過度なダイエットにより無月経に陥ることがある
ダイエットによって無月経に陥る人は少なくない
婦人科の漢方相談では、こういったご相談を受けることも珍しくありません。
私自身も高校生のころ拒食症になり、月経が止まってしまった経験があります。無月経は体重を戻してからも数年間続き、婦人科で服薬治療を受けても出していただいた薬が合わず、当時はとても悩みました。
ダイエットによる無月経は、ダイエットを止めればすぐに元に戻る、というものではありません。また、月経が止まって「つらい生理が来なくて楽」と考えてしまうこともあるかもしれませんが、無月経の原因に、高プロラクチン血症や多嚢胞性卵胞症候群など、妊娠に関わる疾患や様々な要因が隠れていることもあるため、早めに婦人科の診療を受けることが大切です。今回は、過度なダイエットによる無月経への対処法、受診の目安について解説します。
ダイエットによる無月経……ピル服用で改善するケースも
ダイエットによる無月経の対処法はさまざまですが、中用量のピルを治療に用いることがあります。この場合のピルは、避妊などの目的で用いる低用量ピルとは、ホルモンの含有量が異なるものです。ダイエットによる無月経は、「視床下部性無月経」が多いと考えられています。病院でプロゲステロンを単独投与して消退出血が起こった場合を「第1度無月経」と言い、この場合は無月経であってもエストロゲンの作用は保たれている状態と診断されます。これに対して、プロゲステロンの単独投与では消退出血が起こらず、プロゲステロンとエストロゲンを投与して消退出血が起こった場合を「第2度無月経」と言います。エストロゲンの作用が保たれていない状態という診断です。
第1度無月経の場合は、プロゲステロン製剤を内服することで対応します。また、妊娠を希望されている場合は、排卵誘発剤を用いることもあります。そして第2度無月経の場合は、一般的に、プロゲステロンとエストロゲンを含む中用量のピルを周期的に投与して消退出血をおこす「カウフマン療法」という治療を繰り返して行うことになります。この場合も長期間の投与ではなく、3~4ヶ月の治療期間後、休薬期間をおいて状態を評価をします。
ダイエットが原因の無月経改善に重要な生活習慣・食習慣の改善
ダイエットが原因で無月経が起こるのは、過度な食事制限などで、脳に「次にいつ、しっかりとした栄養が入ってくるか分からない」という大きなストレスを与えてしまっているためとも言えます。体脂肪率が22%以下になってくると月経不順、月経異常が起こりやすくなります。また、体重の急激な減少や体脂肪率が17%以下になると、体重減少性無月経に陥ることが知られていますので、体脂肪の数値はダイエットに取り組む際の一つの目安として注意しましょう。
生活習慣を整える上で、まずは1日の食事のタイミングや、食事量を、ある程度一定にすることが大切です。つい暴飲暴食をしてしまった後で、ある程度節制するのは間違っていませんが、空腹の状態が何時間も続いた後に暴食をするような行為を続けていると、血糖値や体重の変動に繋がりやすくなり、脳へのストレスにもなってしまうので控えましょう。
漢方薬を使ったダイエットによる無月経の解決法
婦人科の漢方相談では、ダイエットによる無月経に対して、漢方の処方を行うことがあります。急激なダイエットが原因で体重減少や、胃腸機能の衰えが見られる場合は、胃腸の働きを改善させ、食欲の増進に繋がる「補中益気湯」「十全大補湯」などを処方します。
このようにお伝えすると、これらの漢方薬を飲むと太ってしまうのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、これらは胃腸の働きを助け、全身の臓腑の働きもよくする漢方です。体の代謝をあげていくことで、しっかり食べ、食べた分をエネルギーに変換して元気に活動できるように促してくれるので、「食べても太りにくい体作りをサポートしてくれる」漢方と考えるのがよいでしょう。
また、精神的な落ち込みから、食欲不振に陥ってしまった方には、精神を安定させる「安神作用」のある「帰脾湯」を用いることもあります。
無月経の放置は厳禁! 3カ月以上の無月経は早めに婦人科受診を
ダイエットの結果、無月経になってしまった場合、体重を戻したとしてもなかなか再来しなかったり、月経不順に陥ってしまうことがあります。無月経を長期間放置をしてしまうと、回復までに時間がかかってしまうことや、子宮が萎縮してしまうことがありますので、生理がない方が楽だといった安易な考えで、放置してはいけません。毎月来ていた月経が3ヶ月以上来ない場合などは、早めに受診しましょう。また、カロリーを気にして、お菓子を食べて食事を抜いてしまうなど、必要な栄養素が足りない状況も無月経の要因になります。ストレスになるほど堅苦しく考える必要はありませんが、ダイエットをする場合には、カロリーだけではなく、栄養バランスを意識しながら、取り組んでみてくださいね。