亀山早苗の恋愛コラム

「夫のうしろを歩く」「夫の靴紐を毎朝結ぶ」…30代、私の常識は“気持ち悪い”ですか?

普通だと思っていた夫婦のありようが、「普通じゃない」と身近な人に言われたら? 親世代の当たり前を疑問なく受け止めている人も、なかにはいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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自分たち夫婦のありようを他と比べることはあまりない。親と同じような道のりであれば大きな不安を抱かないのが一般的なのかもしれない。
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夫のあとをついて歩く

「私が育った家庭は、今思えば、けっこう父が威張っていたんです。とはいえ、父はけっこう子煩悩でもあったし、いわゆる単に“しつけや言動に厳しい父親”だと思っていました。私は妹のいる長女で、一家で歩くときは父がいちばん前を行き、母と私たちがあとをついていくという感じだった。それほど違和感なく大きくなり、夫となった人と出会ったとき、彼もやはりさっさと前を歩くタイプだったんですよね。それまでのボーイフレンドは歩調を合わせてくれる人だったので、むしろ夫が新鮮だった。こういう人のほうが私をリードしてくれるんじゃないかと思って結婚したんです」

ヨリコさん(36歳)はそう言う。2年つきあって結婚した男性は4歳年上。それもあって「あとをついて歩くこと」が特におかしいとは思っていなかった。ところがあるとき、妹に「お姉ちゃん、平気なの?」と言われた。

「実家に行った帰りのことです。そのとき私、生後半年の子を抱っこして、なおかつおむつなどの入ったバッグを持っていたんです。夫は実家でもらった惣菜の入った袋を持っていただけ。それでスタスタ先を行くので、妹が追ってきてそう言ったんです。そういえば……と初めて気づきました。夫はよほどのことがない限り、あまり荷物は持たないし、それでいて先に行く。私はいつも焦ってついていくだけ」

だが思いやりがないわけではない。家では子どもの世話もよくするし、夜泣きがひどいときは率先して子どもを抱いてあやしている。

「私の父と同様、厳しいところもあるけど優しさもある人だと解釈していたんです。ところが母まで、夫のことを悪く言い始めた。『お母さんだって、前をスタスタ歩くお父さんのあとを必死でついていってたじゃない』というと、『あれは本当に嫌だった』って。私からすると、え、嫌だったの? だったらなんで言わないの?という感じでした」

妹は「私はお父さんが先に行くのがすごく嫌だった」と振り返った。すでに父は亡いので、今さら文句は言えないが、妹の夫は歩調を合わせてくれるし荷物だって持ってくれると妹は言った。

「お姉ちゃんがお父さんのああいう態度をよしとしていたのは知らなかったと妹に言われて。確かにいいと思っていたわけじゃないけど、そういうものだと思い込んでいたんでしょうね。自分の生まれ育った環境や親を否定したくなかったから」

ヨリコさんはあるとき、前を行く夫に「荷物を持ってくれない? それとそんなに早足で歩かないで」と言ってみた。夫は「わかった」と歩調を合わせるようになったという。
 

夫の靴紐を毎朝、結んでいた

ケイコさん(33歳)の母は、毎朝、父が履く靴の紐を結んでいた。かしずいて靴紐を結ぶ姿を、今も覚えている。

「母はそのまま、父の背に『行ってらっしゃい』と声をかけ、父はうんと頷いて出かけていくのが毎朝の光景でした。いいとか悪いとかではなく、夫婦ってそういうものかなと私は思っていたんです」

恋愛が苦手だった彼女は、30歳のときに親戚の紹介でお見合いをした5歳年上の男性と結婚した。

「新婚旅行から帰って、ふたりとも出勤する日。私のほうが30分ほど家を出る時間が遅いので、なにげなく夫が靴を履くのを見守っていたんです。夫も紐靴を履いていたので、思わずその紐を結びました。すると夫が『そういうことをするの?』って驚いていて。夫婦だものと微笑んだら、夫は満足そうでした」

ところが1カ月ほどたったころ、夫から「やっぱりやめようよ、これ」と言われた。愛情表現として、夫への敬意の表現としてしていたことを否定され、ケイコさんは落ち込んだ。

「職場の友人にその話をしたら、『なにそれ。それはケイコがおかしい』と言われて、さらにびっくり。かしずいて夫の靴紐を結ぶ妻なんて、今どきいないよ、というか夫だって気持ち悪がってるんじゃないのと言われて、さらに落ち込んで……」

帰宅した夫に、「気持ち悪かった? ごめんね」と言うと、夫は「気持ちはありがたいと思ってる。でも僕は手を取り合って並んで歩いていきたい。妻は夫にかしずくものだと考えているなら、その考えは捨ててほしい。夫婦だって別人格なんだから」ときっぱり言った。

「そう言われたら不安になりました。夫は私を守ってくれないのか、と。対等を求められると、どんなにつらくても会社を辞めたらいけないのかとか、なんでも自分ひとりで責任をとらないといけないのかとプレッシャーばかり感じてしまって……」

人間は男女関係なく、自分のことについては自分で責任をとるものではないのだろうか。仕事を続けるかどうかはまた別の問題として、少なくとも自分の生き方は自分で決めるべきだろう。誰かの庇護のもとで、誰かが選択や決断をしてくれて生きていくのはむしろつらいと思う人がほとんどだと思っていたが、必ずしもそうではないようだ。そしてそんな女性にとって、対等に生きることを求める夫のありようはストレスになるのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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