コロナ禍で失業した私に「働け」と言う夫の冷たさ

経済的DV

コロナ禍によって、それまでくすぶっていた夫婦の火種の原因が明らかになった話はよく耳に入ってくる。心が離れていたことがわかったり、経済的な問題だったり。いずれも家庭を維持していくには厳しいという声ばかりだ。

 

家計を任せてくれない夫

結婚しても共働きを選択した場合、「家計はどうやって分担するか」を話し合うことは重要だ。ふたりともずっと同じ状況で働き続けることができるとは限らない。そのたびに話し合って決めていこうとコンセンサスを得ておくのも大事。

「私たちはそれをし損なったんです。実は共働きで私のほうが収入が高いとわかっていたので、言い出しづらかった。夫のマンションで新生活を始めたこともあって、最初の給料のとき、夫からは『オレ、今まで通り家賃を払っておくから、食費と光熱費は頼むね』と言われて、深く考えずにまあ、いいかとうなずいてしまいました」

そう言うのはカエさん(36歳)だ。29歳で3歳年上の男性と結婚、現在は5歳のひとり娘がいる。

「産休・育休時代は、夫が月々5万円くれていました。光熱費は私の支払い。育休手当がもらえるでしょと。なるべく早く仕事に復帰したかったのですが、なかなか保育園が見つからなくて結局、復帰したのは生後8カ月のころ。私が復帰するとすぐ、夫は5万円を渡してくれなくなったんです。なんだかやけに事務的だなと思いましたが、夫は『あなたはもともと給料が高いでしょ』って。ああ、夫はそれを引け目に思っているんだなということはよくわかりました」

カエさんが彼と知りあったのは、それまでつきあっていた恋人に手ひどくフラれた直後。信じていたのに3股をかけられていて、しかもそのうちのひとりは彼女の友人だったのだ。恋人と友人を失った彼女は、毎日のように飲み歩いていた。ある店で酔った彼女に「もうやめておきなさい」と厳しく言ってくれたのが彼だった。そこから半年で結婚を決めた。

「常識的で地道でいい人だと思いました。まあ、それは確かにその通りだったんだけど、けっこう秘密主義なんですよ。結婚を決めてから、私は収入も告げたのに、夫は『オレより高いよ、ずっと』と言ったきり教えてくれなかった。彼の会社の人にそれとなく聞いて知りましたけど、がっかりするほどの差はないんです。でも夫は気にしている」

夫の貯金がどのくらいあるのかも、彼女は知らない。

働き方を変えて

All About

娘が2歳になったころ、心臓に疾患が見つかり、何度かに分けて段階的な手術が必要だと診断された。

「心配で仕事も手につかない状態が続きました。職場にも申し訳ないし、私自身も落ち着かない。でも仕事をしなければ収入が得られない。夫に相談すると、『できることなら、いったん仕事をやめて娘と一緒にいてやってほしい』と言われました。私も異存はなかった。どんなに仕事が好きでも、娘との時間のほうが大事だったから」

退職すると、夫はまた翌月から5万円をよこすようになった。だがその額では生活費と光熱費はまかないきれない。子どもの医療費は自己負担分がないとはいえ、入院時は差額ベッド代がかかるし、通院費だってかかるのだ。

「幸い、娘は2年間で3回手術をして完治しました。その間は私の預貯金をかなり使いましたが、もちろん娘のためなら惜しくはなかった。退院後は無理しないよう幼稚園に行かせ、私は専業主婦の傍ら家でできる入力の仕事などを、前の会社からもらっていました。ちょうどコロナ禍の直前、医師からもう大丈夫とお墨付きをもらってホッとしたんです。その後、娘を保育園に預けて私はパートに出るようになりました」

だがコロナ禍に入り、保育園が休園になるたびにパートを休まなくてはいけなくなり、昨年夏にパートを解雇された。秋に別の仕事を見つけたが、それもこの夏に「休みが多くてシフトが組めない」と言われ、自らやめるしかなかった。

「娘は来春、小学校に上がります。それからきちんと仕事を見つけようと思っています。気持ちは焦るけど、どうしようもないですから。でも夫は、ことあるごとに『早く働けば?』って。働きたくても娘のこともあるし、と言ったら、『娘の病気にかこつけて、働かなくてもいいやと思ってない?』と言われて……。ショックでした。男性が家族を養うべきとは思わないけど、子どもの病気のようなアクシデントがあったときは支え合うのが夫婦じゃないんですかねえ。夫は娘をかわいがっていますけど、とにかく生活費を出し渋るのがどうしても理解できないんです」

思いあまって、彼女は最近、夫の母に相談の電話を入れた。すると相談以前に、義母から「いつも悪いわね、お金を送ってもらって」と言われた。夫は「妻が稼ぐから」と言って、義母に毎月、送金しているという。義父もまだ働いているし、義母がお金に困っているはずはない。

「私、友だちの間で大きな顔ができるのよ。ちょっとごちそうしたりできるから。それもあなたたちのおかげ。もつべきものはいい息子とお嫁さんね、と言われて、頭がクラクラしました。夫は娘の手術のことも親には話していなかったんです。命に危険があるわけではなかったけど、それでも何度も手術をしたら何が起こるかわからないのに」

夫は、自分の親にいい顔をしたかったのだ。それがわかってからカエさんの夫への気持ちは、ますます冷えていった。

「お義母さんにこう言われたと夫に言ったら、もごもごと意味のわからないことを言っていました。翌月から生活費は6万円になりましたが、『いくらもらって、何にいくら使っているのか教えてほしい。私は家計簿をオープンにしているのだから』と言ったら、『これが限界なんだよ。あとは頼むよ』としか返ってこない」

こんなことで“離婚”という文字が頭をよぎるのはおかしいのだろうかと、カエさんは言った。家族の関係を壊したいわけではない。だが、お互いの心が冷めているなら形だけ重視するのは間違っていると思うと彼女は自分に言い聞かせるように言った。
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