筆者は東日本大震災後、被災した地域に通って活動をしていた中で、いろいろな方の話をうかがいました。その中には津波にのみ込まれて奇跡的に助かった人もいました。このような経験で得た知識も含め、今回は「備えは3つのシーンにあわせて準備する必要がある」ということと、その3つの中でもとくに“自宅での備え”に関して注意したいことをご紹介します。
携帯する・持ち出す・備える…… 無印良品の防災セットは3つのシーン別に発売
無印良品から発売されている防災セットは大きく分けて「いつものもしも携帯セット」「いつものもしも持ち出しセット」「いつものもしも備えるセット」の3種類。外出先から歩いて帰るときなどに役立つセット、家から避難するときに持ち出したいセット、そして自宅で避難するときに役立つセットという3シーンに分かれているわけです。 災害に対して備えるときは、まさにこの3つのシーンに分けて考えることが大切。出先で何か起こったとき、家から避難所などへ今すぐ避難しなければならないとき、そして自宅での避難、これらのシーンでは必要となるものが変わってくるからです。シーンを意識しないで備えていても、いざというときに必要なものがないという可能性も出てきます。
3つのシーンに共通して必要なのは「命を守るもの」
シーンによって必要なものが変わってくるといいましたが、共通しているものもあります。まずは、水・食料・防寒具・薬。防寒具は後回しにされがちですが、どんな季節に災害が起こるかもわかりません。極寒の中、外で避難しなければならないとき、防寒具がないと寒さで体力を奪われてしまいます。薬については、傷薬や消毒薬などもあればよいのですが、それ以上に日常的に薬を必要としている人は災害時の分も常備しておかなければなりません。
次に必要となってくるのが、スマートフォンやそれを充電するためのバッテリーなど情報を得るための手段。水や食料のように、直接命を守ることにつながらないように思えますが、情報化社会の今、 「あっちは危ない」「どこどこが臨時避難所として受け入れている」「水がある」 といった命を守るための情報が入ってきます。また、情報が入ってこないことに対して不安が増してしまうということもありますので、備える優先度は高いでしょう。 以上のものを前項のそれぞれのシーンで備えておかなければなりません。また3つのシーンで共通するもの以外の備えについては、家族構成やライフスタイル、通勤通学手段や距離などによって違ってくるものもあるため、自分の場合は何が必要かをまずは書きだしてみることをおすすめします。市販されている防災セットには、何が入っているのかも参考にするとよいでしょう。
食料備蓄はローリングストックがあわない人もいる
自宅での食料備蓄に関して、「気づいたら賞味期限が何年も前に切れていた」というケースが多いことから、ここ数年はローリングストックが推奨されることも増えました。ローリングストックとは、こちらの「防災首都圏ネット」のページにも紹介されているように、食料や日用品を常日頃から少し多めに買って、古いものから日常で消費し、減った分を補充していくという方法です。しかし、ノートをつけるなどして正確な在庫管理をできる人であればローリングストックも向いているのですが、そうでない人にとっては「気づいたら使い切ってなくなっていた」「多めに買いすぎて賞味期限が切れていた」ということになり、年単位の長期保存できる非常用食材の管理をするのと変わらないくらい難しいことなのです。
それであれば、やはり備蓄分は分けて管理し、定期的に入れ替えをして消費していくほうが管理がしやすいという人もいます。
筆者は、ある程度の量の食料品や水を備蓄分として箱に入れて別管理し、3月と9月に入れ替えて消費しています。3月は東日本大震災があった月であり、9月は関東大震災があった月なので、どちらもメディアなどで防災に関する話題があがり、思い出しやすいからです。
こちらは今年の2月末に買った食料品ですが、どちらも9月まで賞味期限があります。レトルト食品やカップ麺、缶詰などの賞味期限は短くても半年の猶予があるものが多いので、半年後に消費するには問題ありません。
トイレットペーパーも備蓄が必要
コロナ禍となり全国的にトイレットペーパーが品薄になって苦労したというのは記憶に新しい出来事です。あのときの不足は、災害が原因ではありませんでしたが、実は経済産業省などからもトイレットペーパーの備蓄は推奨されています。それは日本のトイレットペーパーの約4割が静岡県で生産されており、静岡県が東海地震等、今後地震が発生する確率が高いといわれているからです(参照:トイレットペーパーを備蓄しましょう!|経済産業省)。
自然災害だけではない自宅避難の準備
いざというときの備えというと、自然災害を思い浮かべがちですが、自宅での備えにおいてはそれだけではありません。交通事故で電柱が倒れて停電になる地域が出たり、工事中のトラブルで水道管が破裂して断水になったり、物流が滞るような事態になり、スーパーに商品が届かないというようなことも可能性としてはありえます。そのような事態になった場合でも慌てずに、ある程度ふつうの生活ができるように備えておきたいものです。 備えあれば憂いなしといいますが、いざというときに困らないでいいよう、焦らないでいいように、各自が自分にとって想定できるシーンにあわせて、準備をしておきたいですね。