せっかく家事に参加する機会なのに
「うちの夫、2021年の年末はクリスマスからずっと休みだったんですよ。夫に言わせれば『27日から30日までは在宅勤務』ということになるみたいですが、特にやらなくてはいけないことなんてありませんよね。だから年末の大掃除をしようと提案したんです」ミサさん(42歳)は結婚して12年。11歳と8歳の子を共働きで育てている。夫は4歳年上だが、ふだんから家事育児は「いいかげん」だという。
「本人はやっているつもりらしいけど、私から見ると適当。見えるところが片付いていればいいでしょという感じだから、引き出しや物入れには雑然といろいろなものが入っている。それは片づけとは言わないと何度言ってもわかってくれない。そういうタイプです。最近では子どもたちのほうがよほど片付けが上手になっていますね」
言われたからやる。そんな感じの家事育児なのだそう。年末こそは夫に掃除で活躍してほしい。ミサさんはそう思っていた。
「ところが夫は、換気扇の掃除を頼んだら明らかに嫌そう。『オレ、アレルギーだから手が汚れるといけないんだよ』とわけのわからないことを言い出して。毎年、夫は30日までびっちり仕事だから、かわいそうだと思って私がやってきたんですが、21年は夫の会社も在宅ワークを取り入れたから、それなら時間があるでしょと思った。それに夫が家事を積極的にやることは子どもたちにもいい影響がありますから」
そんなミサさんの思惑をよそに、夫は長い時間をかけて換気扇の油を拭き取っただけで「終わったよ」とのたまった。それがミサさんの怒りに火をつけたのだ。
「ちゃんとやってよ。あなたは一家の主で、父親なんだからと言ったら、夫は『掃除するのが一家の主の役割か』と逆ギレ。『だいたい、おまえはオレに指図しすぎなんだよ』とまで言い出して、『あなたがちゃんとやらないからでしょ』と大げんか。子どもたちは怯えて部屋にこもってしまうし、夫は家を出て行ってしまうし。私もばかばかしくなって大掃除は中止しました(笑)」
以前から、夫とどこか歯車がかみ合わないと感じていたミサさん。今回ばかりはきちんと話し合わないと、お互いの距離が離れるばかりだと危機感を抱いたという。
話し合いもしたがらない夫
揉めたのは年末26日。そして大晦日に至るまで、ミサさんは夫と話し合えなかった。「一度、ちゃんと話そうよと言ったんですが、夫は仕事があるからと部屋にこもり、食事まで家族と別にとっています。どうしてそこまでいじけちゃっているのかと部屋の外から、ちょっと冗談交じりに尋ねてみたんですが、『神経を逆なでするようなことばかり言うな』って。いつまでたっても怒りが解けない」
ミサさんは、こうなると相性が悪いとしか思えないと言う。つきあっているときから、彼女のふとした一言で、夫が表情を変えることがあったのを思い出しているそうだ。
「結婚自体が無理だったのかな、と。子どもがふたりいて、家族で仲良くしたいだけなんです、私は。でも夫は自ら飛び込んできてくれない。いつも傍観者みたいな顔をして、私と子どもたちをセットで眺めて、勝手にいじけてる。どうしたら家族がいいチームを組めるのか、夫に聞いてみたい」
笑顔で話していたミサさんの顔が曇る。明るく振る舞ってはいるが、実際には彼女も相当心が疲れているように見えた。
もしかしたら、夫は言いたいことを言ったら家族が崩壊するかもしれないとまで思っているのかもしれない。ミサさんが常に明るく、何でも冗談混じりに言うことが、長い年月をかけて彼の心を逆なでしている可能性は確かにあるのではないだろうか。
「私は家の中を明るくしたい一心でがんばってきたんです。でも夫がそれをまったく理解していないことはよくわかった。冗談交じりがいけないのなら、正面切って夫に迫ればいいんでしょうか。そうなったらもっと悲惨なことになりそうな気がします」
夫の性格をわかっているのはミサさんだ。彼女自身、なんとかうまく夫を操縦しようとしているのだが、それが夫には受け入れられない。
「私の周りには言いたいことを言い合ってうまくいっている夫婦も多いのに、どうしてうちはうまくいかないのか。なんだか新年はつらい一年になりそうです」
ますます表情が暗くなる。年末年始に家族と揉めるのはつらい。