生命保険に関する一般の人たちの認識には「誤認」もあります。今回はよくある3つの例を取り上げます。
 

1. 「保険料が安い」だけではダメ

この考え方には2つの論点があります。まず「保険料の安さより各種給付金の支払いがきちんとなされることが重要」という論法です。

私はとても不思議に感じます。給付金支払いが問題なく行われるのは大前提だからです。給付金支払いが契約通りになされなければ、保険ではなく詐欺でしょう。

過去には相対的に保険料が高い大手生保で、意図的な保険金の「不払い」が行われた事実もあります。

家計における保険料はリスク管理のための固定費です。したがって、同じような保険がある場合、保険料は安いほど良いという認識でいいはずです。
 
本当に必要?担当者のコンサルティングやアフターフォロー

本当に必要?担当者のコンサルティングやアフターフォロー


もう一つ、「保険料には担当者によるコンサルティング料やアフターフォローなどのサービス料も含まれるので、額面だけを見て高額であると断定できない」という主張もあります。

こちらも説得力に欠けると感じます。保険販売に携わる担当者と顧客はあらかじめ「利益相反」の関係だからです。担当者には手数料が高い商品を売る動機があります。一方、手数料が高くなるほど、給付金や満期金として顧客に還元されるお金は減るのです。

実際、コンサルティングの内容は、高額な手数料が稼げる商品の選択に誘導する「話法」に過ぎないこともあります。アフターフォローにしても、担当者の個人差は否めません。

一般の人には、むしろ「コンサルティングやアフターフォローが不要なくらい、わかりやすく安価な仕組みが望ましいのではないか」という視点を持ってほしいと思います。

 

2. 「一生涯の保障」が安心

老後も安心とは言い切れない「一生涯の保障」がある保険

老後も安心とは言い切れない「一生涯の保障」がある保険


例えば「医療保険」や「がん保険」では、一生涯の保障がある終身型が主流です。加齢とともに人が入院する確率などは高くなるため「65歳くらいまでの期間限定の保障では保険に加入する意味がない」と考える人が多いのです。

人の気持ちとしてはわかるつもりです。しかし、合理性に欠けます。国の「後期高齢者医療制度(75歳以上の人が対象) 」の例がわかりやすいかと思います。保険料で賄えるのは給付額の半分くらいで、残りは税金が投入されているからです。

民間の保険では、給付金の原資はもちろん、保険会社の経費や利益も加入者が負担するのです。手ごろな保険料で老後に手厚い保障を得られるわけがありません。常識でわかることですが、「一生涯の安心」を求める思いが冷静な思考を妨げているように感じます。

「若い時に一生涯の保障がある保険に入り、現役の間に保険料を払ってしまうといい」と言う人もいますが、医療環境などの変化に対応できなくなる可能性が高まります。

「数十年後の時代に合った給付を受けられる保険を、今、設計できる人はいないだろう」と、やはり常識で考えたいと思います。

保険の利用が向いているのは、現役世代が「頻発しない、目先のリスク」に期間限定で備えるような場合なのです。老後の保障などは健康保険と自己資金での対応が基本と認識しましょう。

 

3. 「掛け捨て」は損

一定期間、保険に加入していて、何事もなかった場合、保険料が返還されないことを「掛け捨て」と呼ぶ人たちがいます。保険料を捨ててしまったように感じるのでしょう。
 
給付されなかった保険料の行方

給付されなかった保険料の行方


物事の受けとめ方は人それぞれだとしても、保険の仕組みについて少し考えてみてほしいと思います。たとえば、私が大手生保の営業マンだった頃、保険加入から数か月後に交通事故で長期間入院することになり、100万円くらいの給付金を受け取ったお客様がいらっしゃいました。

その時点までに支払っていた保険料は数万円ですから、給付金の大半は何事もなく過ごしている人たちの保険料で賄われたわけです。給付を受けなかった人たちの保険料は、断じて捨てられたわけではありません。保険ならではの給付を実現するのに大いに役に立ったのです。

保険が「加入者同士の助け合い=相互扶助」と定義される理由がわかる例だと思います。保険の利点は「掛け捨て」と呼ばれることもある仕組みで支えられているのです。
 
保険は加入者同士の助け合い

保険は加入者同士の助け合い


以上の3点について改めて整理すると、人の感情が商品等の評価に与える影響に加え、望ましい保障制度のあり方も見えてくる気がします。それは、現役世代を中心に、一定期間、わかりやすく安価な掛け捨ての保障を提供している制度です。非営利の生活協同組合が提供している「都道府県民共済」の制度などは一つの好例ではないでしょうか。

>>「都道府県民共済」について詳しく
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