預金・貯金

単身世帯の貯蓄平均は1062万円。貯蓄がない世帯が3割を超える

金融広報中央委員会(知るぽると)が毎年発表している「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」の単身世帯調査によれば、保有する金融資産額は4年ぶりに1600万円台を回復しました。2人以上世帯と同じく株式や債券価格の上昇が金融資産の増加に大きく寄与しましたが、単身世帯は預貯金も増やしているという2人以上世帯と別の顔を見せています。単身世帯の調査の内容を詳しく見ていくことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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単身世帯の方が、2人以上世帯よりも、貯蓄格差は大きい

金融広報中央委員会(知るぽると)が毎年公表する「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により年をまたぎ2022年2月14日の公表となりました。単身世帯の調査は従来通り「インターネットモニター調査」で変わることはありません。
単身世帯の貯蓄格差は大きくなっている

単身世帯の貯蓄格差は大きくなっている

2021年の調査によれば、単身世帯が保有する家計の金融資産(貯蓄)の平均額は1614万円、中央値が500万円となっています。平均額が1600万円を超えたのは2017年の1771万円以来4年ぶりのことです。2020年調査では平均額が1044万円、中央値が300万円ですから、平均額は570万円、中央値は200万円の大幅増となっています。

ただし、平均額の1614万円、中央値の500万円は金融資産を保有している世帯だけの金額になります。2021年調査では金融資産を保有していない単身世帯は2020年より3ポイント減少の33.2%います。この保有していない世帯を含めた2021年の平均保有額は1062万円、中央値は100万円となっています。平均保有額の1000万円乗せは初めてのことです。平均額は409万円、中央値は50万円の増加となっています。
 
金融資産を保有していない単身世帯は2016年のピークである48.1%から5年連続減少していますが、平均保有額などから判断する限り持つ者と持たざる者の差は、2人以上世帯よりも単身世帯の方が拡大しているように見えます。新型コロナウイルス感染拡大による影響は2人以上世帯よりも単身世帯の方が大きいのかもしれません。
 

単身世帯は外貨建て商品の保有が大幅増

以下で家計が保有する主な金融商品の内訳を見ていきますが、データは金融資産を保有している単身世帯のみの抜粋になります。
 
「預貯金(運用または将来への備え)」は、1年前の441万円より230万円増やして671万円となっています。ただしピークの2017年の839万円と比べて168万円少ない状況です。そのうち「定期預貯金」は1年前より140万円増加させて348万円になっています。また、生命保険も76万円増やして165万円としています。額は少ないものの財形貯蓄は、1年前より3万円減らして12万円となっています。
 
大幅に保有額を増やしたのは株式、投資信託です。債券も増えているものの増加額は1年前と比べて8万円に過ぎません。株式は215万円から341万円に、投資信託は108万円から200万円に大幅増加させています。投資を行っていた人は株価上昇に与り、投資を行っていない人は恩恵に与れなかったことになります。
 
NISAの保有額は1年前の176万円から216万円、つみたてNISAは32万円から50万円、iDeCoは99万円から119万円に増やしていますが、節税効果のある制度の利用は少額です。単身世帯で際立つのが外貨建て商品で、1年前の322万円から614万円と倍増に近い増加額となっています。2021年は年末にかけて外貨高・円安になりましたが、増加の要因は為替相場の影響だけではないと考えられます。
 

単身世帯の投資スタンスに変化は見られない

保有する平均額は大幅に増えたものの、家計の金融資産に関していえば実生活ほど新型コロナウイルス感染拡大による影響は少なかったようです。なぜなら、1年前と比較して金融資産の残高が増えた世帯は4.1ポイント増加の40.4%、変わらないは0.6ポイント増加の38.8%、減ったのは4.7ポイント減少の20.8%だからです。単身世帯で金融資産残高が増えた世帯が40%を超えたのは2017年以来4年ぶりのことです。
 
金融資産の残高を増やした理由は「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」が1年前の17.6%から32.0%に、「配当や金利収入があったから」が18.0%から24.5%に増やしています。「定期的な収入が増加したから」は1年前の35.4%から26.3%に、「定期的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が30.7%から25.1%にそれぞれ減少となっています。投資した資産が値上がりしたことで金融資産が増えたということがわかりますね。
 
一方、金融資産の残高を減らした理由は「定期的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」が1年前の42.8%から51.6%と半数を超えています。50%を超えたのは2010年以来11年ぶりのことです。その他の理由は1年前より減少しているのですが、「耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから」は10.8%から15.3%に、「株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから」は35.9%から17.3%に減らしています。
 
2021年は投資した資産が値上がりしたことが貯蓄額の増加に大きく寄与した一年でしたが、単身世帯には投資スタンスに変化は見られませんでした。金融商品を選択する際に重視することという質問への回答では「収益性」が1年前より0.8ポイント増えて35.5%に、「安全性」は3.2ポイント増加して27.8%、「流動性」は0.3ポイント増加して21.0%になりました。
 
一見、収益性が最も高いので単身世帯もリスクを取った商品選択をするのかといえば実際は、元本割れを起こす可能性があるが、収益性が高いと見込まれる金融商品の保有に対する質問への回答では「そうした商品についても、積極的に保有しようと思っている」が1年前より0.2ポイントとわずかに増えて12.8%に、「そうした商品についても、一部は保有しようと思っている」が0.4ポイント減少して31.6%と、ともに1年前とほとんど変わらないのです。

また「そうした商品を保有しようとは全く思わない」は0.1ポイント増加して55.5%になりました。過去10年で見ても、保有しようと全く思わないと回答している2016年の64.9%から、徐々にその割合が減少しているとはいえいまだ55%もあるのですから、単身世帯は収益を求めてはいるものの、実際は元本割れのある投資には抵抗があると考えられます。
 

日常の生活資金の借入は4年連続40%台

最後に簡単に借金についても見てみましょう。借入金がある世帯は2020年の17.6%から2021年は16.4%と1.2ポイントの減少にとどまりました。2015年以降は借入金がある単身世帯は20%を切っています。

気になるのは単身世帯の借入の目的です。最も多い「日常の生活資金」で1年前より3.8ポイント減少していますが、41.1%もあるのです。日常の生活資金を目的として借入金がある割合が40%を超えているのは2018年から4年連続です。単身世帯の一部はかなり厳しい生活が続いていることがうかがえます。

※2021年は調査対象年齢が70代まで拡大したため、2020年と対象年齢は一致しませんが、参考の数値として昨対比を入れました

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