亀山早苗の恋愛コラム

「年の差婚」に女性が見切りをつけるとき。年上夫との生活を諦めた女性たちの実体験

芸能界では男性が年上の年の差カップルが意外と多い。一般的にも一回り以上の年の差婚は珍しくない。そんな「年上夫」に女性が見切りをつけるのは、どんなときなのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「年の差婚」に女性が見切りをつけるとき

歳の差婚

芸能界では、たとえば加藤茶さんと綾菜さん夫婦の45歳差、城島茂さんと菊池梨沙さんの24歳差など、男性が年上の年の差カップルが意外と多い。一般的にも一回り以上の年の差婚は珍しくないが、2018年の厚生労働省「人口動態調査」によれば、初婚同士でいちばん多いのは夫婦同年齢で結婚したカップルの21%、次が男性が1歳年上で13.4%だった。3番目に男性が7歳以上年上で11.4%となる。

多くのカップルは半世紀前からおよそ3.5歳差の中におさまっており、特に大きな変化はない。ただ、夫のみが再婚の場合、夫が7歳以上年上のカップルは44%に上る。再婚同士の場合は夫が7歳以上年上は29%だ。再婚する夫は若い女性を好むと単純に言い切れるかどうかはわからないが、その傾向はあると言えるだろう。

そんな「年上夫」に女性が見切りをつけるのは、どんなときなのだろうか。

 

大人に見えたのに……

「夫が47歳、私が24歳のときに結婚しました。新卒で入った会社の別部署の先輩でした。つきあった期間は半年足らず、すぐにプロポーズされました」

そう言うのはセイコさん(32歳)だ。夫は再婚、彼女は初婚だった。夫は20代で結婚したものの3年足らずで離婚、ひとり娘は妻が引き取った。

「私たちが結婚した時点で、夫の娘は18歳でした。長年かけていた学資保険を娘に手渡してきたと聞いたことがあります。娘さんとの仲は悪くないみたいでした。そんな彼を見て、大人の男を感じたのを覚えています。考えてみれば私、娘さんより5歳年上なだけですから、私自身が子どもだったんですよね」

彼女は結局、仕事を始めて1年がたつかたたないかで結婚、退職した。夫に「同じ会社にいると気になるから」と言われたからだ。

「そのときは夫のことが大好きだったので、夫の言うことは何でも聞こうと素直に従いました。今思えば新卒でいきなり結婚退職って、もったいないことをしたと思っています。同期だった女性たちは、今は中堅としてバリバリ仕事をしているのに」

23歳年上なのだから、夫は大人でリーダーシップがあって常に広い視野でものごとを見ていると思い込んでいた。ところが実際に生活してみると、どう対処したらいいかわからないことが多かったという。

「もっと年上だったら、むしろこちらが大事にしようと思えるのかもしれませんが、二回りくらいで、なおかつ彼もまだまだ元気ですし私はある意味で生意気盛り。ぶつかることが多かったですね。再度、就職活動を始めた私に、彼は『主婦としての仕事を先にきちんとできるようになってほしい』『若くても、一家の主婦なんだから派手な格好はしないほうがいい』とか。

お父さんに管理されているみたいで、1年ほどたつうちにだんだん息苦しくなっていった。私だって大人なんだから、自分の生き方は自分で決める、私の仕事を奪ったあなたにあれこれ言われたくないとまで言ってしまった。夫は若い妻を家に閉じ込めようとしたけど、私はそれに反発した。じゃあ、子どもがほしいと言ったら、子どもはもういらないと言われました。何のための結婚だったのか。お互いに結婚の目的が違っていたんでしょうね」

結婚生活は3年しか続かず、セイコさんは27歳で離婚した。離婚から5年、最近、1歳年下の恋人ができたという。

 

生活ペースが合わなくなって

25歳のときに55歳の男性と結婚したマリさん(35歳)。友人宅のパーティで、彼女が10歳のときに亡くなった父親と同い年だった彼と知り合い、思いを寄せた。

「彼は40歳のときに奥さんに先立たれたそうです。ふたりのお子さんはすでに成人になっていて、彼はひとり暮らしをしていました。私が冗談混じりにご飯を作ってあげましょうかと言ったのが縁で、つきあうようになったんです」

マリさんは食関連の仕事をしていて、料理もお手のもの。彼は彼女の料理をいつもおいしいと食べてくれた。

「その流れで同棲するようになり、息子さんたちも賛成してくれて1年後には結婚していました。私の母は大反対でしたけど、その反対を押し切って家を出て彼のところに転がり込んだんです」

息子たちを男手ひとつで育てた彼は家事もそつなくできる。料理だけはマリさんが作ると喜んでくれたが、マリさんが仕事で遅くなると夕飯を作っておいてくれた。

「5年ほどは何ごともなく仲良く暮らしていたんですが、彼が60歳で定年になってからがキツかったですね。一休みしたら働くと言っていたのですが、定年になったことでがっくりきたのか昼間からお酒を飲むようになって。今思えば、男性の更年期でもあったのかもしれない。当時はわからなかったので、家の中のお酒を捨てたり、彼の息子さんに電話をかけてなんとかしてほしいと泣きついたりしました。でも彼は働かず、鬱々としていくばかりで」

本来なら、それまで勤めていた会社であと5年は働けるはずだった。だが定年直前に会社が買収され、彼を買ってくれていた役員が失職、彼もそれに憤って自ら定年後の職を求めなかったのが真相らしい。

「話してくれればいいのに、私に話してもしかたがないと思ったんでしょう。自分の中でためこんで、どんどん落ち込んでいった。性格が変わったように怒りっぽくなったし。たった5年しか一緒にいないから、彼の表に見える性格しかわからないんですよね。大反対していた母に思わず愚痴ると、『帰っておいで。あなたがそんなに我慢する必要はない』と。失礼な言い方ですが、この先、介護が必要になっても私は夫の面倒を見ることはできないと思ったんです。まだ人生をともにした感覚が少なかったから」

年の差婚というのは、こういうことなのかとマリさんは実感したという。自分が50歳になったとき夫は80歳だと想像したことはあったが、その手前でこういう難問が待ち受けているとは思わなかった。

「申し訳ないけどと夫に離婚を申し出たら、いきなり平手打ちされました。それが怖くて、夫の息子さんたちに連絡をとり、私は逃げ出したんです」

離婚届はあとから送られてきて、夫婦関係はそれきりになった。長い年月、一緒にいた夫婦なら夫の変化に気づいて愚痴を聞くこともできたかもしれない。だがともに過ごした期間が短く、なおかつ若い妻には夫が言えずにいることを探り出す機転はきかないだろう。

「相手の人生を知らない時間が多すぎる。同世代なら埋めようがあるけど、年の差がここまで大きいと、埋める手立てがない。そう思います」

マリさんは今も再婚する気にはなれないと言う。
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