気持ちをわかってもらえなかった
親も「他人」なので、そう簡単に自分の気持ちをわかってくれるものではない。とはいえ、感情をうまく言語化できない幼少時には、親にもっと「わかろうとしてほしかった」と、ハルカさん(37歳)は言う。「うちは自宅兼店舗で商売をやっていたので、両親は朝から晩まで働き通しでした。それでも小学校から帰る時間帯は、母はなるべく一緒にいようとしてくれていたようです。父に言われてそうしていたようですが」
ハルカさんには2歳違いの弟がいた。母は弟の話はよく笑いながら聞いていた。だが、ハルカさん自身が、その笑顔を向けてもらった記憶がないという。
「私だって学校であったことなどを話していました。でも母はいつも、『ああ、そうなの』という感じ。友だちに何か言われて悔しかったときも、『それはその子がそう思ったんだから、しょうがないんじゃない?』という反応でした。『悔しかったね』という一言がほしかったのに。弟は母同様、あっけらかんとした性格で、あまり共感を求めていなかったんでしょうね。私は母に共感してほしかった。だけど子どもだから、自分が何を求めているのかわからなかったし、母にどう接してほしいのかもわかっていなかった」
ただ、母と話すとモヤモヤする。何か満たされない。
中学生になると、思春期特有の揺れる心を持て余し、母に反抗もした。だが、母はいつものように淡々と接するだけだ。冷たくされているわけではないが、母は自分に関心がないのだ。ハルカさんはそんな思いだけが募っていった。
>「え?そこ?」リストカットした私に、母は言った