「間の悪い人」というのがいる。上司が激怒しているところにおちゃらけて帰社したり、リモート会議で真面目な会話をしているところに遅れて現れて突然、「いやあ、さっき笑えるような話を聞きまして」と関係ない話題をぶっ込んで滑りまくったり……。

本人が意図していないからこそ、「間が悪いねえ」と言われてしまうのだが、こういう人、決して悪い人ではない。むしろ愛すべき存在である。ところがこういうタイプが「夫」だと、「間が悪すぎてオチもしょぼくて笑えない」と妻は嘆く。
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大事なときに……

「うちの夫、去年、感染者数がぐっと減った時期に新型コロナに罹患したんです。私も子どもたちも結局、陰性で大丈夫だったんですが、家族でディズニーランドにいくはずがパーになって娘も息子もがっくり。こればかりはしかたがないけど、どうして夫だけ突然感染したのか今でもよくわからないんですよね」

少し笑いながらそう言うのは、トウコさん(42歳)。結婚して13年、12歳と8歳の一女一男がいる。夫とは大学時代に知り合い、卒業して数年後に再会。「なんとなく」つきあい始めてそのまま結婚した。「一緒にいて楽な相手だったから」だそう。

「家事も育児もそれなりにやってくれますが、共働きなのに折半とはいきませんね。自分のやりやすいことだけやるんですよ。たとえば洗濯機は回すけど洗濯物は干さない、畳まないという感じ。中途半端なんです。掃除も見えるところだけしかしない」

それでも夫は、ほんわかと穏やかなので、トウコさんもキリキリと怒ったりはせず、やんわりと指示を出す。指示を出されればきちんとやるのだから、最初からやれよと思うが、それを言うとすねてしまう。

「結婚してからそういう夫の裏性格みたいなものがやっとわかってきた。めんどうなヤツだと思いますが、夫は夫で人がいいだけに損をすることも多い。でもそれも最近、夫は実は鈍くさくて間が悪いだけなんじゃないかと思うようになってきました」

新型コロナ罹患も、どうして今の時期に、どうしてひとりだけ、というタイミング。結果、家族に迷惑をかけて夫は平謝りだった。
 

年末の子どもたちの楽しみも

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そして年末、さらに夫は「しでかして」しまった。子どもたちが楽しみにしていたクリスマス時期の近場への一泊旅行をする前日、お腹が痛いと言い出したのだ。

「最初は大丈夫と言っていたのですが、見ていたら脂汗を流してる。あわてて救急車を呼びましたよ。結果は……久々の飲み会続きで暴飲暴食がたたってお腹を壊したらしい。それでも数日間は安静が必要ということで4日ほど入院していました」

当然、クリスマスの予定はキャンセル。子どもたちが大泣きしたという。

「しかたがないけど、これまた、どうして今なのという感じでした。コロナ禍で旅行も2年ぶりとあって、子どもたちも楽しみにしていたんですけどね」

夫の間の悪さはいったいどういうことなのかと、トウコさんは思い起こしてみた。そういえば結婚式に夫は遅刻。それも乗るはずの電車に乗り遅れたら、次の電車が人身事故に巻き込まれたのだ。

「あわてて電車を降りてタクシーに乗ろうとしたら、もうすでにタクシー乗り場は人がいっぱいだったそうです。それでバスに乗ったら渋滞に巻き込まれた。結局、動かずに駅にいれば電車に乗れて、そのほうがずっと早かったみたい(笑)」

しかし、これもまた夫に判断力がないと言ってしまうのは厳しすぎる。こういうことはよくあるからだ。だが「大事なときに限ってしくじるのがウチの夫なんです」と彼女は言う。

「本人は大真面目だから非難もできない。あわてたり調子に乗ったりすると、だいたいろくなことはないんです。年末、お腹を壊したのだって2年も飲み会を自粛してがんばっていたのに、もう大丈夫だと思って、連日飲み会に出かけたのが原因ですからね。夫は『不義理をしたら悪い』と出かけたみたいだけど、本当は飲み会疲れで体が限界だったんだと思う。1日休めばなにごともなかったかもしれないのに、調子に乗って行っていたから、子どもたちを悲しませるはめになってしまった。先の見通しが甘いんですよ」

結局、夫が「間が悪く、見通しも甘い男」だからなのではないかとトウコさんは言う。そういう星の下に生まれているのではないか、と。

運がいいとか悪いとか人はよく口にするが、人生をトータルで考えたら、だいたいプラスマイナスゼロになるのではないだろうか。

「いや、夫は運も間も悪い(笑)。間の悪さを自分で呼んでいるようなところがあるんじゃないかと思うんですよ。それでいて『やっぱり厄年かなあ』とつぶやくから、『自分から厄に飛び込んでいるんじゃないの』と言ってみました。すると彼はヘラヘラと『まさか』って。いや、そういう返答自体が間が悪いよとツッコんでしまった」

そんな夫を嫌いなわけではない。だが、これから始まる娘の中学受験で、夫が何かやらかしたりしくじったりしたら、娘がどんな態度に出るのかが不安だと、トウコさんは真顔で心配していた。
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