年下彼に女性の影が~アラフィフの恋
年下の彼とつきあうと気が楽だという女性は増えている。自分が尊重され、対等な感じが強くなるようだ。ところが、年の差が大きいとどうしても「若い女性の影がちらつく」こともあったりする。
楽しい恋だったのに
サトエさん(48歳)が、仕事で知り合った17歳年下の彼とつきあい始めたのは4年前。当初、彼女はつきあうことを頑なに拒んだ。
「年の差がありすぎたから気後れして。当時、彼は27歳。私は結婚歴はありませんが、長い間、5歳年上の男性と一緒に暮らしていたこともあって、彼のことを男性として見られなかったんです。でも彼は熱心にアプローチしてくれて。気づいたら、いつの間にか身近で大事な人になっていました」
おずおずとつきあい始めたサトエさんだが、彼との時間はとても居心地のいいものだった。彼にくっついてクラブにも行ってみた。サトエさんの大好きな昔のフランス映画を見せると彼は素直に感動した。お互いの文化を取り込んで、世界が広がっていくような感覚があった。
「ジェネレーションギャップはありました。でもそれが楽しいと思えたのは、彼が私の年齢をそのまま受け入れてくれたから。年の差を感じない、というのではなくて、年の差があるから楽しい関係にしてくれたんです」
つきあううちに、どんどん彼のことが好きになっていく。だが、そのことにサトエさんは恐怖感を覚えた。いつかは彼と別れなくてはいけなくなるはず。そのときに自分が立ち直れなくなるほど惚れ込んではいけない。そんな自制心が働いた。
「だから完全に私のすべてを彼に明け渡すようなことはしなかったつもり。それが彼から見たら、どこかミステリアスだったんでしょうか、彼のほうの情熱がどんどん強くなっていきました」
うれしいけれど怖い。楽しいけれど不安。そんな状況だったようだ。
女性の影が……身を退かなければいけない
ところがここ1年ほど、彼女は体調に変化を感じるようになった。非常に健康だったのに頭痛やめまいに襲われるようになり、感情も不安定になっていく。更年期だと感じたサトエさんは婦人科にかかった。「やはりそろそろ更年期ということで、微妙な体調不良が続きました。そんなとき、彼が私と一緒にいるのにスマホをいじったり、心ここにあらずという状態だったり。他に好きな女性ができたんじゃないかと疑いました。そう思うと、彼との関係を壊したくないという気持ちがものすごく強くなって。自分で思っているよりずっと彼を好きになっていたんだと思います」
彼への気持ちが募るほど、本当は別れたほうがいいんだという気持ちも強くなる。サトエさんは葛藤し、苦しんだ。
「そんなとき、仕事のつきあいで飲み会に出席することになって繁華街を歩いていたら、彼が若い女性と一緒にいたんです。彼女のほうが彼を見上げながら話しているのを見かけたんですが、体の接触はないものの、かなり親しそうな雰囲気でした」
彼女は急に気分が悪くなり、飲み会をする店に着くなりトイレで吐いてしまったという。それほどショックだったのだろう。別れが近づいている、自分が決断しなければいけないと思い込んだ。
「早く別れを言わなくてはと思いながら、なかなか言えずに今に至っています。最近は、コロナウイルスの影響でほとんど会えていないんですが、これを機会にこのまま疎遠になればいいんだと思うようにしています。彼は毎日メッセージをくれたり電話をくれたりするので、決断が鈍るのですが」
彼が一緒に歩いていた女性のことは、結局、何も聞いていない。ただ、自分が50歳を目前にして、やはり30代前半の彼を縛りつけてはいけないと思うとサトエさんは震えるような声で言った。
更年期を迎えて、精神的、肉体的、そして容貌的にも完全に自信を失っているのだろう。彼の若さがつらくなることもあるのかもしれない。
「この年で別れるのも苦しいけど、決断は自分からと最初に決めたはず。そう自分に言い聞かせています」
それが大人の女性としての彼女の矜恃なのではないだろうか。