ラインナップ変化のおさらい
まず、おさらいをしましょう。従来のApple Watchは、「Series 7」「SE(第1世代)」「Series 3」の3モデルがラインナップされていました。それぞれの位置付けは、Series 7が上位モデル、SE(第1世代)は一部機能が制限されている代わりにやや安価なモデル、Series 3は安価に入手できる旧モデル——というものでした。しかし、2022年秋から「Series 3」の併売がなくなり、Series 7が8に、SEが第1世代から第2世代へアップデートされました。そして、アウトドア向けモデルとして「Ultra」が追加されました。 位置付けとしては、「Series 8」がハイエンドモデル、「SE(第2世代)」がやや安価に入手できるモデル、「Ultra」が最上位のアウトドア向けモデル——となっています。
最上位の「Ultra」はアウトドアシーンで活躍
新しく追加された「Apple Watch Ultra」は、登山やダイビングなどの過酷な環境下でも使えることが強調されたアウトドア向けのスマートウォッチです。同モデルは、筐体デザインも異なっており、例えばディスプレイ縁にエッジがあったり、ショートカット機能を割り当てられる「アクションボタン」が備わっているなどの特徴があります。アウトドア向けを意識した仕様としては、米国国防総省が定める物資調達基準の「MIL-STD 810H」に準拠するテストをクリアした耐久性を備える点に注目。動作温度は-20~55℃まであります。上述した「アクションボタン」もグローブの装着を考慮した機構です。
ほかには、通常モードでのバッテリー持ちが最大36時間まで強化され、GPSを使用したワークアウトでも最大12時間使えること、画面輝度が最大2000ニトになって屋外での視認性が良いこと、L1+L5の高精度2周波GPSに対応しており、より正確な位置測位が可能なこと——などもポイントです。 そんなUltraの価格は、Appleの公式サイトで12万4800円(税込、以下同)から。選択肢は、GPS+Cellularモデルのみで、GPSモデルは用意されていません。Apple Watchのラインナップのなかでは高額ですが、プロユースなアウトドア向けのハイエンドスマートウォッチでは10万円を超えるモデルもかなり多いので、納得感のある価格設定でもあります。
一方、バッテリー持ちは長くなったとはいえ、競合製品で見かけるような数週間レベルの通常稼働や、GPSをオンにした状態での24時間以上のワークアウト測定などはさすがに想定されていません。Apple WatchならではのApple製品とのスムーズな連携や、心地よいUX(ユーザー体験)などがメリットとなる一方で、対応できるアウトドア・スポーツシーンの見極めは必要になってくるでしょう。
こうした背景を踏まえた上で、Ultraを狙うべきなのは、まず「既存のApple Watchを使っているけれども、バッテリー持ちで不満がある人」です。
例えば、富士山を登るには、休憩時間を除いて往復で8~9時間の移動時間がかかるといわれています。Apple Watch UltraならGPSをオンにした屋外ワークアウトでも12時間持つので、使い方を工夫すれば、こうした測定にも対応しやすいでしょう。一方、これがSeries 8だとGPSありの屋外ワークアウトでは最大7時間稼働なので、1泊2日の道中なら途中の充電が確実に必要です。富士登山と言わず、日帰りのハイキングを嗜む場合でも、バッテリーに余裕を持って挑めることが、Apple Watch Ultraの大きな魅力となるでしょう。
ほかには「ダイビングやウィンタースポーツなどを楽しむ機会が多く、それでいてApple Watchの挙動に不満があった人」にもおすすめできます。例えば、Series 8やSEでも、耐水性能を備えていて、水泳やサーフィンなら問題なく利用できますが、ダイビングはサポートしていませんでした。しかし、Ultraは水深40mまでのレクリエーションダイビングに対応しますし、水温センサー搭載の水深計も備えています。
また、Apple Watchの動作温度は、通常0~35℃とされています。例えば、アプリや計測機能の対応とは別に、氷点下のスキー場では、寒すぎるせいでApple Watchの挙動がおかしくなったり、バッテリー消費が激しくなったりすることも起こり得ます。しかし、Ultraは先述の通り、-20℃でも動作するため、こうした過酷な環境でも問題なく使えるとされているわけです。
※参考:バッテリーの駆動時間と耐用年数を最大限に延ばす(Apple)
常時表示や皮膚温測定を使いたいなら「8」
とはいえ、12万円強という価格は、誰もが手を伸ばせるものではないですし、アウトドアのアクティビティを嗜まない場合にはオーバースペックな部分も多くあります。そういう意味でも、多くのユーザーが狙うべきは、GPSモデルが5万9800円~入手できる「Series 8」になるでしょう。 Series 8(とUltra)が新たに対応した、注目すべき日常向けの機能としては「皮膚温」の測定があります。0.1℃単位で皮膚温を測定でき、睡眠スケジュール内で4時間以上の睡眠をした際のデータから、女性の周期的な体調変化を理解するのに役立ちます。ちなみに、この「皮膚温」とは、口や耳で測定する「深部体温」とは異なり、環境変化の影響を受けやすい指標です。例えば、気温が異なったり、手が布団のなかに入っているのかどうかなどでも、容易に変動してしまいます。しかし、Apple Watchでは、皮膚温を測定しながら、ディスプレイ側に備えたもう一つの温度センサーで環境温度も測り、値を補正する仕組みになっています。
そのほか、従来モデルから踏襲した特徴としては、常時表示ディスプレイの搭載や、血中酸素ウェルネスの測定、心電図の測定、高速充電の対応などがあります。
こうした基本を踏まえて、Apple Watch Series 8を狙うべき人は、「Apple Watchの常時表示にこだわりがある人」「周期記録を使ってみたい女性」「ステンレススチールケースモデルを選びたい人」などになってくるでしょう。
例えば、Apple Watch SEを選んだ場合には、常時表示ディスプレイはサポートしていないので、腕を動かしたり意図的に操作したりしないと、画面が起動しません。動きづらい満員電車の中や、エアロバイクを漕いでいる最中などには、文字盤が暗転してしまいます。一方、Series 8なら、このような状況でも、目線を向けるだけで情報を確認できます。
また、他人から見たときに、Apple Watchの文字盤が表示されるため、ファッションとしての側面を楽しみたい場合にも、Series 8を選んでおくのが無難でしょう。
価格重視なら「SE(第2世代)」に注目
iPhoneでもあるように、「SE」シリーズは、基本的に過去モデルの筐体をベースに、新しい世代のチップセットなどを搭載したモデルです。Apple Watch SE(第2世代)も例に漏れず、ケースサイズは40mmと44mmの2種類展開。つまり、Series 4~6時代の筐体デザインになっているのが分かります(Series 7以降は41mmと45mmの2種類)。なお、ケース素材はアルミニウムのみを選択可能です。 価格は、GPSモデルなら3万7800円~。先述したように、一部の機能——常時表示ディスプレイや、血中酸素ウェルネスの測定、心電図の測定、高速充電——などが制限されるとはいえ、最低価格ではSeires 8と比べて2万2000円も安く入手できるのは、見逃せないポイントです。SE(第2世代)でも、活動量の測定や睡眠の計測や、通知確認、Apple Payなど、Apple Watchの基本機能は一通り備えています。Series 8の付加価値となる機能に特にこだわりがなければ、SE(第2世代)で十分に満足できるでしょう。
ちなみに、SE(第2世代)も、Series 8やUltraと同じく、新機能として「衝突事故検出」機能を備えました。高重力加速度センサーや、ハイダイナミックレンジジャイロスコープなど複数のセンサーを活用して、万が一の自動車事故の衝撃などを感知。ユーザーの操作がない場合、通信に必要な条件を満たしていれば、緊急SOS発信を自動で行ってくれます。
まとめると、「なるべく安くApple Watchを使ってみたい人」「ウォーキングやジョギングなど普段の運動を計測できればそれでいい人」「子どもに初めてのApple Watchをプレゼントしたい人」などは、まずSE(第2世代)をチェックしてみるといいでしょう。
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