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スシロー、くら寿司でもなし得ない世界制覇を射程に捉えた、ミシュランクオリティの回転寿司「Aburi Sushi TORA」とは?

日本の回転寿司市場が飽和状態になりつつある今、「スシロー」や「くら寿司」などが海外への出店を加速させているが、現実は厳しい。そんな中、大手回転寿司チェーンでもなし得ない世界制覇を射程に捉えた、ミシュランクオリティの回転寿司店が東京の二子玉川にある。

米川 伸生

執筆者:米川 伸生

寿司ガイド

日本の回転寿司市場が飽和状態になりつつある今、「スシロー」や「くら寿司」など大手回転寿司チェーンが海外への出店を加速させているが、残念ながら日本のように爆発的に広まることはないと思っている。その大きな理由が寿司のクオリティにある。
日本の回転寿司チェーンはいま、海外進出に力を入れているが……

日本の回転寿司チェーンは今、海外進出に力を入れているが……

海外の人が日本の寿司に望む最も大きなものは「職人クオリティ」であり、これが海外で流行るか否かの生命線となっているのだ。実際、どこの国に行ってもローカルの回転寿司店があるが、そこと比べてもそれほど大きく変わらない、というのが現地の評価であろう。

実際、「スシロー」が2011年に韓国進出した時も7年間で80店舗を目指す計画であったが、現在も9店舗にとどまるなど道のりは険しい(※1)。それでもアジアならある程度の成功はすると思うが、欧米方面では相当に厳しいだろう。
 

日本のグルメ回転寿司が抱える大きな課題

では、職人が客の目の前で握るグルメ回転寿司であれば、世界に受け入れられるのか……というと答えはYES。例えば、韓国や上海に進出している「がってん寿司」は海外での売り上げがグループ全店舗でもトップクラスにあり、職人が握る寿司を安価に食べられるグルメ回転寿司の強みを存分に発揮している。

しかし、日本のグルメ回転寿司が世界で展開していく上で、乗り越えることが極めて難しいとてつもなく大きなハードルが一つある。それは「職人」の問題だ。日本においても職人確保が非常に困難になっている現在、海外に派遣する余裕、または育成する余裕がまったくないのである。

よって、日本の回転寿司が世界に広まることは無理だろうなと思っていたのだが、それを実現させてくれる寿司がようやく登場した。いま日本で一番アツい回転寿司店といっても過言ではない「九州寿司 寿司虎 Aburi Sushi TORA」だ。
「九州寿司 寿司虎 Aburi Sushi TORA 二子玉川ライズ店」

「九州寿司 寿司虎 Aburi Sushi TORA 二子玉川ライズ店」東京都世田谷区玉川2丁目21-1 タウンフロント 7F

 

ミシュランで世界初の一つ星! カナダでブレイクした“Aburi Sushi”を逆輸入

「九州寿司 寿司虎 Aburi Sushi TORA」の誕生を振り返ると、もともとは宮崎県で回転寿司「寿司虎」を経営していた中村正剛氏が単身バンクーバーに渡り、炙り寿司がメインの「Miku」をオープンさせたのが2008年のこと。その後、カナダの首相やハリウッドスター御用達の人気店となり、さらに高級和食の「Aburi Hana」を開業させたのだが、こちらの店が先日発表されたカナダ版ミシュラン「ミシュランガイドトロント2022」で一つ星を獲得したのだ(※2)

カナダ初上陸となった今回のミシュランで、星付きレストランに認定されたのは13店舗。そのうち二つ星は1店舗のみという中での星の獲得はとても価値がある。そして、回転寿司から始まった企業がミシュランの星を獲得したのは世界初のことで(銀座おのでらは寿司店からの出発)、一回転寿司ファンとしてついにこの時が来たか、という思いに駆られた。

「九州寿司 寿司虎 Aburi Sushi TORA」は、そんな、カナダで人気を得た“Aburi Sushi”をメインに、氷結熟成鮨という新時代の寿司が看板の店。特に炙り寿司はソースで食べさせるという発想が素晴らしく、日本の寿司が海外で更なる進化を遂げ、満を持して逆輸入されてきた、といった印象さえ受ける。
炙りサーモン押し寿司(税込374円)

「炙りサーモン押し寿司」374円(税込)

一番人気の「炙りサーモン押し寿司」374円(税込)はソース、トッピング、サーモン、酢飯の親和性が恐ろしく高く、その上、冷めてもおいしいというのだから文句のつけようがない。海外で支持された最も大きな要因と思われるビジュアル面も完璧。メニュー写真通りのクオリティで提供される寿司の数々は、いま最も映える寿司ともいえるだろう。

・看板商品の一つ「氷結熟成鮨」
「熟成本まぐろ中トロ」319円(税込)

「熟成本まぐろ中トロ」319円(税込)

また、氷結熟成鮨は水揚げされて間もない魚をマイナス60度に瞬間凍結したものしか使用していないというこだわり。さらに解凍している間に魚の熟成が進むというフードテックを開発し、この技術によって獲れたての鮮魚よりもおいしい寿司を実現している。
 

回転寿司の慣習を覆す「革新的」なオペレーションとフードテック

そして、一番の驚きがこれらの寿司を握っているのがガチガチの職人ではない、というところだ。パート、アルバイトの方々が誰でも握れるように独自開発されたオペレーションがとにかく革新的。ファストフードのような簡単さでハイクオリティの商品が製造されるのだからこれまでのグルメ回転寿司の概念がなんだったのか、という気にさせられる。

中村正剛氏は「世界が求める日本を創る」というコンセプトを掲げ事業展開しているのだが、ここを深掘りして、そのためにはどうしたら良いのか、これから減少する労働力と商品供給力にどう対抗するべきかを考え、簡略化されたオペレーションでハイクオリティの商品を生み出すためのロジックを完成させた。

世界で戦うためには職人に頼った寿司作りではなく、フードテックとアイデアによって新たな価値を創造しなければならないのだ。これが世界を制覇できると確信する最大の理由だ。マクドナルドのように世界にAburi Sushi TORAが展開する日も夢ではないと本当に思っている。

これまでの回転寿司における技術革新はあくまでもオペレーションの簡略化に関するものばかりであったが、おいしさと商品クオリティに関してここまでフードテックを持ち込んだ企業は存在していない。回転寿司の誕生から60年余りが過ぎ、ついに世界に向けた新たな扉が開かれようとしている。いずれ回転寿司と寿司の境目がなくなる日がきっとくるだろう。
「Aburi Oshi トリオ」495円(税込)

「Aburi Oshi トリオ」495円(税込)

熟成特選三貫づくし759円(税込)

「熟成特選三貫づくし」759円(税込)

熟成とろさば286円(税込)

「熟成とろさば」286円(税込)


【参考】
※1:SUSHIRO KOREA, Inc. 公式サイト(https://sushiro.co.kr/page/store.php
※2:ミシュランガイドトロント2022(https://guide.michelin.com/jp/ja/article/news-and-views/gmtoronto2022_jp
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