もともと友だちを作るのが苦手
43歳独身、結婚の予定もないというユウトさんは、もともと誰とでも仲良くなれるタイプではないという。「しかも経済的に裕福なわけじゃないし、不規則な時間帯で仕事をしているのでスポーツジムなどにも行きづらい。それでもときどき会って一杯やるような友人がほしいなと思うことはありますね」
職場でたまに食事に行く程度の知り合いはいるが、職場の人間関係そのものがあまり良好ではないので、腹を割って話すことはできない。利害関係なしでつきあえるのは学生時代の友だちだが、今はみんな疎遠になっている。
「探せば独身の友人もいるかもしれないけど、大学を出て20年もたっているから、みんな環境が変わっていますよね、きっと。なんだか今さら……とも思ってしまって、自分から連絡をとる勇気が出なくて」
40代後半になると、既婚者たちも子どもが大きくなり、クラス会だ同窓会だと会う機会が増えてくる。だが今はまだ、多くの既婚者は忙しくしている時期だ。
「SNSで趣味や好みを書いて仲間を募ればいいのかもしれないけど。まあ、友だちがほしいと言いながら自分からは何もできないのが現状です」
月に1、2度でも何か地元自治体主催の習いごとなどをしてみると、地域で友人ができる可能性が高い。会費も民間に比べれば安いはずだから、こまめに探してみるといいのではないだろうか。
ただ、「友だちを作るために何かをする」のではなく、好きなことを見つけるほうが先なのかもしれない。好きなことをしていると、同じ趣味の人と必ず出会えるはずだから。
「おっさん」の悲哀?
「わかる」しみじみとそう言うのは、サトルさん(45歳)だ。彼もまた、独身のまま40代半ばを迎えてしまったのだという。
「30代くらいまでは彼女もいたし、まだ結婚は先でもいいやと思っていたんですよね。ところが38歳のとき彼女にフラれてからは、なぜかことごとくうまくいかなくなってしまった」
フラれた直後に、勤めていた会社が吸収合併されて彼自身は降格。収入は下がり、サービス残業の日々が続いた。職場の仲間とも吸収合併以降、なんとなく気まずい雰囲気が漂い、以前のように気楽に飲みにいけなくなった。
「リストラされた仲間もいますしね。会社の外に目を向けたものの、あれ、友だちってどうやって作るんだっけと思いました。ジムにも通っていたんですが、友だちと言える人はいない。高校時代の友人と久々に再会して、少しホッとしたんだけど、しばらくしたら彼が転勤になって……。まだまだ転勤が多い世代だから、恒常的に会う友だちを確保するのはむずかしいのかもしれませんね」
習い事をしてみても、仕事の都合で休まざるを得ないことがあり、友人を作るところまではいかなかった。
「そうこうしているうちに、友だちって必要なのかなと考えるようになりましたね。会ったこともない人とSNSでバカ話をするのも楽しいし、ひとりで映画やコンサートに行くのも悪くない。職場の同僚の女性が『ひとりで行動するのがいちばん楽しいわよ。いちばん気が合うのは自分だもん』と以前言っていたことがあって、そのときはそうかなぁなんて言っていたんですが、今になるとその気持ちがよくわかります」
学生時代の友人たちも、定年になればまた会えるようになるだろうと気長に考えることにしたという。
「友人関係で気まずくなったりするよりは、とりあえずひとりで行動していてもいいんじゃないかと今は思っています。つい先日出張のときに、SNSで知り合った人とリアルで会って食事をしました。楽しかったですよ。そんな淡い関係をいくつも持っていてもいいのかな、と。友だちとは何かを考えるとめんどうになるし、知り合い以上友だち未満みたいな関係も気楽でいいやと思うことにしています」
友人は、無理に作るものではないのかもしれない。会えるときに会える人に会う。刹那的かもしれないが、そんな人間関係も「友だち」の一種なのではないだろうか。