インテリアコーディネート

持続可能な暮らしを、エシカルなインテリアで実践

見えない新型コロナウイルスの感染に世界中が疲弊、社会の価値観が否応なしに変わってしまいました。終息後、注目されるのはエシカルなインテリア、持続可能な社会の実現、環境に配慮した暮らし方のヒントを紹介します。

菅野 民子

執筆者:菅野 民子

インテリアスタイル実例ガイド

明日からすぐに、サステナブルな暮らしができるアイテムを紹介します

 
エシカルなインテリア、カーテンクリップ、イエノテキスタイル

布を挟むだけでカーテンとして使えるカーテンクリップ、モチーフはひつじの角(イエノテキスタイル)


夏になったから、涼しげなカーテンがいいなぁ~!と思っているあなたに提案。おしゃれ感覚でサステナブルな暮らしの手始めとして、カーテンを取り替えてみましょう。カーテンとして販売されているものでなくても、お好みの生地にカーテンクリップを挟んで、ランナーに掛ければ、すぐにオリジナルカーテンに変身します。

幅145㎝長さ230㎝のマルチクロスだったら、5~7個のクリップでナチュラルな感じに、7~10個のクリップを使うと、シックでクラシックな感じが演出できます。さらに、カーテンが飽きたら、取り外してベッドカバーとして、またはソファカバーとして使うことができます。

私たちはファッションや流行には敏感、しかしインテリアはちょっと苦手。従来の慣習や市場にたくさん出回る商品だけで、暮らしの周りを整えようとしてしまいます。常識を取り払うと、どのような布でも、カーテンとして使ってみることは可能でしょう。自分スタイルをきちんと持ち、本当に必要なものを見極め、シンプルに暮らすことが、環境にとって良いサステナブル(持続可能な発展)につながります。
 
「疲れない、心地よく楽しい暮らし」をするには、「買う」と決めてから、素材、質感、サイズをじっくり吟味。気に入るものが見つかるまで妥協せずに探しましょう。

 

エシカルなインテリアのコツ

「ゴミにしない」ことも、サステナブル(持続可能な発展)につながる行為なのです。

エシカルなインテリアのコツは、少し良質で魂を感じるもの、良い素材だと本当に感じられるもの、ほんとうに好きなものに出会うこと。そしてそれを十分に楽しむ。大切なものがあることが特別な空間になり、“心地よい家”ができます。一度にそろえるのではなく、少しずつ手にいれましょう。マイホームのインテリアこそ、エシカルな商品との出会いを求めて、ゆっくりつくり上げていきましょう。
 
とりあえず買って、古くなったから捨てて、新しいものを買う。誰もが疑問を持たず、いままで暮らしてきました。でも、古くなったら直して使うほうがもっと幸せ。なぜって、そこには家族のたくさんの時間や愛着がしみ込んでいる。少し高価でも、ずっと長く使い続けることが、エシカルな暮らし方になります。
 
気に入った家具が見つかったら、使われている木の産地を知ることが環境保全への取り組みに繋がります。外来材だったら違法伐採材を排除するのがポイント。森林減少による温暖化の防止をはじめ、環境に配慮できます。国産材を積極的に使うことは、地産地消、林業の活性化になり、日本の森を育てることにつながります。

「森林認証制度(FSC・PFSC)」のマークあるものは、適切に管理された森林から切り出された証明と、加工から流通経路の管理などトレーサビリティを明らかにしています。店頭やショールーム、カタログで探してみましょう。

 

持続可能な暮らしを、エシカルなインテリアで実践

エシカルな製品(商品)を購入することで社会に貢献する「エシカル消費」という考え方があります。家具やインテリア製品は耐久消費材のため価格も高く、簡単に買い換えたりできないので、日用品に比べたら少し難しいかもしれません。しかし、買い換えのタイミングなどを見つけて、インテリア商品の選択基準の中に価格や品質、デザインの嗜好ともにぜひ「エシカル」を加えてみてはいかがでしょうか。
 
1.材料調達から製造の過程で、環境や社会に負荷を与えていないことが明らかなもの
2.長期使用に耐えられるか、または再生可能なものであること
3.購入することにより、地域や誰かを応援することになるもの

これらは、さまざまなエシカル認証ラベルが普及していますので参考にしながら、「人や環境に負担をかけていないか!」、「見えない何か(誰か)に犠牲を強いていないか!」などを知った上で購入する。これがエシカル消費・エシカル購入と呼ばれるものです。

 

エシカルなインテリア選び(1)
日本の森を守る家具づくり <カンディハウス>

 
カンディハウス、深澤直人、北海道ナラ材

深澤直人デザイン/YUKAR(ユカラ)シリーズ、ソファ・アームチェア・オットマン・丸テーブル(カンディハウス)

 
北海道の旭川は、日本有数の家具産地です。大雪山系の森の木を伐りだし、生活の道具をつくりはじめたのが発祥と言われています。かって、北海道は広葉樹大国と言われ、80年代後半まで、太く優良なナラやセンの木を大量に欧米などに輸出していました。今、「次の森を育てておこう」と植樹活動に取り込み、未来に立派な樹を残すために大切に間引かれ、その木で椅子や木工製品が作られています。

旭川から世界に通じるデザイン家具を発信しているのが「カンディハウス」です。創業者の長原氏は、30代半ばにドイツに研修中に、日本では使われていない北海道の小楢・ナラ材が海外で最高級材として珍重されていることに衝撃を受け、北海道の森の木を使い家具をつくることを決意します。写真は、2019年の作品「YUKAR(ユカラ)」はアイヌ語に由来する、世界的デザイナー深澤直人のデザイン。北海道産のナラ材の質感が魅力、木の温もりを感じるマットな仕上げになっています。
 
100年も200年生き続ける木の寿命、同じ年月を家具として生きられると言います。カンディハウスの家具は、長く愛用する人が増えました。カンディハウスでは、不要になった製品を買い取り、深みのあるヴィンテージとして店頭に並び、家具はもう一つの人生を歩みます。もちろん傷ついたり、汚れたり、でも愛着がありまだまだずっと使いたい時には、新品同様によみがえらせる修理レストアがあります。

製造時にでる余った端材や短材は、部材や燃料としてリユース。 また社有林への植林活動も15年目となり、森へのいたわりも忘れてはいません。
 
 

エシカルなインテリア選び(2)
未来を彩るテキスタイルの姿!<ieno textile>

 
イエノテキスタイル、南村弾、マルチファブリック、自分で作るカーテン

ieno textile 浜田山ショールーム/マルチなファブリック「ウェル」


一枚の布にこだわり続けているテキスタイルデザイナーがいます。ドイツで開催される「ハイムテキスタイル」でトレンドセッターを務めるなどワイルドに活躍するデザイナーの南村弾氏。主宰するieno textileは、「なんか、いい感じ」を共有してくれる人の元へ、気持ちのいい「家のテキスタイル」を伝えて届けたいという布の専門店です。
 
ロングセラーの「ウェル」は、ボーダー柄の145×230㎝の一枚の布。ロックミシンで丁寧に縢ったマルチクロスなので、工夫次第で、暮らしの様々な場所で使うことができます。使い方はとても簡単。好きな布を選び、高さを決めてクリップを布に挟みレールに取り付けるだけで、どんな空間にもぴったりのカーテンができます。また、ベッドやソファにかけてカバーとして使用、テーブルに広げて食卓を彩ることもできるマルチに活用できるのも特徴です。カラーは8色、どのように使うかはあなたしだいです。
 
「ウエル」は世界に誇る日本の繊維リサイクル技術を使ったもの。未使用の不要な布を日本各地から集め、裁断し、再び紡績する特紡糸を開発、リサイクル糸でありながら素朴な風合いの環境にやさしい生地です。

終戦後、物資が枯渇した時代に軍服を糸にして、ロープや軍手を作ったという、当時のリサイクル技術が今でも生き続けています。日本の伝統を守り持続可能な未来につなげることになります。
 
ieno textile はいつも挑戦的でナチュラル感たっぷり、マルチクロスにペイントできる「Paint set小さなおっそ分け」は、「布用絵の具」3色をセットにした特別なパッケージ。カーテンにお絵描きができます。また、ショップの内装材や什器には、廃棄衣類から繊維板「M-Board」を使っています。

 

エシカルなインテリア選び(3)
「徳島杉」と「阿波藍」の出会い「藍染杉・凜」<大利木材>

 
藍染杉、大利木材、徳島、カラー床材

徳島杉に伝統の阿波藍で染色した床材「藍染杉・凜」を使った室内(大利木材)


徳島県はSDGsに積極的、上勝町の未来都市“ごみゼロ宣言”などSDGsの先進地域です。その中で、徳島の地域特産資源「徳島(阿波)藍」を使ったモノづくりを推進する「徳島藍ジャパンブルー推進プロジェクト」。ここでミスマッチングとしか思えない「徳島杉」と「阿波藍」が出会います。
 
大利木材では、原料の大部分を輸入し建材を製造していましたが、県からの要請は「県内の杉が伐採に適した時期になったので、これを使ってほしい」という依頼。日本の杉は、国の方針で、日本の森林の4割にも相当する杉の人工植林をした結果、政策の失敗は花粉症被害と災害に弱い山林が増加する結果になりました。伐採時期が重なり木材価格が下落して採算がとれない状態に。大利木材でも他県の杉との差別化をするには、別のアプローチが必要になりました。
 
そこから生まれたのが“藍染杉「凛」”です。無塗装の杉材は素朴な印象、どう見ても現代の空間には、使いにくい材料です。しかし、藍色に染められた杉材は、すっかりスタイリッシュな材料に、徳島にあるスターバクスの内装にも使われています。

藍色の色素が木材の細胞孔に入りこむので、表面を塗るのとは違った風合いになります。徳島杉と藍染の両方の特徴を生かしたデザインは、まさしく凛とした生活空間を楽しめそうです。塗装の必要もなく、藍の特徴である虫よけや抗菌性の効果もありそうですね。江戸時代からの阿波藍の伝統を受け継ぎ次の時代にバトンタッチ、日本の山林を守る、まさにエシカルなインテリアですね。
 

“エシカルなインテリア”、この製品が何からどうやって作られたのかを知ることによって、作り手の思いを知る。知ると愛着が生まれ、大切に使うようになります。長く大切に使うこともエシカル。自然で丁寧な生き方が、地球を守っていきます。

 
参考資料提供・協力/IDM エシカルなインテリア研究会

取材協力/株式会社カンディハウス
取材協力/ieno textile ()
取材協力/大利木材株式会社

                             
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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