人間関係

強い主張は反感を招く?上手に思いを伝える3つのポイント

【公認心理師が解説】環境活動家として注目を集めるグレタ・トゥーンベリーさん。過激な伝え方で関心を集める一方、批判や反感も招いています。似た主張の仲間を集めるだけでなく、より多くの人々に主張を届けるためには、「伝えること」と「伝わること」の違いを押さえることが大切です。日常の人間関係でも使える、上手な伝え方の3つのポイントをご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「グレタさんの主張」はなぜ反感を買ってしまうのか

ミーティングをする若者たち

正しいと思うことを主張するには、関心のない人にも「伝わる」ように伝えることが大事

人が社会の中で生きていれば、価値観や考え方の異なる人々との出会いが必ずあります。とはいえ、自分の意見と相容れないからといって、一方的に相手を批判してしまうと前向きな話し合いは進みません。それどころか相手の感情を害してしまうと、この先もずっと聞く耳を持ってもらえなくなってしまいます。
 
たとえば、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリーさんは、痛烈な批判でしばしば注目を集めています。2019年、当時16歳だった彼女は、国連で「あなたたちの裏切りに気づき始めている」と大人に対する怒りのスピーチを敢行。2021年11月の気候変動に関する国際会議「COP26」に向けては、「つまらないおしゃべりはもうやめて」などと批判の言葉をくり返しました。
 
グレタさんならではの環境対策に対する批判的な姿勢が、世界中の若者に地球温暖化への意識を目覚めさせた影響力は大きく、「グレタ効果」と呼ぶ人もいます。しかし一方で、彼女の過激すぎる行動や言葉の使い方に首をかしげる人も少なくなく、環境活動家としていかがなものかと疑問視する向きが多いのも事実です。
 

「伝えること」と「伝わること」の違い……攻撃的に見られる強い主張

そもそも人は「これこそ正しい」という信念を持つと、その正しさを伝えたい一念から、しばしば自分の主張を理解しようとしない人々への批判をくり返してしまいます。しかしこの方法では、自分が熱心に伝えれば伝えるほど、人々の熱は冷め、反感を買ってしまいます。なぜなら、自分の主張へのこだわりがいつしか他者や社会への攻撃に変わり、人々の防衛意識を高めてしまうからです。
 
「これが正しいのになぜわからないの!?」と強く言えば言うほど、人々はその主張を「攻撃」と受け止め、「回避」または「戦闘」の姿勢で受け止めざるを得なくなります。その結果、「あの人はワーワー言ってるだけ」などと思われ、真剣に取り合ってもらえなくなったり、「そもそも態度が無礼だ」などと、肝心の主張から外れた部分で批判されてしまったりします。
 
このようなことにならないためにも、自分が「正しい」と思うことこそ、関心のない人にも「伝わる」ように伝えることが必要なのです。そのための3つの伝え方の基本を覚えておきましょう。
 

1. 現状の良い部分を認めた上で、正したい部分を伝える

「伝えたいこと」が伝わらないこと原因の一つに、しばしばその主張が、他人や現状の問題点の批判ばかりに終始している、ということがあります。人は、他人や現状の欠点ばかりを聞かされると、その主張を繰り返す人をクレーマーのように見なしてしまう傾向があります。
 
何かを批判する前には、まず現状の良い部分を見出し、認めるというプロセスが必要です。たとえば「こういう部分に自分は日々、恩恵を受けている」という事実を認めた上で、「でも、こういうところに私は不安を覚える。だから、みんなの力でよりよくしてきたい」というように、変革へのメッセージをプラスする。こうすると、構えずに主張を受け取ってもらいやすくなります。
 

2. 「なぜできないのか」ではなく「どうしたらできるか」を提案する

「なぜできないのか」や「なぜやろうとしないのか」という「なぜ」の疑問符が多い人の主張は、聞く人をうんざりさせてしまいます。なぜならその主張からは、他人に責任を丸投げした傍観的な視点しか感じられないからです。
 
人に「伝わる」ように伝えるには、「自分も当事者として一緒に考えていきたい」という参画者の視点を持つことが重要です。そのためには、「なぜ」ではなく「どうしたら」の疑問符を使うことがカギになります。
 
たとえば、「なぜできないのか」ではなく「どうしたらできるようになるでしょうか」といった言葉で導き、「皆で考えていきせんか?」と人々に参画への提案をする。その上で、「私自身はこういうするのがよいと思うが、みなさんの意見も聞かせてほしい」というように自分の意見を伝えて人々の意見も求めていくと、自分の主張が押し付けにならず、関心を持ってもらいやすくなります。
 

3. 聞いてくれたこと、考えてくれたことへの感謝を伝える

自分が正しいと感じることを扇情的に伝えれば、その感情に同調する人の心はつかめるかもしれません。しかし、気がつけば自分の周りには似たような人ばかりが集まり、仲間内にしか伝わらない方法で主張を繰り返すだけで終わってしまいます。これでは、極端で過激な集団と思われるばかりで、多くの人の意識を変えることはできません。
 
大切なのは、自分の主張に関心が薄い人たちの心にも響く方法で伝えることです。そのために必要なのは「感謝」です。自分の主張に一瞬でも耳を傾けてくれたこと、自分の言葉をきっかけに少しでも何かを考えようとしてくれたことに対して、丁寧なお礼を伝え、やさしい気持ちで接すること。これが、多くの人々の心を動かすことにつながります。
 
以上のように、3つの伝え方の基本を押さえて伝えていくと、「伝えたいこと」が相手に伝わるようになります。過激な主張のように一瞬で多くの人の注目を浴びるような作用はありませんが、無理なく、じわじわと着実に相手に「伝わる」ように浸透させていく、そんな効果があります。ぜひ、身近なところから行ってみませんか?
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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