人間関係

高校生に親の管理はどこまで必要?「自分で考える力」の育て方

【公認心理師が解説】高校生の子どもの夜更かしや時間の無駄使い……。親は気になるものですが、自分で考えて決める「セルフコントロール」ができる大人になるためには、ある程度の「自業自得」の経験も重要です。親はただ厳しく管理するのではなく、語りかけで成長を促しましょう。高校生への効果的な親の語りかけのポイントを4つのステップでお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

放任も管理しすぎもNG? 高校生の子への接し方の正解は?

スマホを見る女の子

「いつまでも遊んでばかりで心配」……高校生の子に親としてどう語りかけ、かかわるか

高校生は、生き方の軸(アイデンティティ)を築く大切な年代。「自分らしさ」を見出し、社会的責任を果たしながらどう生きるか、模索する年代です。
 
「大人になる」ということは、自分で主体的に考えて物事を決め、選んだことに責任を持つということ。親や教師、仲間の意見などを参考にしつつも最終的には自分自身で考え、やるべきことを決めていくことが必要です。
 
決めるのは進路や勉強に関することだけではなく、身近な生活の一つひとつについても自分でどうしたいのか、どうするべきかを考え、行動を選んでいくのです。前回の記事では「高校生の子の可能性を閉ざす7つのNGワード」についてお伝えしましたが、今回は高校生の子がセルフコントロールのできる大人になるために、親が積極的に行うべき語りかけについてお伝えします。
 

親の管理の効果は一時的……子の将来の主体性をつぶさないために

子どもが目先の楽しみにとらわれて「夜更かし朝寝坊」になっていると、親はとても心配になるものです。子どもの就寝時刻や起床時刻を決めたり、しばらくスマホを取り上げて厳しく管理しようと考えたりするかもしれません。
 
そのように高校生の子の行動を親が管理しつづけると、当面は「きちんと行動できる子」になったように見えるでしょう。しかしそれは自分で決めて選んだ行動ではないため、大人になってから困ったことになる可能性があります。
 
たとえば、一人暮らしを始めて親の管理を離れたそばから自堕落になり、仕事や生活などのさまざまな面で自分の考えや行動のポリシーを持てなくなるなど、大人になってからの子の人生にマイナスの影響を与えてしまうことがあるのです。
 

高校生の年代には「自業自得」の経験も重要

たしかに、夜更かしが続く子に対して何もしないでいると、翌朝起きられずに遅刻して先生に怒られたり、勉強が滞って成績が下がったりと、困ったことになるかもしれません。ですが、「自業自得」もある程度経験しないと、生活のリズムを守ることがなぜ必要なのか、実感として理解できなくなります。
 
高校生は目先の欲求や感情を上手に扱えるわけではなく、セルフコントロールが未熟な年代です。そのため子どもが困らないように、親が効率的な方向にレールを敷いてしまいがちなのですが、それは長い目で見ると子どものためになっていないことが少なくないのです。
 
では、高校生の子をセルフコントロールができる大人に導くには、親はどのような語りかけをするとよいのでしょう。子ども自身の判断を促すために、次の4つのステップをお勧めしたいと思います。
 

1)心配していることを率直に伝え、子どもの意見を聞く

生活の乱れ、勉強が進んでいない様子など、子どもの行動を見守りながら、心配していることを率直に伝えます。ただし、この段階では「こうすべき」と先に答えを示さず、親の意見に対して自分がどう思うか、自分としてはどうしたいのか、本人の考えを聞き出します。
 

2)子どもが決めた行動を後押しする、親として勧めたいことを伝える

1)で子どもが「こうしたい」という改善案を自分で伝えてくれたら、否定せずにまずはそれをやってもらいましょう。親に言われたことより、自分で決めたことの方が取り組みやすいものです。意見が出なければ、「こうしてみてはどうか?」と子どもが無理なく行えそうなことを提案してみましょう。
 

3)約束は破られるもの。気長にリマインドを続けていく

高校生にもなれば、親がべったりサポートするのは考えもの。2)で話し合って決めたことを子どもが続けられるように、リマインドしていく程度でいいでしょう。ただし、一度決めたことを貫き通せる高校生は少ないものです。「約束は破られるもの」と捉え、気長にリマインドしていきましょう。
 

4)恥や後悔を感じた後の、子ども自身の気づきをじっくり聞く

リマインドをしても再び生活が乱れると、遅刻をしたり、成績が落ちるなどの困ったことが起こるかもしれません。ですが、恥や後悔を体験するのも成長への道です。頭ごなしに叱らず、恥や後悔を経験したことで何を感じたか、じっくり聞きましょう。
 

子どもの「気づき」に対する親の言葉かけが、とても大切

上の4つのステップの2)で決めたことを守れているなら、そこにしっかり言葉をかけましょう。子どもには大げさにほめられるより、「決めたことをちゃんと守っているね」の一言の方がうれしいものです。見守ってくれている親の愛情を感じるからです。
 
決めたことを守れずに恥をかいたり後悔したときの、4)で生じる気づきもとても大切です。本人には「自分は意志が弱いのかな」というような自己否定感が生じてくると思います。ですが、ここで本人を責めると「自分はやっぱりダメだ」という思いを強くしてしまいます。「最初から完璧にできる子なんていないよ」「せっかく決めたのに残念だったね」と寄り添いの言葉を伝えましょう。すると子どもの心には、再びきちんと行動しようという意志が湧いてくるでしょう。
 
また、そもそも決めたことを守れないのは、本人にとって少しハードルが高いのかもしれません。できないことをできるようにするには、「スモールステップ」で進めるのがコツ。本人が無理なくできることを再度話し合い、親にしてほしいサポートがあるかどうか聞いてみましょう。
 

セルフコントロール習得は大変なもの……自立につながる親子の語りあい

このように、高校生がセルフコントロールのできる大人になるには、とるべき行動を自分で考えて決めること。続けられなかったら、スモールステップでプランを練り直すことです。
 
セルフコントロールを子ども一人で決めて実行し続けるのは、とても大変です。だからこそ、親子の対話が重要なのです。「全然できてないじゃない」「何度言ってもだめね」「だから親の言うとおりにするべき」などのネガティブな言葉は子どもの意欲をそいでしまいます。根気よく子ども自身の考えを引き出しながら、子どもが自分で決めたことを実行できるように促していきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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