日本人男性は「性欲」はあるのになぜしない?
「ジャパン・セックスサーベイ 2020 調査結果報告書」(※1)で男性の性の欲求を見てみると、マスターベーションや風俗利用についての項目で「セックス回数より射精回数が多い」、「セックスはしていないが射精はする」の合計は76%におよびます。女性からのセックスレス相談を受けることが多い筆者は「性欲を外に向けないで、妻に向けていただくと丸くおさまる」と思うものの、そうはいかないのが男女関係の奥深さ。
「クーリッジ効果」という現象をご存じですか? 性欲が減退した哺乳類のオスが新しいメスと出会うと性の欲求が回復するというもので、これは「長く付き合ったパートナーにはムラムラしないが、ほかの女性なら」という男性本能を正当化する論です。しかし現代社会はといえば、不倫や浮気に厳しい目が向けられ、社会的制裁も避けられません。
それでも実行するのはメンタルが強い男女に限った話。浮気はお金もかかるし、秘密を守るための言い訳にも労力がいる。ならば、マスターベーションか風俗で……という流れになっても不思議ではありません。
さらに産婦人科医の北村邦夫先生が指摘する若い男性の草食化傾向もあります。セックスまで持ち込むプロセスが面倒で困難を感じる、失敗したら嫌だという不安を感じることが「性欲はひとりで処理するのがラクである」という思考に繋がるのではないかという意見にも納得です。
つまり性欲はあるが、パートナーとは“しない”で射精に持ち込むのが今の男性の実態なのです。
セックスレス状態に女性はなにを思う?
さらに「セックスしたいか」という問いに対しては男性の約78%、女性はその半分となる約42%がしたいと回答しています。男性は浮気、風俗、マスターベーションで性の欲求は解決できるのでよしとします。ならば「性欲がある、かつセックスレスの女性」はどうすればいいのでしょう。「セックスに関する悩み・コンプレックス」についての回答を見ると、「オーガズムに達しない」女性が約22%、「快感が得られない」女性が約15%と、「男性が下手っぴだからしたくない」という心の声が聞こえてくるような結果が……。 ただしオーガズム体験は個人差もあり、あくまでもイメージで「感じたことがない」「腟がしびれるような経験がない」という人もいますし、オーガズムを知らずとも抱きしめられるだけで幸せという人もいますから、22%は男性パートナーへの批判めいた感情を含む厳しめの数値かもしれません。
そして忘れてはいけないのが、女性の身体的側面。月経、妊娠、出産、更年期、閉経と、女性の方が男性よりホルモンの影響を受けて性の欲求は大きく変動しがちです。出産後、全くしたくなくなったという女性は数多し。
PMS(月経前症候群)や、月経痛、頭痛、腰痛、ほてり、イライラ……。抽象的な症状を含めると「とてもする気になれない」時期が頻発するのもやはり女性。
すると相手の体調やメンタル変動を察して、タイミングよく誘ったり、セクシースイッチをオンにするコミュニケーションをしなければならない男性の気苦労もよくわかります。
新しい時代で「性活様式」も変わる
新型コロナウイルス流行下に厚労科研が実施した「コロナ禍における第一次緊急自体宣言下の日本人1万人調査」(※2)でも、興味深い結果が出ています。 コロナ禍のセックス回数についての質問に、「していない」が約半数(男性39.5%、女性59.8%)、「減った」が「増えた」の倍以上。在宅時間が増えて「仕事で忙しい、疲れている、朝早いから無理」といった断る理由が減ったにもかかわらずです。一緒にいる時間が長いと、家事や子育ての協力姿勢が問われます。お互いの家事、子供への接し方、衛生概念の温度差を見続けるなかで「性欲などわかない」という声を山ほど聴きはしましたが……。
コロナ前でもしたくない。コロナ禍でもしたくない。ではコロナ後に再び世界26カ国の大規模実態調査が実施されたら、日本はやはり世界最低を維持しているのでしょうか。
「セックスレスでも幸せなカップルならからいいじゃない」の声にはもちろん賛成ですし、ふたりとも永遠に「なくてよし」なら上等ですが、性の欲求は体調や環境の変化をきっかけにゼロになったり、98%になったりと大幅変動するという恐ろしい事実も腹に落としておいてください。
最後に「セックス大国」ギリシャの実態について、ギリシャ人と結婚した日本女性にインタビューしました。
なるほど、数あるコミュニケーションツールのひとつとは……ギリシャ人のコミュ力を知っておいて損はなしですね。「まわりにセックスレスの夫婦はいません。セックスだけを大事にするのでなく、おしゃべり、お食事、ドライブ、キス、ハグなどコミュケーションのワンオブがセックスです。女性を大切に扱う気持ちをギリシャの男性は持っていると感じます」
※1:【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ 2020 調査結果報告書
※2:コロナ禍における第一次緊急自体宣言下の日本人1万人調査(2021年、厚労科研)
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