妻にいらつく自分は狭量なのか……
この時期、篠原涼子、前田敦子など有名人夫婦が別居していることが発覚し、話題になっている。有名人のみならず、コロナ禍において多くの人たちがストレスフルになっているのだろう。ふだんなら見なくてもいいこと、気づかなくてもいいことに目がいってしまうのかもしれない。そして、そうなった自分がいけないのかと人は自分を責めてしまう。
否定から入る妻の言葉が怖い
「妻がああいう人間だと気づかなかったんですよね」
いきなりそう言うのは、ミツオさん(37歳)だ。5年前、1歳年下のマキさんと結婚、3歳の娘がいる。3月末から在宅勤務が始まり、現在は週に4日ほど出社している。
「妻はもともと在宅でWEB関係の仕事をしているため、家で仕事をするということに関しては、妻のほうが先輩なんです。だから僕が在宅勤務になって、ネット環境も含めて右往左往しているとき、しっかりフォローしてくれました。それはありがたかったんですが」
そこで妻は優位に立ったと思ったのか、それ以来、ふたりの関係は微妙にギクシャクするようになっていく。
「1日1食は僕が作ることにしていました。仕事の都合に合わせて、今日は昼を作るよと声をかけて。栄養のバランスとか彩りとか、それなりに考えて作りましたよ。ところが妻は絶対に褒めない。まず否定から入るんです。トマトソースのパスタとサラダを作ったときも、見るなり『おいしそうに見えなーい』と。冗談めかして言うんですが、作ったほうは傷つきますよね。そして何も言わずに食べ進める。娘が『おいしい』と言ってくれたので涙ぐみそうになりました」
最初はいちいち傷ついていたミツオさんだが、そのうち妻の態度に腹が立つようになっていった。ミツオさんは、妻が作ってくれると必ず、「おいしそうだね」と言うようにしていた。ところが妻はその言葉にも、「おいしそう、じゃなくておいしいの」と自信満々で言うのだ。
「確かに妻は料理がうまい。だけどドヤ顔で言われると、ついムッとしちゃいますよ。あるとき、僕が作ったものを何も言わずに食べているので、『どうしたらもっとおいしくなるかな』とアドバイスを求めてみたんです。すると『ま、いいんじゃないの。あなたがおいしいと思って作ってるわけでしょ』と突き放された。彼女、こういう性格だった?と毎日のように驚いていました」
友人の結婚式で知り合ったふたりは、1年半ほどつきあって結婚した。つきあっているときも結婚してからも、特に妻の性格が悪いと思ったことはなかったという。それが自粛生活を送るうち、一気に妻の性格を疑うようになっていった。
「ストレスがたまっているんだろうと、僕もなるべく気にしないで過ごすしかありませんでした」
妻の“策略”が怖い
今も家にいるときは、ミツオさんがよく料理をする。もちろん洗濯や掃除などもやるようにはしているが、なかなか妻から合格点はもらえていない。それもなるべく気にしないようにしてきたのだが、先日、こんなことがあった。「僕はなるべく文句を言わないようにしていたんですが、妻はいろいろなものの蓋をきちんと閉めるのが苦手みたいなんですよ。洗剤もそうだし、瓶に入った食べ物の蓋なども、いまいち緩い。きちんと閉めたほうがいいよと言ったことはあるんだけど改善されていなかったので、先日、洗濯するときにひょいと蓋部分を持ったら、容器を倒して液体洗剤をぶちまけてしまった。うわっと叫んだら妻が覗いたので、『ちゃんと蓋閉めてって言ったじゃん』と思わず言ったんですよ」
すると妻は部屋にこもってしまったという。娘もほったらかし、彼が食事の用意をしても部屋から出てこない。
「こっちも頭に来て放っておいたんですが、だんだん心配になってきて……。食事くらいとりなよと声をかけたら、ようやく出てきて、黙って食べてそのまままた部屋へ。娘は、ママと叫んで泣くし、それでも出てこないし。なんだか僕がすごく罪悪感にさいなまれました」
翌朝は早起きして、朝食を作り、妻に声をかけた。妻はなにごともなかったかのようにふるまったという。
「すべて放棄することで、あたかも僕が悪いかのように思わせる。妻がどこまで意図してやっているかわかりませんが、これはけっこう精神的にキツい。考えてみると、こういうことがけっこうあるんですよね。どう考えても妻に過失があるのに僕にあると思わされてしまう。怒った自分が狭量だったと考えて落ち込む。そこで妻は何もなかったような言動をとる。このパターン、どうにかしないとこちらが参ってしまうなと思っています」
だが、妻がそうやって反逆したとき、険悪な雰囲気を長引かせたくない、娘の気持ちを考えるとこのままではいけないと折れるしかないのだ。
「娘が大きくなるまでは、なるべく気にしないようにしながら、自分が率先して家事育児をやっていくしかない。わかっているけど、なかなかそれを気持ちで納得できないところもあるんですよ……」
ミツオさんはそう言うと、大きなため息をついた。