夫の育児休暇で妻が疲れる理由
「くらしのマーケット」が“男性の育休取得”に関する調査を実施した(※)。まだまだ環境は整っていないものの、子どもを望む男性の86パーセントが育休を取得したいと答えている。
実際に育休を取得した男性に理由を問うと、「パートナーの助けになりたいから」が45パーセントを超える。
興味深いのはここからだ。育休をとった男性の8割強が「非常によかった」と答えているのに対し、女性は夫が育休をとったことについて「非常によかった」と答えたのは47パーセントにとどまっている。
女性たちが夫にやってほしいと望むのは、「子どもの世話(お風呂入れ)」「洗濯・掃除などの家事」「買い物」が上位なのだが、夫たちが実際にやったのは「子ども世話(おむつ替え)」「子どもの世話(お風呂入れ)」「その他、子どもの世話」となっており、家事に積極的な夫の姿があまり見えてこないのだ。
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育休はありがたかったけど
「うちの夫も育休をとりました。最初は『何でもやるからさ』と言っていたのに、慣れたのは子どもの扱いだけ。しかも、そろそろお風呂に入れて、そろそろおむつだよっていちいち言わないとやらないんですよ」4歳長男と、生後半年の長女をもつキヨコさん(38歳)はそう言って苦笑した。夫婦ともに地方出身、しかもコロナ禍で手伝ってくれる人を確保するのが大変だったため、今回は夫が2カ月ほど育休をとった。
「週に2回ほど買い物にも行ってくれましたが、頼んだものが見当たらないと買ってこないんですよね。代わりのものを買えばいいし、別の店で買ってくることもできるのに。肉にしろ魚にしろ、だいたいいくらくらいのものと指定しないと、やたら高いものを買ってくることもあるし……。友人の夫は、ひとり暮らしが長かったから何も言わなくてもどんどん家事をやってくれるんですって。羨ましいとつくづく思いました」
言わないとやってくれない、やってくれても不完全となれば、妻たちがイラッとくるのもうなずける。しかも、言い方にも気をつけないといけないとキヨコさんはため息をつく。
「うちは夫が5歳年上なんです。それもあるのか、『こうやればいいじゃない』みたいな言い方をすると、逆ギレするんですよね。『おまえは口だけ出していればいいけど、実際にやってる身にもなれよ』って。いや、たかが洗濯だし、私、ずっとやってきたしと思うんですが、それを言うとさらにめんどうなことになる。夫のプライドを傷つけないように家の中のことをしてもらうのがこんなに大変だと思わなかった」
体がつらくても自分でやったほうが早いと思い、動こうとすると「オレがやるって言ってるだろ」と怒るのだそう。
「労ってくれているのか怒られているのかわからない。こっちも情緒不安定だから、けっこう泣いたり騒いだりしましたね」
夫が育休を終えて仕事に戻ったときは、キヨコさんのほうがほっとしたという。
キッチンの白板を使ってコミュニケーション
「頼んだ、頼まれてない、言った言わないみたいなことが多かったので、うちではキッチンの白板に、その日、私が夫にしてほしいことを書いておきました。夫はわからなければ私に聞く。無用な争いを避けるために話し合って決めたんです」ミナさん(36歳)の夫が育休をとったのは1年半前のこと。初めての子だったから、ふたりとも焦ってばかりで、なかなかお互いにやさしくなれなかったという。
「本当は私の母が来てくれるはずだったんですが、急に体調を崩してこられなくなって。ふたりでがんばってやっていこうと言ったのに、夫は何をしたらいいかわからずイライラ。私もあれやってこれやってと、その場で言うしかなくて、夫にうまく伝わらない」
そこでキッチンにあった白板を使うことにしたのだという。夫はそれを見て、時間調整をしながら自分のペースで育児も家事もこなしてくれた。
「そうなると私もありがたい気持ちが募って、今日は私がおいしいもの作るよって台所に立ったり。子どもがギャン泣きして泣き止まないときも、夫がいろいろ工夫してくれて。思い通りにならなくても、お互いに少し譲って、子どものことを第一に考えられれば、なんとか切り抜けていけるのかなと思いました」
今でも同い年の夫は、早く帰れた日は料理を作ったりお風呂掃除をしたりする。家事をやるのがごく自然に身についてきたようだ。
「継続してくれないと意味がないですもんね。子どもができて、少し争いがあって(笑)、解決しながら、ようやく夫が“生活者”になってきたという感じです。それでもまだまだ、家事は余力でみたいに思っているところはあるけど」
仕事をすることと生活をすることは、どちらにより価値があるというものでもない。家庭という単位でみれば、仕事と生活は両輪なのだ。
男性が育休をとることがごく当たり前のことになる日は、いつになるのだろうか。
※「男性の育休取得」に関するアンケート調査(2021年1月19日~1月24日、くらしのマーケット大学)
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