女性にとっての「よくばり」な生き方とは?

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「仕事も暮らしも。欲張りなライフスタイル実現のために」

自治体がこんな文言を書いている。広島県が働く女性たちを支援するために発行している冊子なのだが、これが物議を醸している。

「よくばり」というのは決していいイメージではない。女性たちは“欲を張って”、仕事と生活を手にしたいと思っているわけではないはずだ。今や共働きでなければ、子どもを育てることなどできない経済状況にあることを、まずわかってくれていないと女性たちからいっせいにブーイングが吹き出したのも当然だろう。

自治体としては、男女・未婚既婚を問わず働く人たちみんなが、仕事をしながらゆとりある生活を手にすることを応援するために何ができるのか、もっときめ細かい対応策を練ることが必要なのだ。

こういう「偏見」が女性たちをさらに苦境に陥れているのではないだろうか。
 

「どうして働くの?」という偏見

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「うちの夫はそれなりに有名な企業に勤めています。収入だってそんなに悪くない。だけど、夫の実家は両親が病気がちで、いろいろお金がかかる。大学生の末の弟の学費は夫が出しています。夫の収入の3分の1は実家関連で消費する。だから私たちの子を2人育てていくためには私が働くしかないんです」

そう言うのは、サオリさん(41歳)だ。結婚して10年、9歳と5歳の子がいる。結婚してすぐに義両親が相次いで病に倒れ、実家の商店は廃業せざるを得なかった。

「そのときは運が悪いなと思ったし、離婚という言葉も頭を駆けめぐったけど、妊娠がわかって離婚もできなかった……。義両親を見放すこともできないし、夫が経済的に援助したいと言ってきたので了解しました。でも周りは『ダンナさんがいい会社に勤めているのに、あなたまで必死に働くのね。そんなにお金を貯めてどうするの?』と冗談交じりによく言うんです。これ、傷つくんですよね。何でもほしがっている貪欲な女と言われているみたいで。そういうことを言う人に限って、こちらがSOSを出しても助けてくれない。子どもたちが小さいころは本当に大変でした」

お金があるんだからベビーシッターでも雇えばいいのに、家政婦さんを頼めばいいのにと近所の人たちが噂していることも、サオリさんは知っている。実情はそんなわけにはいかないのに。

他人の事情はわからない。だから憶測でものを言ってはいけないのだ。
 

立場が違うと理解しあえない?

性、年齢、家庭や子どもの有無など、さまざまな立場の人がいる。隣の芝生は青いかもしれないが、みんなが少しずつ思いやりをもてればいいのだが……。

「私は独身のまま40代になりました。職場はお子さんがいる女性が多くて、結局、仕事の負担が私たち独身女性にかかってくる。それでもしかたないと思っているんですが、『子どもが熱を出したから、本当にごめんなさい』と心から言ってくれる人もいれば、『子どもがいるからしかたがないのよ、あなたたちにはわからないでしょうから』と言う人もいる。

後者だと、私たちも気持ちよくフォローはできません。立場の違いから来る齟齬って、そういうことなんじゃないかな。もちろん、私たちも『子どもがいるのをいいことに、めんどうな仕事をいつも押しつけないでください』なんて言わないようにしないといけないとは思っています」

ミチルさん(40歳)は、「男女とか既婚だ未婚だとかで人を分断するのはせつない」と話してくれた。彼女と、40代半ばの既婚女性が主体となって、そういう分断をしないよう、何かあったらみんなで話し合って解決できるような窓口を作っているそうだ。

「小さな誤解のうちに解決しないと。職場は仕事をするだけの場所じゃない、人が生きていく場所でもあるから」

ミチルさんはそう言って笑顔を見せた。話し合えば何でも解決できるとは限らない。だが、話し合う姿勢がなければ何も解決しないと力を込める。

「だからこそ行政が人を分断するような言葉を使ってはいけないと思う。どんな立場の人でも生きていくって大変なことだから」
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