亀山早苗の恋愛コラム

同棲3回、全部失敗…束縛は嫌だけど独りの人生も嫌な女のひとり言

人と住むのが苦手、「女らしさって何?」、そんな悩みを抱えている女性は少なくない。恋愛したい、もっとわかりあいたい。そう思いながらもなかなかうまくいかない女性の悩みと葛藤は深い。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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同棲3回、全部失敗……かわいくなれない女のひとり言

同棲失敗

人と住むのが苦手、「女らしさって何?」、そんな悩みを抱えている女性は少なくない。恋愛したい、もっとわかりあいたい。そう思いながらもなかなかうまくいかない女性の悩みと葛藤は深い。

 

3度も同棲したけど全部逃げ出して

「もう一生ひとりで暮らすしかないのかなあと思い始めています」

苦笑しながらそう言うのは、マナさん(34歳)。複雑な家庭で育ったからかなあとつぶやく。3歳のとき両親が離婚、母方の祖父母と暮らしていたが、中学生になったころ母が戻ってきた。

「私を棄てたくせに、それからは母親風を吹かして支配しようとしたんです。祖父母も体が弱って母の言いなり。そのうち家に男性を連れてくるようになったんだけど、この男がまたひどくて」

何度か彼に襲われそうになったマナさんは、高校時代に家出し、友だちの家を転々としながらなんとか卒業にこぎつけた。

「ちゃんと勉強したかったので、大学の二部に入学、働きながら大学へ行きました。勤めていたのが食品関係の会社だったので、余り物で食いつないでいましたね」

大学を卒業して、別の会社に転職。ようやく「人並みの」生活ができるようになったという。

「学生時代に男友だちの家に転がり込んで一緒に住んだことがあるんです。彼も仕事をしていたから家賃を折半すれば貯金もできる。だけどこれは恋ではなかったですね。卒業と同時に、私は別にアパートを借りるわと言ったら、彼、結婚しようと思っていたのにと涙目。私は全然そんなつもりがなかったので驚きました」

なんとも淡々と語るマナさん。

ところが就職した企業で、自分からある先輩を好きになった。生まれて初めての片思いだったが、片思いをしている自分がイヤで思い切って告白してみた。

「なぜかタイミングがよかったみたいで、つきあおうということになって。つきあって3ヶ月もたたないうちに同棲。家に人がいるって、なんか温かい気持ちになるんですよね。だけどそのうち、彼が『昨日、部署で飲みに行っただろう。誰とどういう話をしたの』とやたら嫉妬してくるようになって。そういうの苦手なんですよ」

愛されて育っていないから、愛情には飢えている。だが、それを嫉妬という無粋な形に置き換えられるととたんに気持ちが萎えてしまうと彼女は言った。もっとストレートにシンプルに愛情表現をしてくれないと、素直には受け取れないだろう、彼女に限らず。

 

ひとりで生きるのはイヤだけど、ふたりでいがみ合うのはもっとイヤ

3度目の同棲は29歳のとき。友だちの紹介で知り合った人と、「今回こそと思ってゆっくりつきあった」そう。つきあって8ヶ月たったところで結婚を前提に同棲した。

「彼はすぐにでも結婚しちゃおうよと言ったんですが、私は怖くていきなり結婚には踏み切れなかった。とりあえず一緒に住もうと言ったのは私。ただ、やはり私は『何時に帰ってくる?』とか『週末、どうする?』という会話が苦手なんですよね。適当にごまかしていたんですが、あるとき彼が、『マナはどうして僕に心を開かないんだ』と言い出して。いつもならそこで逃げるけど、今回はちゃんと話してみようと思って、『人を束縛するような言葉を聞くと逃げたくなるの』と気持ちを打ち明けたんです。彼は黙って聞いてくれたけど、『それって協調性がないってことだよね、人とは暮らせないよ』って。ひと言で斬り捨てられるような話なのか……と愕然としました」

それでも彼女は自分の生育歴も含め、彼と話し合おうとした。それでも根底に「どうせわかりあえっこない」という思いはあった。だからどうしても話が理屈っぽくなる。それはマナさんの特徴らしい。彼は「だいたい、マナはかわいくない。どうしてオレをもっと頼ってくれないんだ」と言った。

「そのとき、私の頭の中で『無理――』という言葉が鳴り響きました。大人の女性をつかまえてかわいいってなに? かわいくないと男性とはつきあえないの? どうしてかわいくないといけないの? 対等に議論はできないの? と10個くらいのハテナが浮かんでどうにもならなかったんです」

人としてどこか「かわいらしさ」をもつことは男女ともにモテる条件かもしれない。だが男性が女性に向かっていう「かわいい」は、多くの場合、自分よりあらゆる面で劣っているほうがつきあいやすいというだけのことだ。実際、マナさんの彼もそのあとに「オレを頼れ」と言っている。自分では何もできず、考えられず、男を頼る女性が男にとって「かわいい」女なのだ。だが、今の世の中、そんな女性はほとんどいない。

「オレがいないとダメなんだな、彼女は」

と思っている男性がいたら、それは女性がそう思わせてくれているだけだ。

マナさんのような直球型の女性はそういう姑息な手法をよしとしない。

「まあ、結局、そこからギスギスして、またも私が飛び出しました。私はどうやら男を追い出すタイプではなくて、自分から飛び出すタイプみたいです(笑)」

あれから4年、彼女はずっとひとりで暮らしている。誰にも気兼ねせず、自由に時間を使えるひとり暮らしは、この上なく快適なのだが、はたして本当にこれでいいのかと最近、彼女は考えるようになった。

「コロナの影響で、うちの会社も在宅勤務だったんです。今も出社は仕事に応じて週2、3回。たぶん、これが続くと思う。こんなときに家に他人がいなくてよかったと思ったんですが、そんなふうに思う私は本当に一生、ひとりでいいんだろうかと……」

ひとりでいたい、だがそれで100パーセント満足だともまだ言い切れない。無理をせずに自然に任せようとは思っているが、「そもそも、ひとりがいいと思う自分がおかしいのではないか」と日によって心がぐらぐら揺れている。
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