亀山早苗の恋愛コラム

【実録・飯がまずい妻たち #3】義母の料理が「ヘン」すぎて…三世代同居ではじまった“地獄”の生活

「食」に興味のある人が、興味のない人と暮らすようになり、さらにその「料理に興味がない人」が食事を担当するとなると、「地獄の生活」を送ることになりかねない。たかが食事、されど食事。むずかしい問題だ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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義母との同居でよぎった不安

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「食」に興味のある人が、興味のない人と暮らすようになり、さらにその人が食事を担当するとなると、「地獄の生活」を送ることになりかねない。たかが食事、されど食事。生活と文化、両方の側面があるだけにむずかしい問題だ。
 

義母の味つけが「ヘン」すぎて

「つい最近、義母との同居を始めました。共働きなので、義母も張り切って『家事は任せて』と言うんですが……」

苦笑するのは、エイコさん(41歳)だ。4歳年上の夫との間に10歳のひとり娘がいる。夫の実家から30分ほどのところに住み、ある程度の距離を保って暮らしてきたのだが、2年前に義父が急逝し、そこから状況が変わった。

「義父母はよく私のことも気にかけてくれる、いい人たちなんです。義父が亡くなったときは私、実父が死んだときより泣きました。その後、義母は『初めてのひとり暮らしを楽しんでいるから気にしなくていいわよ』と言っていたんですが、ときどき行ってみると、以前より掃除が行き届いていなかったり、ゴミがたまっていたり。夫とも話し合って、うちに来てもらおうということになったんです」

夫には妹がいるが、転勤族の男性と結婚したため、まだまだ落ち着かない生活を送っている。だから同居するなら、夫しかいなかったのだ。

「ひとつ懸念があるとすれば、義母の料理がまずいこと。味噌汁なのに味噌の味がしなかったり、煮物は出汁より醤油の味がきつかったり。娘が『おばあちゃんのご飯、変な味がするね』とこっそり私に言ったこともあります」

だが、同居にあたっては、「ご飯は私に任せてね」と義母は張り切っていた。夫も「エイコの負担が減る。よかったじゃないか」と言いだし、エイコさんは苦笑いするしかなかった。
 

「なるべく頑張る」と娘に宣言したけれど

恐怖を訴えたのは娘だ。
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「ママ、夕ご飯だけはなるべくママが作って!と顔をひきつらせていましたね。仕事から疲れて帰ってきて、食事があるのはありがたいけど、あのご飯では疲れが癒えないのはわかっていたので、なるべくがんばると娘には言っていたんです」

半年前、義母が引っ越してきた。「一家に主婦がふたりいると険悪になるから、家事は自分がやる」という義母に、最初が肝心だとエイコさんは思い切って言ってみた。

「洗濯はご自分でやってください、こちらの分は私がやります、どうせ洗濯機に入れるだけなのでと。食事は私がなるべく下ごしらえをしておくので、それを温めるくらいで大丈夫です。味つけが合わなければ、ご自分の分はご自分でどうぞと、もちろん言葉を選びながら言ったんです。そうしたら義母は『遠慮しないでいいのよ。なにもしないで世話になるのは嫌なの。私も役目がないと居づらいから』と。それでも食事だけは譲らないようにしようと、週末には作り置きをしたり、出勤前に下ごしらえをしたりしていました」

リモートワークならそれでもいいのだが、エイコさんは毎日、出勤しなければならない仕事。無理がたたって、2カ月後には体調を崩してしまった。

「何を意地張ってるんだよ、おふくろに任せればいいだろと夫が言う。でもあのご飯が毎日続くのは耐えられない。そう思ってある日、夫に『お義母さんのご飯なんだけど、娘も私もどうしてもなじめない』と言ってみたんです。すると『オレはおふくろの味で育っているんだけどなあ』って。『エイコのご飯はおいしいけど、おふくろの味も捨てたもんじゃないよ』と言われて、なんだかがっかりしました。夫にとっては、料理教室に2年も通った“妻の味”と、娘にさえ変だと言われる“おふくろの味”は、たいして変わりないんですよね」

それ以降、エイコさんは帰宅してから自分が一品何かを作ることにした。夫と義母は変わらない。だったら娘のために簡単でもいいから作ってやりたいという母心だ。娘の好きなキンピラや和え物などの常備菜を用意しておくこともある。

「でもそのうち、義母が『あの子はどうして私が作ったものを食べないのかしら』って。まずいからと言いそうになりましたが、それを言ったら揉める。だから『たぶん、私の味しか受けつけないんだと思います』と言ってみたんです。すると『あなた、自分が料理上手だと思っているかもしれないけど、それほどでもないわよ』と。友人のホームパーティーなどに料理をもっていっても好評だったのに、急に自信がぐらついてきて」

そのとき……。
 

言ってしまった、本当のこと

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自室にいると思っていた娘が、偶然、そのやりとりを聞いていた。そして言ってしまったのだ。

「私、おばあちゃんのご飯は変な味がすると思う」

義母は凍りつき、自分が作ったものを次々とゴミ箱に捨て始めた。自分の発言で家庭の雰囲気を変えてしまったと気づいた娘は泣き出した。エイコさんはあわてて娘を部屋に連れていき、「あなたは悪くない。気にしなくていいから」と慰めた。

キッチンに戻ると、義母も泣いている。

「義母は義母で、この家で居場所を作りたかったんだろうとよくわかりました。だから、味が合う合わないはどうしようもないことで、いい悪いの問題ではないこと、お義母さんが自分と息子(夫)の分を作り、私が娘とのふたり分を作るという妥協案を出しました。すると義母は『家族は同じものを食べるべきよ』と」

夫は、義母とエイコさんの問題だと言わんばかりに逃げている。現在は膠着状態が続いているが、エイコさんが下ごしらえしたものを娘が仕上げることも増えた。義母が夕方からキッチンを独占するので、思うようにはいかない日もあるらしい。

「私が仕事を辞めたほうがいいのだろうかとも考えています。でも家でふたり、顔をつきあわせていたらもっと悲惨なことになりそうですしね。どうしたらいいのか……」

揉めたくはない。だが毎日のことだし、高級ではなくてもおいしいものを作りたい、食べたいと思うのは当然だ。だからこそエイコさんは困り果てている。

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