行動様式も多様です。だれかが自分と異なる考え方や行動をしているからといって、それは多くの場合、「自分とは違う」ということであって「まちがい」ではないはずです。だからこそ「どちらかに合わせるべきだ」と考える必要はなく、ましてそれを強要することもできないものです。
もちろん、相手があきらかに自分勝手だったり、誤った知識をもとに行っていることに対しては、「まちがいではないか」と伝えることも、ときに必要になるでしょう。ですが、単なる「違い」であるなら「いろんな考え方の人がいる」と受け流す。そんな意識を持つことも必要なのではないでしょうか。
悪口をやめる方法2. 悪口として表現せず、「相談」として伝える
悪口が多い人は、誤ったストレス解決法をしている可能性があります。悪口を吐き出して他人と同調しあうことで、自分の考えは間違っていないと思いたい。無自覚のうちに、そういう思いがあるのかもしれません。でも、このストレス解消法は多くの人に迷惑をかけてしまいますし、自分の立場を不利にしてしまいます。さらには、悪口グセがつくと自分や仲間の人間性や存在価値まで貶めてしまうのです。こうならないためには、人間関係のストレスをだれかに聞いてほしいと思ったときに、「悪口」ではなく「相談」の形で伝えるようにしましょう。「あの人、ちょっとおかしいよね」ではなく、「あの人とどう付き合ったらいいのか、相談してもいい?」というように伝えると、悪口ではなく「相談」になります。
悪口をやめる方法3. 悪口を言ってしまったら、すぐに軌道修正する
そうはいっても、会話の流れのなかでついうっかり悪口が出てしまうこともあるでしょう。そのときには、まず「今のは悪口だった」という事実に気づくことが大事。その後、すぐに会話の軌道を修正していきましょう。「ごめん、いまのは言いすぎだったね」「悪く言うのはよくないね。撤回するね」というように伝えると、すぐに悪口の流れを止め、会話の軌道を修正することができます。「たかが悪口」と思うかもしれませんが、うっかり言ってしまった言葉が周りの人たちを不快にし、自分の信用も落としてしまうかもしれません。悪口を言ってしまいそうになる自分をセーブし、悪口を無理なくやめられるようになるためにも、ぜひ上記の3つのポイントで自分の考え方と行動を見つめなおしていきませんか?