人間関係

ADHD当事者の私が「察する」ことが苦手な男性に伝えたい3つの言葉

発達障害ADHD(注意欠陥障害)と診断された筆者は、HSP気質(敏感な気質)のため共感力はあるものの、ASD(自閉症スペクトラム)傾向を持つため空気を読んで察するのが苦手。その経験から、男性やASD傾向の方に伝えたい3つの言葉があります

執筆者:藤嶋 ひじり

気持ちを汲み取る会話が苦手な特性の人が「考えていること」

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発達障害と一口にいっても、その特性はADHD(注意欠陥障害)とASD(自閉症スペクトラム)のどちらも持ち合わせているものです。発達障害ADHDと診断された筆者は、コミュニケーションに関しては小さいころASD傾向が強く、空気を読んで察するのが苦手なため、女子同士のコミュニケーションにおいては、いつもいきなり怒られるので怖いと思っていました。

女子のコミュニケーションの傾向とそれによる困りごとについて、主観を交えながら書いてみます。

1. その場にいない人の悪口を言う
→だから、本当は誰と誰が仲がいいのかがわからない。裏表があることを理解できませんでした。

2. 言葉と裏腹に褒めたり卑下したりする
→「絵が上手だね。私なんてこんなに下手」と言われたときの正解は、「そんなことないよ。◯◯ちゃんも上手だよ」。「ふーん」と答えると怒る友達(汗)。私からすると面倒な茶番でした。

3. どうでもいい話を延々とする
→私は会話に「議題」や「目的」が欲しい。しかし女子トークの多くは、芸能界や男子の話、噂や愚痴など、「話すことでどうなるのか」という目的が明確でない話題ばかりでつまらないのです。

4. 言葉の定義や解釈が曖昧なまま会話が続く
→人が話している言葉の定義のズレに気を取られることもしばしば。それぞれの解釈がズレたまま会話が進んでいくのがしんどくて確認すると、「どっちでもいいやん!」と、話の腰を折った私の行為が批判されてしまう始末。

5. 「友情」における暗黙の前提ルールがある
→友達だったら◯◯すべきという暗黙のルールがあっても、その理由が曖昧で納得できないことも。たとえば人気アイドルグループの推しであることが暗黙の前提で「誰が好き?」と聞かれたときに、グループそのものを「興味ない」「好きじゃない」と言うと怒られてしまう。


私自身はHSP(感受性が強く敏感な気質を持った人)のため、相手が「悲しむ気持ち」には共感できるのに、女子トークの傾向や好みについては「同感」とは言えないので苦しみました。その経験から、今ではASD傾向のある夫に対して「どうしてわかってくれないの?」と思うことなく「本当にわからないんだな」と解釈し、「私の気持ち」「その理由」「どうしてほしいか」を伝えています。
 

「共感」できなくても「理解しようとする姿勢」を忘れない

そんな私が、女ばかりの職場でもかわいがってもらえるコミュニケーション力を手に入れた経験から、男性やASD傾向の方にお伝えしたい言葉があります。その前に、前提として「違いを受け入れる」「長所と短所は表裏一体」という話をします。

女性には、共感が必要。とよくいわれます。

共感とは、相手の立場に立って考えること。女性の思う共感とは、ほぼ「同感」の意です。でも、男性やASD傾向の人は、会話のなかで素早く相手の立場に立って最適解を見つけることが苦手です。また、気持ちを偽ってまで相手に同調することも苦手です。むしろ、無理に話を合わせることのほうが不誠実で相手にも自分にも悪いとさえ考えてしまいます。本当は、この違いを女性側も受け止めるのが、ある種の学びなのだと思いますが……。

男性全般、そして、ASD傾向の人に共通する「人の気持ちを汲み取りにくい」ことは、短所でもあるけれど長所でもある。周囲の気持ちを汲み取れないからこそ集中して仕事ができる。

人が共に生きていくためには、そもそも、お互いが相手の特性を受け入れ、相手を理解しようとする気持ちが大切であり、自分とは違う部分を批判しているだけでは関係は育めません。「人との関係」はいつも、それぞれの違いを受け入れ、互いに歩み寄ることで育まれていきます。

男女のパートナーシップとは、もはや「異文化交流」だと私は思います。異なるからわからない、異なるからこそ良いのだと、二人が思わなければ、絆を育めません。

という前提のうえで、男性に知ってもらいたいのは、以下の3つの言葉です。


【女性との会話で覚えておきたい3つの言葉】

1.「大丈夫?」
「どうしたの?」「大丈夫?」。怪我や体調不良のパートナーに対して「大丈夫だろう」と思っていても聞いてみてください。そして、「◯◯なんだね?」と相手の言葉を復唱して確認してみてください。「確認する」という行為で、相手の気持ちを汲み取ろうとする「姿勢」を示すことができます。

この“確認する対話”は心理カウンセラーの浅野良雄氏が提唱する​​​「確認型応答」です(確認型応答を含む「対話法」は、ASD傾向の方にお勧めです)。

2. 「なにか僕にできることはある?」
女性が困ったことを訴えている時、女性が無言で機嫌が悪くなっている時。多くの女性は「察してくれないなぁ」と思っています。そんな時、男性はとりあえず確認してみましょう。「なにか僕にできることはある?」「いま、なにをしてほしい?」といった感じです。

女性の本音は「言わなくてもわかってほしい……」なのですが、せめて聞いてあげることができれば愛情は伝わるはずです。

3. 「ありがとう」
これは女性に限らず、お互いに、なによりも大切なのは「感謝」の気持ち。

会話の内容の「正しさ」にばかりフォーカスするASD傾向の男性(私の夫もそうです)は、言葉尻ばかり捉えて、こちらの気遣いや優しさを度々無視します。

そのたびに私は「なぜ傷つくのか」「どうしてほしいのか」を解説するので、最近では夫も、内容の正しさについて言及し終えると、「でも、ありがとう」と言ってくれます。この「でも、ありがとう」だけで少し気持ちを変えられます。

もしも、相手が怒ったり悲しんだりしているのなら「ごめんね」と伝えてみてください。会話中に、その内容の「正誤」が気になって話を変えてしまう習慣は、「あなたのため」と見えない気配りをしてくれている女性の気持ちを受け止めず、投げかけた言葉を叩き落として傷つけたことになるのです。たとえ意図して傷つけたのではないとしても。

また、暮らしのなかで共感がなくても、毎日、寝る前に「今日もありがとう」と言ってくれる夫なら、どうでしょう? 女性にとっては、かなり印象が違うはずです。
 

長所は短所。長所として捉え直すリフレーミングを

先日、テレビに「カサンドラ症候群」(=発達障害ASDのパートナーを持つ人)の方が登場していました(番組で取り上げていた方は女性)。その女性が専業主婦として何十年も生きてこられたのは、社会のなかで周囲との摩擦にもめげずにたくましく定年まで勤め上げた夫のおかげ。夫の“共感力の低さ”のおかげで「安心」「安定」という大きなギフトをもらってきたかもしれないのです。

仮に夫が“共感力の高い”人ならば、周囲を気遣い精神的に疲れて社会の荒波にめげてしまったかもしれません。そうやって、リフレーミングしてみるのです。

最後に女性に伝えたいのは、「同意」してもらえなくても「愛されていない」のではないということ。同意と愛情は無関係です。同意がないのは寂しいかもしれませんが、男女で愛情を伝える方法が異なり、伝わるタイミングにズレがあるのだと解釈しましょう。自分を責めたり悲しんだりせずに、お互いに違いを受け入れ、歩み寄れるといいですね。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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