亀山早苗の恋愛コラム

結婚13年、「コロナ離婚」の危機を乗りこえられた理由

家にいる時間が長くなっている人が多い現在、それは改めて夫婦関係を考え直す時間にもなっている。結婚してから初めて、夫が長期間、家にいることに違和感を覚えたり、夫という人間を見つめ直してみたり……。そこで妻は何を考えるのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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結婚以来、初めて夫と長い時間を過ごして

コロナで円満

家にいる時間が長くなっている人が多い現在、それは改めて夫婦関係を考え直す時間にもなっている。結婚してから初めて、夫が長期間、家にいることに違和感を覚えたり、夫という人間を見つめ直してみたり……。そこで妻は何を考えるのだろうか。
 

最初は互いにイライラしていた

ヒロカさん(42歳)の夫が在宅で仕事をするようになったのは3月半ばからだ。そのころは週に2回の出社だったが、緊急事態宣言以降は週に1度になった。

夫は5歳年上で結婚して13年、11歳と10歳、年子の男の子がいる。

「私は上の子を出産時に会社を辞めて家庭に入りました。もともと裁縫が好きで自分の着る洋服などは作っていたので、今は自宅で洋服作りをしてインターネットで販売もしています」

リビングでミシンを踏んでいたのだが、夫の在宅勤務と同時にリビングは夫に占拠された。しかたなく、夫婦の寝室にミシンを持ち込んで仕事を続けた。

「生地を裁断したり縫ったり、けっこう場所をとるんですよ。夫はパソコンと電話があればいいので、本当は夫に寝室へ行ってほしい。そう言ったら『あんなせまいところで仕事ができるか』と。裏には、『オレの収入で食べているんだろ』と言外の圧力がありました(笑)。夫は何かというと、自分のほうがエライと誇示してくるタイプ。そこで何か言い返してめんどうなことになるのはイヤなので、私は寝室でおとなしく仕事をしていました」

それでも、ときおり夫はリビングで「お茶淹れて」とか、「昼飯」とか大声を発する。最初のうちは黙って言いなりになっていたヒロカさんだが、特に生地の裁断中などは手を放せないこともあり、だんだんイライラが募っていった。

「あるとき、爆発してしまったんですよね。自分でできることは自分でやって、と。すると夫は『オレが働いているから』と言い始めた。もうそれは聞き飽きた、私だってやるべきことはあるし、家にいるのはお互いさま。もっと協力していかないと家庭なんてうまくいかないんじゃないの、と」

夫は黙り込んだ。そこへ幼い息子たちが黙って台所に立った。夫婦が顔を見合わせていると、息子たちは冷蔵庫を開け、黙々と料理をし始めたのだ。
 

初めて夫と真剣に話した夜

息子たちは協力して焼きそばを作ってくれた。野菜は大きめに切られていたが、それでもじゅうぶんにおいしかった。

「夫は涙目になりながら、『おいしい、おいしい』と食べていました。私が作ったものにおいしいと言ったことさえない人が。子どもたちは食後にお茶も淹れてくれたんですよ。子どもたちもおそらくさまざまな不安を抱えているのに、ふたりで話し合ったんでしょうね。私も泣けてたまらなかった。ふたりを追い込んでしまったような気がして情けなかったし」

その晩、夫は初めてヒロカさんに「いろいろ、ごめん」と言った。数年前、夫が浮気をしたこともヒロカさんは知っている。そのときだって夫は「そんなに疑うってことはオレを信じてないってことだな」と強気に出て免れた気になっていたはずだ。妻は何もかも知っていたが、夫は“疑惑”ですませようとしたのだ。ヒロカさんは家庭を壊したくなかったから、夫の浮気をほじくり返さなかった。妻が黙っていればうまくいく家庭を作ってしまったのは、自分にも責任があるとヒロカさんは感じていた。

「夫の『ごめん』のひと言で、子どもたちとともに家庭を楽しい場にしていこうと前向きに話しました。翌日、昼頃になると夫は息子たちに『何食べたい?』と聞き、『おとうさんと一緒に作ろう、というか、おとうさんに料理を教えてくれよ』と。上の子が特に料理に興味があるみたいで、3人でネットでレシピを見ながら作ってくれました」

以来、昼食は男たちが、夕食はヒロカさんが作るようになった。もちろん息子たちは夕食も手伝ってくれる。ときには子どもたちが自ら作ってくれることもある。

「4月の半ばまでは、このままいったらいつか離婚だわと思っていたんですが、一気に変わりましたね。結婚以来、いかに夫婦としてきちんと向き合ってこなかったかよくわかった。今だって完璧にうまくやっているというわけじゃないけど、『ここは改善したほうがいいよね』ということが言えるようになった。それだけで私のストレスは激減しましたね」

ときおり、ヒロカさんは夫に「ひとりになりたいことがあったら言ってね」と伝えている。夫がひとりで散歩に出ることもあれば、ヒロカさんが子どもたちを連れて外に出て、家に夫をひとり残すこともある。夫もまた、そうしてくれる。人間、ひとりでいる時間も重要なのだ。

「今は子どもたちを中心にしながら、夫婦のバランスをとっている状態。子どもたちが独立して夫婦ふたりきりになったら、と考えることもあるんですが、今のこの時期を経験したからこそ、そのときもいい距離を保っていけるかもしれないなと少し建設的に考えられるようになりました」

子どもを通じてではあるが、ようやく向き合えた夫婦。夫の「エラそうな言動」は、まだときおり見られるが、それでも夫はヒロカさんの言葉に耳を傾けるようになっている。
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