見ただけでは分からないけど、なぜか手に取りたくなる「Teno」
Lumio「Teno」6万8200円(税込)。色は写真のブラックの他、ホワイトもある。モノラルスピーカーだが、2台接続することでステレオ再生も可能。サイズは直径13cm×高さ7cm、約725g。連続点灯時間は100%の明るさで約4時間、連続再生時間は50%のボリュームで約8時間。日本での販売はアークトレーディング(https://www.arktrading.jp)が行っている。
・見た目も操作方法もどこか新しい
このような写真が似合うスピーカーも照明機器も、ほとんど見かけない。新しい体験を提供するためのもの。
光と音を新しい体験へと再構成するための道具
スイッチやつまみ類はどこにも付いていません。上部を指でタップするとライトが点灯。タップを繰り返すことで明るさが3段階に変わります。上部外側をダブルタップすることで再生・停止、電話に出る・切るの操作が行えて、お椀の外側を撫でるように二本指を上下させると、音量も上下します。上部長押しで着信拒否も行えます。実際に使っていると、せっかく「Teno」でリラックスしている状態を邪魔されたくないというケースは結構多く、この着信拒否機能は重要だなと感じました。
・柔らかい光とクリアなサウンドが快適な空間を演出 柔らかい光とクリアなサウンドが、割れたお椀のような、割れた石の塊のようなオブジェからあふれ出る体験は、音楽だけでなく、ラジオやオーディオブックなどの人の声を聴くのにも適していて、筆者はコーヒーブレイクや夜の一杯といった時に、この灯りと音だけで過ごします。その体験は明らかに従来のスピーカーや照明機器とは違っているので、たぶん、もっとさまざまな楽しみ方があると思っています。
そこで、デザイナーのMax Gunawan氏へインタビューを試みました。
Tenoとは一体何なのか? デザイナー・Max Gunawan氏にインタビュー
――Litoは明らかに本のメタファーでしたが、Tenoは、器や石、金継、裂け目、卵、波といったさまざまな要素が混在していますよね?Max Gunawan氏(以下、Max):Tenoを開発した当初から、ありきたりのスピーカーではなく、もっと“体験的なもの”を作りたいと思っていました。単なるテクノロジーの組み合わせではない、触れることによって音を感じるという新しい体験です。
そのため、これまでのポータブルスピーカーの機能を全体的に見直すことがとても重要でした。操作はスイッチボタンではなく、指を触れたり動かすことで本体表面のテクスチャーと触感にフォーカスしました。フォルムも通常のスピーカーのように典型的な四角や円柱型ではなく、手のひらに気持ちよくフィットすることを大切に開発に力を注ぎました。
・「不完全の中の完全」を目指した商品 ――表面の割れ目は、日本の陶器などが割れた時に、それを修復する「金継ぎ」にインスパイアされたとお聞きしました。Tenoでは、その「金継ぎ」のような、「不完全の中の完全」を目指したそうですね。
Max:現代のテクノロジーのほとんどは、半年もすればすぐに時代遅れになります。Tenoはそうならないことを願っており、できればその問題提起でありたいのです。
新製品はどれも「完璧」と思って開発されながらもすぐに時代遅れで廃棄されることが多いのですが、それとは異なり、Tenoは「不完全」ですがとても審美的な製品です。その不完全さは製品の真ん中の割れ目に象徴され、そこを開くと新しいテクノロジーが始動します。
・Tenoは「落ち着いた空間」を体験してもらうために生まれた ――照明機器でもあり、スピーカーでもありながら、使ってみるとどちらでもない全く別のものだと分かります。では、これは何を作ろうとして生まれたものなのでしょう。
Max:私が本当に創造したいのは、Tenoから広がる光と音が創り出す「落ち着いた空間」をフルに体験してもらうことなのです。光でスピーカーの存在を隠すことにより、自然の中にいると聞こえる心休まる音を聴くように、人はTenoの音に耳を集中させ、より純粋に音楽を楽しむことができます。
――音質については、どのような聴こえ方を想定したセッティングになっていますか?
Max:品質と機能性は、デザインとコンセプトと同様に重要です。他の同じサイズのスピーカーと同等の品質基準を確保しようと考えて、パフォーマンスを最適化するために多大な時間を費やしました。最先端のBluetooth 5.0と20WのClass D アンプを搭載し、優れた45mmフルレンジ・ドライバーにより、歪みを最小限に抑えながらパワフルなサウンドで、深みのある低音と透き通った高音を実現しています。
・デザイナー本人に聞いたお気に入りの使い方 ――使用シーンとして、お気に入りのシチュエーションがあれば教えてください。
Max:瞑想やヨガを行う際にTenoを使用するのが大好きです。また、今年の夏は、友達と夕食をとりながらアウトドアで使ったり、去年の冬は、本を読んだり、音楽を聴いたりしながらよく使っていました。
Tenoの光は小さな暖炉があるような快適な癒しを与えてくれると思います。ブランドとしてのLumioの目標は、「人間の五感に働きかける製品の開発」です。そう言った意味で、Litoは光を通しての見え方に焦点を、Tenoは音を通しての聴こえ方に焦点を当てています。現在は、触感体験にフォーカスした3番目の製品の開発に取り組んでいますよ。
不完全だからこそ手元に置きたくなる
Tenoは、その操作体験だけでなく、操作音も全て自然音を使っています。筆者は中でも、Bluetooth接続が行われると鳥の鳴き声が聞こえ、接続が切れると、鳥が飛び去っていく羽ばたきの音が聞こえるという演出がとても気に入っています。まるで、Tenoの光の中に鳥がやってきて音を奏で、鳥がいなくなると音もならなくなるといったことが起こっているように思えるのです。割れ目から漏れ出る光には、そういったイメージを喚起する余白のようなものがあります。「不完全」を製品にするというコンセプトと、この形や機能がとても合っていて、だから手元に置きたくなるのだと思いました。
参考
アークトレーディング(https://www.arktrading.jp)