子どもの水難事故の発生場所「河川・湖沼」が6割
管理されていない水辺には常に危険が伴う
管理されていない水辺には「常に」危険が伴う
遊泳可能な海岸の多くは、一定の監視の目があり、ライフガードが存在します。異変があればすぐに救助に向かう体制が用意されています。一方、河川や湖沼などではそのような監視が行われている場所はほとんどなく、事故や異変があっても気づかれずに下流に流され、溺死に至るケースが見られます。特に自宅の近辺にそのような水場がある場合は、子どもたちだけで水遊びや釣りに行ってしまうことが多く、事故や異変にすぐに対処できないため、溺死などの痛ましい事故が発生してしまうのです。
私の自宅近くに「多摩川」という大きな川があるのですが、「遊泳禁止」となっているにも関わらず、毎年多くの子どもたちが川の中に入って水遊びをしています。一度「ここは遊泳禁止だから危ないよ」と注意したこともあるのですが、遠くにいた母親らしき女性が駆け寄ってきて「ほら怒られるんだから戻りなさい!」と言いながら、なぜかこちらが睨まれたことがありました。
保護者がいたのは良いのですが、危険に対する親の認識の低さも事故を生み出していると思われます。
知られていない水辺の危険な場所、保護者の危機意識の低さ
海と川の大きな違いとして「浮力」があります。塩水と淡水では、淡水の方が身体を浮かせられないため、はるかに溺れる危険が高まります。また海にも一定の流れがありますが、川の流れは多くの場合、はるかに強く、泳ぎが達者であるという人もあっと言う間に下流へと運んでしまいます。
川が湾曲している場所では通常、カーブの外側の流れが早く、また水深が深くなっていて、“深みにはまる”状況に陥りやすい(画像提供:B&G財団)
そんな中に小さなお子さんたちが無防備に入ってしまうことを許してしまっている、保護者の危機意識の低さが、多くの事故を発生させているといっていいでしょう。子どもたちは親の目を盗んで遊ぶのが大好きであり、常にその隙を狙っています。そして「絶対にダメ」ということほどやりたがる特性を持っています。
強烈な逆流「バックウォッシュ」に引き込まれると大変危険(画像提供:B&G財団)
小さなお子さんを河川で遊ばせるときは、たとえ1分でも目を離してはいけません。ライフジャケットは必須であり、浮き輪を持たせているから大丈夫とはなりません。夏場に川沿いのキャンプ場などに行くと、小さなお子さん連れの団体がバーベキューなどを行っていますが、ほとんどのグループは例外なく飲酒をしています。飲酒をしていて小さなお子さんが溺れたときに果たして助けることが可能なのでしょうか?
親はどうやって対策をすれば良いのか
さて、そのような川の事故を起こさないために、保護者はどうしたら良いのでしょうか。例年300件近い件数が報告されている水難事故の中で、小さなお子さんの死亡・行方不明者数は毎年必ず20名前後は発生しています。中には「こんな浅い水でなぜ溺れる?」というような事故もあり、そのほとんどは「親がほんの少し目を離したすきに」発生しています。近所の用水路や水場なども油断はできません。そもそも泳いだり、遊んだりする場所ではないのですから、安全が確保されるわけはありません。柵があったとしてもほんの少し隙間があればこじ開けてでもその場に入ります。「進入禁止」の看板などあっても役にたちません。
小さなお子さんがいるご家庭では保護者が子どもの行動を常に把握していること。事故が起きてから後悔しても遅いということを頭に常においておきましょう。子ども用のライフジャケットを付けさせましょう、というと「そんな大げさな」と言われてしまうかもしれませんが、付けていれば溺死する危険を大きく減らせます。着衣のまま水遊びをさせるなどは言語道断です。
子どもの水難事故は保護者の意識、準備で限りなくゼロに近づけられるもの、と覚えておいてください。そして子どもたちは大人の行動をよく見ています。ルールを破る大人が周囲にいると「大人がやっているんだから」とすぐ真似をします。社会全体で小さなお子さんを守るような行動をするべきなのではないでしょうか。
【画像提供】B&G財団