日本人の間でひそかにブームとなっている海外コインがどのようなものか、資産としてコレクションするときのポイントなどをコイン収集マニアでもある筆者が解説します。
モダンコインに注目集まる。テンバガー(10倍株)も夢ではない
日本では、1964年の東京五輪記念銀貨発行をきっかけに、コイン収集に注目が集まった時期がありました。今ではそのブームも去り、コイン収集人口自体が縮小気味です。しかしそのような中でも、ある海外コインの収集がまた日本でひそかにブームを呼んでいます。それは、イギリスのモダンコインです。具体的には、世界一の天才彫刻家と呼ばれるウィリアム・ワイオンが手掛けた「ウナとライオン」と呼ばれるコインの復刻版です。オリジナルのコインは1839年に発行され、発行枚数はたったの400枚。180年以上経過していることを考慮すれば、状態の良いものが多く残っているとは言い難く、入手は困難といえます。2019年に復刻版として、イギリスのロイヤルミント(王立造幣局)から金貨、銀貨が発売され、瞬く間に完売しました。
2020年夏を境に一気に価格は上昇。2オンス銀貨でコイン鑑定の最高グレードである70鑑定が付いたものは、100万円以上で取引されるなど、当初は数万円程度で手に入ったものが数十倍で取引される状況となったのです。株だけではなく、コインにもテンバガー(10倍株)があることを見せつけた瞬間でした。
人気の「ウナとライオン」。1億5000万円で落札した日本人も
他にも人気のコインは数多くありますが、特に「ウナとライオン」のデザインが大変人気であり、オリジナル、復刻版ともに日本人が保有しているケースは多いと思われます。イギリスのロイヤルミント発行のものだけではありません。それ以外にも、セントヘレナ、オールダニーなどでも復刻版は発売されており、いずれも人気で完売している状況です。
本家であるロイヤルミントが発行した復刻版が火をつけた結果か、オリジナルの「ウナとライオン」の金貨では、2021年8月に開催されたヘリテージオークションで日本円でおよそ1億5840万円で落札されるなど高値が続いています。もちろん、これは世界最高鑑定品(PF66 Ultra Cameo)だからということもあるわけですが、落札したのが日本人というのも驚きですね。
ひそかにコレクターの多いコインの世界。楽しみ方も千差万別
このようなコインは、デザイン、資産価値といった観点から人気があります。発行枚数が少なければ、超過需要となり、価格上昇が見込めます。イギリスのモダンコインは発行枚数が少ないケースが多いため、今後も人気を呼ぶ可能性は十分にあるでしょう。日本でも以前に比べると記念コインの発行枚数は減ってはいるものの、イギリスのような数百枚、数千枚発行ほどは少なくないため、需給の観点から大きな値上がりは期待しにくいかもしれません(東京五輪の特別記念貨幣セットは除く)。
とはいえ、デザイン、美しさから見て人気が出るものもあります。国際的な賞を受賞した日本の記念コインもあり、高値を維持しているものもあります。
資産運用もそうですが、地域分散も重要です。前提としてその国や地域のコイン全般に人気がないと価格は上がりません(株式投資と同様)。海外コインの場合、為替にも左右されます。
コインに興味を持った方は、まずは手始めに日本のコイン、そして次にイギリスなど世界へ視野を広げていくと楽しさが倍増しますよ。いろいろ集めて資産として持つも良し、コレクションとして持つも良し、毎日眺めて楽しむも良し。ご自身ならではの楽しみ方で、コインコレクションを始めてみてはいかがでしょうか。
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