かつて住んでいたバルセロナで私が大好きだった生活習慣のひとつが「ベルムー」と呼ばれるアペリティフです。「ベルムー」とは赤ワインにハーブを漬けた甘いリキュールで、主に週末のランチ前や、夕食前にいただきます。
「エスカベッチェムール貝」は、そんなベルムーに合わせる定番のおつまみのひとつです。ほんのりピリ辛で病みつきになるムール貝。食卓が華やぐこと間違いなしです。
メイン料理への食欲を増進させるためのアペリティフタイム
スペイン人は食べることに熱い情熱を持つ人たちですが、平日はランチもディナーもゆっくりとれる人は少ないのが現状です。そこで、週末に思いっきり食事を楽しみます。
家族や友人たちとレストランでランチやディナーをとったり、自宅に招いたり招かれたりします。そんな時に、いきなりコース料理から始めたりはしないのがスペイン流。レストランでランチをするならば、近くのバルで待ち合わせし、そこで軽くおつまみをつまみ、ビールを飲んでからメインの会場へ行くのが一般的です。ホームパーティーでもいきなり前菜を出さずに、キッチンで最後の仕上げを行いつつ、軽くつまみながら和やかに会が始まります。
こんな時に少しでも食べてしまったら、おなかがいっぱいになってメインの料理が食べられなくなりそう……という日本人の心配をよそに、アペリティフは食欲を増進させるもの、と信じて止まないのがスペイン人たちです。私も最初は納得いかなかったものの、だんだんアペリティフタイムが楽しみになっていきました。
ベルムーによく合うスペインで人気のおつまみのひとつ
そんなアペリティフタイムにビールと並んでよく飲まれるのが、「ベルムー」と呼ばれるお酒。赤ワインにハーブなどを漬けた甘いリキュールです。昔ながらのドリンクですが、近年再ブームでおしゃれなボトルのものも販売されています。通常、これをガス入りの水や水で割ります。
「ベルムー」と一緒に注文するおつまみのには、地方による違いがあります。「タパス」という言葉を聞いたことがありますか? スペインバルで食べられる小皿料理のことですが、おつまみのことも指します。タパスは、店の厨房で調理されるものと、出来合いのものがあります。
バルセロナでの人気のアペリティフタイムのタパスは、調理系ならポテトサラダ、出来合い系なら、ポテトチップスやオリーブの実が主流です。もうひとつ一般的なのが、ムール貝のエスカベチェをはじめとする缶詰類です。
スペインのバルならどこでも、料理のようなタパスが食べられると思われがちですが、実はメインのレストランへ行く前に、さくっと飲むのがメインで、出来合いのタパスだけを置いているというバルは少なくありません。
ムール貝はどんなお酒にも合う万能おつまみ
そんな数あるおつまみのなかで、私が一番好きなのがムール貝のエスカベチェ。茹でたムール貝を酢や鷹の爪、オリーブオイルなどに漬けたものです。
ほんのりピリ辛で、ビールにもベルムーにもよく合います。白ワインにもぴったりだし、日本酒にとも合うと思います。そのまま楊枝にさして食べたり、小さく切ったパンを出してくれる場合もあります。
私もスペインの自宅にいつも常備していました。「ボカディーリョ」というバゲットパンのサンドイッチが、スペインでは日本のおにぎりのようなものなのですが、その具材にも最適です。実は、白ご飯の上に乗せても美味なんですよ。
日本人でもおいしく楽しめる味付け
スペインにはさまざまなムール貝のおつまみがあります。日本でも茹でただけのものやオイル漬けを見かけますが、やっぱりおすすめはエスカベチェ。日本人にもなじみのある味で、嫌いな人は少ないと思います。なかでもパコ ラフェンテの「エスカベッチェムール貝」には、12~14個、比較的身が大きいムール貝が入っているのでイチオシ。価格は少し高めなのですが、持ち寄りパーティーの1品としてもおしゃれだし、カジュアルだけど安っぽくない素敵な贈り物としても最適だと思います。
DATA
パコ ラフェンテ┃エスカベッチェムール貝
内容量:約115g