浮気された妻たちは「夫の家庭観、家族観」を疑問に感じている
結婚すると、恋人から夫婦へと関係が変化する。多くの人たちは恋愛感情から、もっと継続的な家族愛へと気持ちも自然に変わっていく。ところが、それが寂しくなるのか、妻が妊娠すると特に、夫の中には自分の「オス」を制御しきれず婚外恋愛を求める人もいる。
妻たちは裏切られたと感じ、つらい思いをする。このとき、もちろん「女としての悲しみ」もあるだろうが、多くの女性たちは「夫の家族観を信じられなくなった」と言う。
一度浮気した男には二度目がある。そのときは許さない……ユリナさんの場合
もちろん、女としての哀しさはある。だが、それ以上に腹が立ったりつらかったりするのは、「一緒に家庭を築いてきた信頼関係を裏切られたこと」と言う女性たちは多い。
「結婚して5年目に、夫が会社の後輩と関係を持っていることを知ったんです。携帯ばかり気にしているからおかしいなとは思っていました。ある日、たまたま夫が携帯に夢中になっているとき後ろを通って、メッセージのやりとりを見ちゃったんです。『なにそれ!』と言って携帯を取り上げました」
怒りをこめてそう言うのは、ユリナさん(38歳)だ。それは3年前のできごとだった。2歳年上の夫とは、3年間つきあって30歳のときに結婚した。つきあっているときは半年間の遠距離恋愛も経験、会いたくても会えない時間があって、ようやく結婚にこぎつけた。だからこそ、「彼と一緒に温かい家庭を作りたかった」と彼女は言う。
当時、3歳と生まれたばかりの子がいた。妊娠中に関係があったと知り、彼女の怒りは爆発した。
「私自身が裏切られたというよりは、温かくていい家庭を作ろうと誓った気持ちを簡単に反古にする無責任さ、子どもに対して後ろめたさも感じなかった彼のいいかげんさに絶望しました。結婚は単なる契約かもしれない。だけどたかが5年で破ってしまうようなら、最初から契約しなければいいんです」
夫は、彼女の怒りに対して平謝りだった。ほんの出来心だった、家庭を壊すつもりなんてまったくなかったと言った。
「大人なんだから、バレればどうなるかわかっているはず。それなのに家の中で、私がいるのに平然とメッセージをやりとりしている神経がわからない」
ユリナさんは、その場で夫を追い出したという。夫は実家に戻ったらしいが、次の日、母親と一緒に現れた。
「お義母さんが泣いて泣いて。なんとか許してもらえないかと低姿勢で。私、お義母さんが好きだったので、その泣き落としに負けました」
その後、夫は心を改めたように見えるが、3年たった今も、彼女は夫を心から信頼してはいない。
「一度裏切ったヤツは二度裏切る。そう思っています。次はどんなにお義母さんが泣いても、私の気持ちは戻らないと思う」
夫は彼女のそんな気持ちをわかっているのかどうか……。
「家庭を大事にしたい」その思いに齟齬がある……ハルコさんの場合
夫たちにとって大事なのは、「妻の機嫌が損なわれずに、家庭が平穏無事であること」なのかもしれない。もっと積極的に「いい家庭を作りたい」妻たちとは、少しだけ温度差があるような気がしてならない。「夫は結局、自分は好きなことをしてもいい、家庭は妻がなんとかしてくれると思っているんじゃないでしょうか。ちょっとした浮気くらいバレても許してもらえるとも思っている。もともとどこかで妻をバカにしているんですよね」
ハルコさん(40歳)はそう言う。5歳年上の夫と結婚して12年、浮気をしているのではないかと疑ったことは何度かある。
「一度、疑っていると言ったら、『そういうの、いやなんだよね。何の証拠もないのに勝手に疑って勝手に怒るのやめたほうがいいよ。きみのせいで家庭がおかしくなる』って。全然、きちんと向き合ってくれない。妻は夫の行動に疑問をもってはいけない、何があっても明るく笑っていないといけない。夫はそう思っているとよくわかりました」
つまり、「一緒に歩いていく」姿勢が夫からは見えなかったのだ。そのとき、ハルコさんの頭の中で、「夫とともに歩む」というカードが消えた。
「無難に家庭を運営して、私は子どもたちと絆を深めよう。夫はお金をもってきてくれる人。そう気持ちが切り替わったんです」
家庭の中心は子どもと自分。本当はそういう偏った家庭にしたくなかったと彼女は言うが、夫を信頼できない以上、どうしようもないと嘆いた。
「うちの夫は家庭に所属しているけど、外ではフリーだという顔をしていたいんでしょうね。それが男性全般に言えることかどうかわかりません。ただ、うちの夫に限っては、おそらく外で、『うちのかみさんは、オレに興味がないんだよ』と言って女性を口説いている。そんな気がします」
所属しているからには帰る場所がある。だからこそ安心して外で好き勝手なことができるのだろう。とはいえ、子どもたちが成人したとき、「おそらく私の逆襲が始まります」。ハルコさんはそのときを虎視眈々と狙っている。