亀山早苗の恋愛コラム

夫のいない夏休み、酔った夜の「ずるい言い訳」。誰もいない実家に同級生を招き入れたら…

夫を置いて子どもとふたりで帰省したら……。予期せぬ「恋の予感」に揺れる40代女性に話を聞いた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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コロナ禍を心配してか、今年は「一家で帰省」をせず、単身、もしくは子どもとのみ帰省という人たちもいるようだ。
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夫と夏休みを分けてとって

結婚して10年、共働きでひとり息子を育ててきたチカさん(42歳)。今年、小学校に入った息子には2年続けて夏休みを家で過ごさせてきたので、この夏は「それぞれの実家に息子を連れていこう」と夫と話がまとまった。

「ところがふたりとも長い休みはむずかしいので、私は早めに6日から11日まで。夫は13日から17日まで休みをとりました。私の実家は新幹線で1時間半ほどの場所。息子を連れて帰ると両親も親戚も大歓迎。翌日から1泊で親戚がやっている近くの温泉に行くということになったので、私は留守番することにしました。広い場所でたったひとりで過ごすなんて独身以来だなあと楽しみにしていたら、地元の友人たちから連絡があった」

帰ってきているなら早く言ってよ、みんなで集まろうという電話だった。それもいいかもと7日は夕方から地元の友人6人ほどで居酒屋へ。その居酒屋も友人が経営しているため、貸し切りにしてくれた。

「食べて飲んでしゃべって。楽しかったですねえ。すっかり小中学生時代に戻った感じ。宴たけなわというところで、中学時代の同級生だったユウスケがやってきたんです」

彼は中学時代に転校してきて、最初にチカさんの隣に座った男の子。チカさんはほのかな恋心を抱いていた。

「懐かしかった。いろいろ話していたら、ユウスケは今、東京に住んでいるという。なあんだ、私もそうだよと盛り上がって……」

深夜まで続いた宴は、日付が変わるころ、ようやくお開きとなった。みんな少し酔いながら、「また会おうね」と家路に着いた。

「ユウスケが私のそばに来て、送っていくよって。私の家は集落の中でもちょっとはずれたところにあって、家の周りが少し寂しい場所なんです。距離はそれほど遠くないんだけど、ユウスケも方向は一緒だし、酔い覚ましに一緒に歩こうか、と。私、サンダルを履いていたもので、途中で転びかけて足首を捻ってしまったんです」

激痛に歩けなくなったチカさんを、ユウスケさんはおぶってくれた。
 

誰もいない実家に招き入れたら

そのまま帰宅したチカさん、ユウスケさんを実家に入れた。

「今日は誰もいないから、と。誘惑したわけじゃありません。本当に足首が痛かった。ユウスケは入ってくると、氷を取り出して足首を冷やしてくれました。『早く冷やしたほうがいいから』って。せっかく来てくれたんだから、コーヒーでも入れようかと言うと、オレがやるよと言ってくれて。父がコーヒー好きなので、うち、コーヒー豆は充実しているんです。ユウスケは『お、いい豆があるなあ』と喜んで挽いてくれ、おいしいコーヒーを入れてくれました。学生時代、コーヒー専門店でバイトしていたとか、そんな話にもなって」

そういえばおいしいチーズケーキもあったはずと言うと、またユウスケさんが冷蔵庫へ。ふたりだけの宴がしばし続いた。

「なんだか少し酔いが冷めてきて、改めてユウスケを見たら、やっぱりいい男だなあって思っちゃって。このまま帰したくない、一緒にいたいと痛烈に感じたんです。そのあたりはまだ少し酔った脳のなせるわざかもしれません」

今なら酔った勢いも通用する。大人はそんな「小ずるい言い訳」も考える。ユウスケさんも不穏な空気を感じていたのか、「オレ、帰るわ」と席を立った。

「私も思わず立ち上がって、帰らないでと言ってしまった。でもうまく歩けないのでよろめいた。そこを抱きとめてくれて。ほんと、なりゆきという感じでした」

リビングの床を転がりながらお互いを求めた。欲望だけがはじけ飛んでいったと彼女は言う。

「ユウスケは『チカ、素敵だったよ。またね』と出て行きました。私はそのまま寝落ちしてしまい、起きたときは服が散らばっていて、テーブルにはカップや皿が2つずつあって……。脚を引きずりながらとにかく片づけたところへ、ユウスケがまたやってきたんです。家にあった湿布を持ってきてくれた。じゃあねと湿布だけ渡して彼は戻っていきました。自転車飛ばして来たんです。やさしいなあと思ったら、なんだか泣けてきちゃって」

夫だったら、「何やってんだよ、気をつけなよ」で終わりだろう。氷を袋に詰めてタオルにまいて冷やしてくれたり、わざわざ湿布を持ってきたりはしないはず。夫とは悪い関係ではないが、こまやかな優しさを示すタイプではないと思わず比較してしまった。

自宅に戻ってからも、チカさんはユウスケさんのことを考えていた。彼から連絡が来たのは、夫が息子を連れて自分の実家に戻ったその日のことだ。

「今日から東京で独身生活だよと返信したら、じゃあ、会おうよと。14日の夜、都心で彼とふたり、ゆっくり食事をしてラブホに泊まってしまいました。彼も私も家庭がある。でもそれには目をつぶって2度目の夜を楽しんだんです」

この先、関係がどうなるのか、チカさんの心は決まっていない。ひと夏の思い出にするべきか、はたまたこの恋に突き進むべきか。

「彼のことばかり考えてしまうのは、現実の生活が日常通りではないからだと思うんです。夫と息子が帰ってきて、また共働きのせわしない日々が始まったら、彼との時間をとれるかどうか……。彼からはさっきLINEで『16日も会おうね』と。少し怖いですね。3度目に会ったら、もう離れられないかもしれない」

岐路に立っている女性の心の揺れようがはっきりと伝わってきた。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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