義母と同居に大反対の実母
結婚して共働きをしながら6年たち、子どもがふたりになったところで、「手伝えることがあれば言って」と日頃から助けてくれた義母と同居することになったハツネさん(40歳)。ひとり暮らしだった義母が住む一戸建てを改築し、一緒に住んで3年になる。
「当時、実母にその話をしたら大反対。『あんな高慢ちきな姑と一緒に住んだら息がつまるわよ。そもそも私だってひとり暮らしなのに、なんであっちに行くのよ』と罵られました。『おかあさんのそういうところが嫌なの!』と一刀両断して、私は義母の元へ。母はキーキー騒いでいましたね。もともと母は過干渉で私をひとりの人間として認めていない。だからこそ認めてくれる義母と仲良くなっていったんです」
1階にリビングやキッチン、バスルームなどと義母の部屋があり、2階にハツネさんたち4人が暮らした。だが義母の提案で、2階にも小さなキッチンとバスルーム、トイレは作った。
「これが義母の賢いところですよね。『いつも一緒にいると私が息苦しくなっちゃうかもしれないから、ときには別々に過ごしたほうがいいと思う』と最初からいってくれた。ふだんは義母が夕食を作ってくれているのですが、週末などは『私は友だちと食事に行くから、あなたたちは勝手にしてね』とか、『今日は私が子どもたちを見ているから、ふたりでデートしてきたら?』とか、そうやって提案してくれるんです。私が遠慮していると見抜いての発言、しかもタイミングがいい。あなたのおかあさんはすごいねと、私はいつも夫に言っています。夫から義母にそれが伝わって、さらに円満という感じ」
穏やかな義母からは、子どもたちも学ぶところが大きいとハツネさんは感じている。たとえば7歳と5歳の兄弟は、しょっちゅうケンカをしている。ハツネさんは「いいかげんにしなさい」と怒ってしまうが、義母はケンカを注意深く見ているのだという。
「どちらかが怪我をしそうになるまで見ている。そして最後に、『何があったの、話してごらん』と言い分を聞く。ジャッジはしないんですよ、これがすごい。どちらが悪いか考えさせるんですが、結局、どちらも悪いことが子どもながらにわかるから、お互いに謝って終わる。それを何度か繰り返しているうちに、子どもたち自身がケンカすることのバカバカしさに目覚めたようです。最近はケンカしなくなりましたね。義母のおかげです」
実母が乗り込んできて
義母との同居は大正解。2階に水回り部分があることで、多忙な朝は食事も2階ですませることができるし、お風呂の順番などでイライラすることもない。「私がイライラするのは、実母から連絡があること。夜、時間があるときに義母とおしゃべりするのも楽しいんですが、そういうときに限って実母から電話がかかってきたりするんです。放っておくんですが、『寂しいのよ、話してあげたら』と義母に言われてしかたなく出ると、『またあの女と一緒にいるの』と。義母を“あの女”呼ばわりするのが許せなくて。だいたいすぐ切ってしまうんです」
実母は急にやってくることもある。義母は時間があれば家に上げてもくれる。だが実母は娘と話したいとさっさと2階に上がってきてしまう。
「うちの母は、そもそも失礼な人なんですよ。人に対する敬意がない。義母に申し訳なくて。もう来ないでと言っているんですが、先日などは『お金貸してくれない?』と。父の遺産もあるはずなので、『絶対に貸さない』と言ったら大激怒。遠方にいる姉は、おかあさんは寂しいんだよというけど、友だちもいないのは性格が悪いからですよね。本当に縁を切りたいくらい……」
自分より結婚相手の母親に懐いている娘。ハツネさんの母の立場になってみれば、悔しいし寂しいのだろうと想像はつくが、娘を追いやったのは自分だという認識がなさすぎるとハツネさんは言う。
「見守ってくれる母親の愛情というものを、私は夫の母から初めて得ました。この人はいつでも私の味方をしてくれるという安心感がある。万が一、夫のことを嫌いになったとしても、義母のことは好きでいつづけると思います。そう言うと夫は苦笑、義母は爆笑していますけどね」
ここまで義母との関係が良好な人は珍しいのかもしれない。相性もあるだろう。だが、義母に救われた人がいるのは事実である。