主人の年齢的に、末っ子が大学卒業年に60歳を迎え、定年になります
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、子ども3人の教育費としていくらのお金を残せばいいのかについて悩む29歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。子ども3人の教育費と老後のお金も心配
■相談者
ぴいさん
女性/会社員/29歳
中部/持ち家(一戸建て)
■家族構成
夫(会社員/38歳)、第1子(3歳)、第2子(1歳)、第3子(0歳)
■相談内容
我が家は子ども2人の予定でしたが、昨年3人目の妊娠がわかり、出産しました。今現在、お金のことで苦労はしていませんが、子ども3人、奨学金を借りずに大学まで進学することを想定すると大体どれくらいの貯金を残せばいいのでしょうか?
主人の年齢的に、末っ子が大学卒業年に60歳を迎え、定年になりますが、老後2000万円問題もあり漠然と不安になることがあります(65歳までは再雇用制度あり)。
住宅ローンは35年で組み、残り30年。住宅ローン控除が終わった後に繰り上げ返済をしようか、ローンの金利が0.47%と低いので繰り上げ返済はせず、投資に回そうかも迷っています。控除終了の5年後までに、現金で2500万円ほどの貯金をしようと思っていますが、繰り上げ返済や投資をする場合、手元にいくら残せば安心して生活が送れるのでしょうか?
子どもが生まれる前、私自身の年収は400万円ほどでしたが、現在、時短勤務の正社員なので給料もだいぶ下がってしまいました。子どもとの時間も確保したいので、末っ子が小学校高学年になる頃くらいまでは時短勤務希望ですが、それまで現在の世帯年収でやりくり、貯蓄もできるのでしょうか。時短勤務ですとほぼほぼ昇給なし、主人は毎年昇給があります。
よろしくお願いいたします。
■家計収支データ
■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
ボーナス時は、住宅ローンで毎月返済の10万円にプラスで18万円支払うのみで、他に使いません。旅行や、子どもの誕生日・クリスマスプレゼントなどのお金は、毎月の給料分から支払っています。
(2)貯蓄について
定期預金が満期になったので、現在、全額普通預金に入っています。毎月の16万円の貯金も普通預金にそのまま入っています。太陽光の売電もしているので(ならすと毎月平均1万円程度)、売電のお金と児童手当は別口座に分けて貯蓄しています。こちらはジュニアNISAで運用したいと考えています。それとは別に、夫の実家も夫名義なので、義両親にもしものことがあれば、土地を売ってそのお金を得ることはできます。
(3)投資商品について
毎月、外貨建て保険の積み立てに5万~6万円(ドルなので多少の前後があります)、夫が60歳になる頃には140%くらいになる予定ですが、その時のドルの価値次第なので運要素もあります。万が一、それまでに夫が亡くなった場合は2000万円がおります。その他夫婦で合わせて5万~6万円程度の株式も買っています。
(4)家計収支について
旅行や子ども関係のイベントがなければ、黒字分は全額貯蓄に回っています。そこの貯金から固定資産税や自動車税を年に一度支払っています。
食費1万5000円なのは、お米と果物を身内からもらっているので、肉・魚・野菜を主に買う感じです。子どもが小さく外で食べるほうが大変なので、外食もほとんどせず、自炊していることが大きいのかもしれません。実家が近いので、月に2~3回は実家で食事をしています。また、夫婦ともにお昼は手作りのお弁当、水筒を職場に持って行っています。
(5)住居費について
・購入年/2017年
・購入価格/5000万円
・ローン借入額/5000万円
・借入金利/0.47%
・返済期間/35年(残り30年)
・ローン残債/4200万円
※返済は毎月返済のほか、ボーナス時18万円×2回
(6)自動車について
車両費は毎月のガソリン代です。旅行や県外に出かける時は、別途高速代がかかります。昨年280万円で一括購入しました。あと10年弱は今の車に乗り、その後同じようなスペック、もしくは300万~400万円ほどのものを一括購入する予定です。
(7)加入保険について
夫/
医療保険(終身タイプ、60歳まで払込)=毎月の保険料6000円
相談者/
医療保険(終身タイプ、60歳まで払込)=毎月の保険料6000円
(8)子どもの教育費、進路について
現在、毎月保育料で6万6000円。第1子は来年度から無償化になり、第3子は来年度、保育園に入園予定ですが、3人目の無償化で3人保育園に通っても2万2000円になる予定です。世帯の納税額によって変動するので、来年度以降の保育料は、現在と比べて多少の前後はあるかと思います。
高校までは公立、大学もできれば国公立がよいですが、子どもの希望に合わせてあげられればと思っています。夫婦ともに理系なので、子どもたちも理系に進む可能性は高いかもしれません。
(9)働き方について
夫は再雇用制度を利用して、65歳まで働く予定です。退職金は、会社が401kに加入しており、退職金前払い分(月3万円)を全額拠出しています。私もこの制度を利用して、毎月1万円拠出しています。会社から60歳の退職時に支払われるお金はありませんが、401kで運用していたものが引き出せるようになるかたちです。私も時短からフルに戻ると400万円ほどに年収は戻り、そこからも昇給はしていくと思われます。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 毎月の貯蓄額を管理できれば、年400万円貯蓄が可能
アドバイス2 教育費を優先して確保し、繰り上げ返済はフルタイムに復帰してから
アドバイス3 保険の見直しと貯蓄の運用は一考を
アドバイス1 毎月の貯蓄額を管理できれば、年400万円貯蓄が可能
子ども3人を大学まで進学させることを想定すると、今から準備しておくことはとても大切です。現在は時短勤務とはいえ、3人の子どもを育てながら仕事を続けているのも立派です。無理だけはしないように気をつけてくださいね。現在、毎月16万円の貯蓄とのことですが、家計収支では26万円(児童手当を除く)の差があります。確実に16万円は貯蓄されていますが、黒字分も貯蓄に回すことが多いとのことですから、いったん毎月25万円は貯蓄できるとして考えます。
ボーナスの使い道としては、住宅ローンのボーナス時返済で年間36万円が決まった支出ですが、残りの124万円は貯蓄として残っていると考えられます。また、臨時的な支出を毎月の給料から支払っていたり、固定資産税など年間でかかる支出も生活口座から支払っているようなので、毎月の収支と年間でかかる支出を整理してみるといいのではないでしょうか。
つまり、毎月の収支はある程度、固定にし、貯蓄は25万円に。ボーナスからは100万円を確実に貯蓄に回し、残り60万円を住宅ローンの返済、年間でかかる支出、臨時的な支出に充てれば、家計管理はすっきりします。
毎月25万円とボーナスから100万円の貯蓄ができれば、年間で400万円です。ご主人が60歳になるまでの22年間で8800万円になります。現在ある金融資産1710万円を加算すると約1億500万円です。児童手当が支給されている間、別口座できちんと貯蓄できていれば、その分も上乗せになります。
子ども3人の大学までの教育費として、オール私立、大学が理系だとして6000万~7000万円を見込みます。これを差し引いても60歳時点で4000万円ほどは残る計算になります。実際の家計では、その都度教育費がかかります。計算上にはなりますが、6000万~7000万円を教育費として一括で差し引いています。
子どもが成長するにつれ、生活コストが増えたり、思いがけない出費があったり、車の買い換えもあります。計算どおりにいかないこともあると思いますが、現在の家計に計上している教育費6万6000円をバッファーとして考えておくことができます(6000万~7000万円に全部含まれているので、家計費から外して考えることができる)ので、まずは問題ないといっていいでしょう。
アドバイス2 教育費を優先して確保し、繰り上げ返済はフルタイムに復帰してから
教育費の準備と並行して、住宅ローンの繰り上げ返済も気になっておられるようですが、当面は教育費に全力投入してください。10年以内にはフルタイム勤務に戻られるお考えのようですから、収入が増えてから住宅ローンの繰り上げ返済を検討しても遅くはありません。その際は、教育費がどれだけ準備できているかにもよりますが、まずはボーナス返済分を繰り上げ返済して清算するといいでしょう。毎月の収支は収入アップで余裕が生まれています。ボーナス返済を清算してしまえば、その分、臨時的な出費があっても柔軟に対応することができるでしょう。
住宅ローン控除の適用が終了してから5年後までに2500万円の貯蓄と書かれていましたが、5年後に特別な理由がなければ、もう少し長期で俯瞰してマネープランを考えるようにしてもいいのではないでしょうか。
アドバイス3 保険の見直しと貯蓄の運用は一考を
投資にも関心があるようですが、まずは足元の家計で気になる点を述べます。基本的に無駄はないのですが、保険については見直しが必要になります。外貨建ての保険は貯蓄代わりに加入しているのか、老後資金として考えておられるのかわかりませんが、為替変動のあるもので、万一の保障を確保しようとするのはリスクが大きいでしょう。
少なくとも子ども3人が成人するまで、もしくは大学を卒業するまでの保障は、確実なもので準備しておかれてください。できれば外貨建て保険は払い済み、または解約し、あらたに割安な定期保険で、ご主人は3000万円の保障、保険期間20年、ご相談者は1500万円の保障、保険期間20年で加入してほしいと思います。さらに医療保険については、保障の内容がわかりませんが、やや保険料が割高に思われます。通販型の保険や共済など割安な医療保険を検討してみてください。おそらく、夫婦2人で保険料は1万5000~2万円で収まると思います。現在の外貨建て保険の保険料である月5万~6万円は、教育費として確実なもので貯蓄するようにしてください。
投資については、毎月5万~6万円を株式投資に充てられています。できれば税制上の優遇がある「つみたてNISA」、もしくはiDeCoを利用してはいかがでしょうか。iDeCoについては、勤務先で企業型401kが導入されているようなので、掛金を上乗せできるマッチング拠出ができるか勤務先に確認してください。マッチング拠出がなければ、iDeCoを利用することになります※。ただし、iDeCoは原則60歳までは引き出せないので、教育費のことを考えると、いつでも解約できる「つみたてNISA」のほうが使い勝手がいいといえるでしょう。
※勤務先で企業型401kが導入されている人がiDeCoに加入する場合は、労使の合意が必要でしたが2022年10月から制度改正があり、iDeCoに加入できるようになります。
もうひとつ注意していただきたいのは、ジュニアNISAです。児童手当分を運用したいとのことですが、2023年末で新規の積立はできなくなります。それ以降5年間は運用自体できますが、新規の積立ができなくなるので、ジュニアNISAにこだわることはないかもしれません。別口座できちんと貯蓄できれば十分です。
3人の子育てが大変だとは思いますが、夫婦2馬力で今からしっかり貯蓄していけば、教育費は問題ありませんし、2人の老後資金も問題ないでしょう。収入が増えて家計に余裕がでてきても、気を緩めることなく、貯蓄ペースを維持するようにしてくださいね。
相談者「ぴい」さんから寄せられた感想
アドバイスありがとうございました。大変参考になり、夫婦で勉強させていただいています。保険についてはずっと、このままでよいのかと思っていた部分だったのですっきりしました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子