電力需給ひっ迫警報・注意報が発令……大規模停電の危機迫る
大規模停電(ブラックアウト)を防ぐためにできることとは
また記録的な速さで梅雨明けが宣言された今年の6月27日、急速な気温上昇により「電力需給ひっ迫注意報」が発令されました。この日、東京エリアの電力需給は16時~16時30分の予備率が4.7%、16時30分から17時の予備率が3.7%と5%を切り、非常に厳しい見通しとなりました。
2022年3月22日に発令された「電力需給ひっ迫警報」
電力需要が急激に拡大するも、大規模停電は回避
そんな中で3月22日に初めて政府から出された「電力需給ひっ迫警報」とは、東日本大震災発生翌年の2012年に制定されたもので、電力供給の予備率(いわゆる余力)が3%を下回ると予測されるときに発令されます。
電力需要に対して供給能力が十分に保たれていないと、予期しない大規模停電(ブラックアウト)が発生してしまい、インフラの停止などが発生、市民の生活に多大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。
今回は寒波によって天候が悪く、太陽光発電も期待できないという状態でした。東京電力の発表によると22日午前9時に97%を越え、データ上は午後2時に107%に至り、東京電力管内は東日本大震災以来の厳しい電力需給だったとされています。
その後、翌日の23日には一定の需要抑制が行われたということと、天候が回復して日射量が増えたことで太陽光発電の供給が見込まれたこともあり、この警報は解除されています。
一部の停電はあったものの、危惧されていた広範囲の大規模停電は避けることができました。
6月27日発令された「電力需給ひっ迫注意報」
3月に発生した福島沖地震によって大きな被害を受けた複数の火力発電所の再稼働、修理が年内には終了しないという状況で、各地で記録上最速の「梅雨明け」となり、連日猛暑日が発生する事態が発生してしまいました。そのため電力の需要が急上昇して、東京電力管内の予備率が5%を切ることになり、翌28日にも引き続き「電力需給ひっ迫注意報」は継続されています。これが3%を切るような状況となると「電力需給ひっ迫警報」が発令されることになります。原子力発電所の多くが稼働停止になっている中で、元々、古くなった火力発電所を次々と廃炉にしているような厳しい日本のエネルギー事情。太陽光発電などの再生可能エネルギーがそれを補うような規模にはなっていないのが実情です。エネルギー自給率を高めるための根本的な対策が国策として必要であり、それまでは国民が様々な不便を余儀なくされることになりそうです。
2021年にも起きていた「広範囲の停電」
2021年2月13日、今回同様に福島県沖で震度6強の地震が発生、このときも火力発電所が安全確保のために緊急稼働停止をしました。東京・東北エリアでは実に最大95万戸もの停電が発生しています。ただしこのときは発電所の故障や破損などではなく、電力供給のいわゆる「安全システム」が作動したことが理由の停電であったため、比較的短時間でシステムが再起動し、数時間から翌日午前中までに全域で停電が解消しています。
これは、急激に電力の受給バランスが崩れると発電機の連鎖的な故障などが発生してしまうため、自動的に発電機や需要を電力系統から切り離すシステム(UFR)が作動したことによります。
日本初の大規模停電は2018年9月6日
ブラックアウト―― 一般的にはあまり聞き慣れないこの言葉がほぼ初めてニュースになったのは、2018年に起きた北海道胆振東部地震の直後です。一つの電力会社の管轄の全域で大規模停電が発生してしまうとこの言葉が使われます。このときには北海道電力の管内全域、全道で295万戸もの停電が発生してしまいました。空港、駅、鉄道などの交通手段はもちろん、信号なども消え、街は漆黒の闇に包まれ、道路を走る車のヘッドライトだけが唯一の光となってしまいました。
このときは苫東厚真発電所の機器が地震により破損したことから需給が不安定となり、連鎖的に他の発電システムに影響を与えてしまったようです。それぞれの発電所は様々な理由で停止を余儀なくされました。2日ほどで供給は回復、台風などの架線への被害よりは比較的早い回復が達成されています。
もしものとき、停電を防ぐために誰もができることとは
すでに停電が発生している場合は、「東京電力停電情報」(東京電力パワーグリッド)など各電力会社の「停電情報」をスマホで見れば、速報やエリア情報を得ることが可能です。東京電力は質問への自動応答システムなどを導入、また「関西停電情報アプリ」(関西電力)などの専用アプリでは停電のプッシュ情報などを得ることができます。普段の電気の需給状況を知りたいときは、「でんき予報」(東京電力パワーグリッド)などを確認しましょう。97%を越える場合は「電力需給ひっ迫状態」が発令される状況になります。
エアコンの使用は、健康を害さない温度(夏は28℃、冬は20℃が省エネ温度)にしておきます。また家族でなるべく一つの部屋で過ごして、使用していない部屋の電気を消し、テレビなど電力を使用している家電のコンセントを抜くことで電力使用をセーブすることができます。
停電に備え、懐中電灯やランタンなどの他、非常用バッテリーを用意し、それで充電可能な機器を備えておくことも必要でしょう。