日本の気候に合うスプリングコートが登場
春や秋は外出する度に、何を着て出かければいいのか迷って、毎シーズン、薄いコートとかを買わなきゃなあと思いつつ、良い物がなかなか見つからないうちに、季節は移り変わっていくということを繰り返していました。シャツ一枚ではちょっと肌寒いとか、帰りが夜になるから寒くなるかもとか、何か羽織ってないと不安とか、そういう時に着るものというのは、あるようでなかなか無いのです。 ブルゾンでは暖かすぎるし、ジャケットは堅苦しいし、サマージャケットは合わせるのが難しい。スプリングコートは、良い物を探さないと、案外、厚手だったり裏地がしっかりしすぎていたりで、日本の気候では着られる期間が短いものが多かったり……。裏地無しで、軽く羽織れて、カジュアルな感じにも、それなりにキレイにも着られるコートと羽織の中間みたいなものがないかと探していたら、中川政七商店から、そのものズバリの「はっぴコート」という製品が発売されました。筆者が探していたのは多分これだ!と思って、早速、試着しに行ったら、見事に予想通り。「こういうのを待っていた」と思える、春秋に最高の日本風スプリングコートでした。
「はっぴ」+「コート」の融合が生み出した新しい上着
はっぴというと、何となくお祭りのアレを思い出す人が多いような気もしますが、元々は労働着というか作業服です。更に遡ると、武士が着ていた「羽織」を、町人が、襟を折り返さずにカジュアルに着こなして普段着にしたのが始まりのようです。それが、着物の袖を細く短くして野良着として使えるようにしたものや、職人服の袢纏(はんてん)、防寒着のどてらなどと混ざっていって、現在に至るというのがその歴史のようで、なかなか面倒くさいというか、混ざりすぎてよく分からないのですが、この「はっぴコート」を着ていると、「つまりは、気軽な羽織りなんだな」という気がします。そのくらい、自由度が高い軽快なコート、またはラフで丈が長めのジャケットという感じで着ることができるのです。 では、なぜ、わざわざ「はっぴ」という言葉を使っているのかというと、中川政七商店の公式サイトに「背縫いや後ろの衿の立ち上がりは当時の着物のつくりを日本らしいデザインの粋として残しています。」(※1)とあるように、デザインや縫製をはっぴに倣っているということだったり、着物と同様に、一枚布を直線裁ちで仕立てていることなど、「はっぴ」に多くのヒントを得た製品だからでしょう。
さらに、中川政七商店の得意技でもある、綿に染料を揉み込んで染め上げ、手作業の天日干しで仕上げるといった伝統技法で染められているため、柔らかな風合いになっているのも、江戸のはっぴらしさを表現しています。
家でも外でも、羽織っていたい風合いとデザイン
これ、着てみると分かるのですが、下がTシャツ一枚でも、襟つきのシャツを着ていても、このコートを羽織るだけで、何となくシルエットが決まるのです。また、Mサイズで着丈が93cm、Lサイズで着丈98cmと、だいたいヒザくらいまでの丈があるので、コート風に着られるのも気に入っています。お尻が隠れる長さがとても快適なのです。 そして、はっぴコートという名前で、襟もなければ、ボタン類も無いのですが、ポケットは付いているのが嬉しいところ。羽織るだけのシンプルな上着ですが、日常着として使ってもらいたいという中川政七商店のコンセプトが、このポケットに表されているような気がするのです。それにしても、このボタンも裏地もない、まっすぐに裁断されてまっすぐに縫われただけのシンプルな上着の、シンプルさゆえの着用シーンの幅広さに感動します。春秋の外出はもちろん、部屋の中で肌寒い時、リモートワークでの仕事着としてなど、なんだか、ずーっと着ていられるのです。夏場にTシャツの上から羽織っても良さそうです。
一枚での仕立てなので、畳めば小さくなるし軽いので、旅行にも持っていきやすいですね。筆者は、現在、濃いグレーの「墨」を愛用していますが、もう一着、「黒」も買おうかという気になっています。
参考
※1:中川政七商店 はっぴコート
(https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/e/ev0435/)
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