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スシローは本当に悪質だったのか。消費者が“まだ”知らない「おとり広告」騒動の裏側【回転寿司評論家が解説】(4ページ目)

回転寿司チェーンのスシローは6月9日、消費者庁から「おとり広告」による景品表示法に基づく措置命令を受けた。しかし、それから1カ月余りで「半額ビールキャンペーン」でも問題が発覚。誤解を招く広告表示で物議を醸すスシローについて、回転寿司評論家が解説する。

米川 伸生

執筆者:米川 伸生

寿司ガイド

まだ終わらない……スシローに起きた2つ目の問題

ところがこれで騒動は終わらない。またしてもスシローで半額ビールの提供に関して2つの問題が起きたのである(※3)。1つはキャンペーン開始前に告知物を客席に掲示していたこと、2つ目は肝心のビールが品切れになってしまったこと。ただ前者はオペレーションの問題、後者は単純に需要予測の見誤りにすぎないと思っている。

まず、告知物をキャンペーン以前に掲示してしまったことだが、本来であればキャンペーン前日の営業終了後、もしくは当日に差し替える、というのが正しい手順である。しかし、残業時間を減らすためやら働き方改革やらで、平日は閉めている席などは余裕のある時間を使って早めに差し替えるのが常態化しているのだろう。店にとっての効率化は消費者にはデメリットしかないという典型的な話だ。これこそスシローに限った話ではなくあらゆる飲食店でおきていることのひとつだろう。

さて、半額ビールの提供が停止されていた問題だが、普通に考えてビール会社(サントリー)の在庫がなく、配達されなかったなんてことは考えにくい。この手のキャンペーンを行うときのビール会社の準備に抜かりがないことは筆者もよく知っている。となるとそもそもの発注量が足りていなかったのだろうが、これも普段の倍、もしくは3~5倍くらいの発注はしていたことだろう。しかし、それを上回る量が注文されて、パンクしてしまっただけの話だ。

なぜなら回転寿司ではアルコールの出数はかなり少なく、売り上げ構成比の数%といったところ。普段、そんなに飲まれないのだから半額にしても10倍増になんてことにはならないよな、という甘い読みがあったのだろう。普段は110円皿が4枚以上もするビールに躊躇したとしても、半額ならば飲みたい、という消費者はかなりの数いたということだ。

なお、SNSなどでは「ジョッキが普段より小さい」などという書き込みも目立っているが、普段と同じザ・プレミアム・モルツ専用ビアジョッキを使っていたのは間違いない。ただ普通の中ジョッキと比べると小さいのは確かで、初めてスシローでビールを飲んだ人が勘違いしたのだろう。

また、想定数を大きく超える注文があったのは、それだけ潜在的なスシローファンが多く、機会があれば行ってみたいと思っていた人も相当数いた証でもある。運営会社にはそれだけ影響力が強く、一挙一動に注目されているということを深く認識していただき、これまでの慣習にとらわれない柔軟さで、さらなる躍進を期待したい。

次ページ:スシローにあるのは消費者を欺く「悪質さ」だけなのか
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