11月の日本代表は2チームで活動
11月のサッカー日本代表の活動に、2チーム編成で臨むことを発表した森保一監督(写真:徳原隆元/アフロ)。その思惑は?
森保一監督が新機軸を打ち出した。
11月14日にアウェイで戦うカタールW杯アジア2次予選のキルギス戦は、これまでの中心メンバーで挑む。キャプテン吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、長友佑都(ガラタサライ/トルコ)、酒井宏樹(マルセイユ/フランス)らの2018年ロシアW杯メンバーに、10月までの2次予選3試合でチームトップの4得点をあげている南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)らが顔を揃えた。23人のうち16人までが、海外クラブ所属選手である。
キルギス戦から5日後の19日に国際親善試合として行われるベネズエラ戦は、Jリーグでプレーする選手が16人となった。
海外組でどちらの試合にも選ばれたのは、GKの川島永嗣(ストラスブール/フランス)と権田修一(ポルティモネンセ/ポルトガル)、DF植田直通(セルクル・ブルージュ/ベルギー)、MF原口元気(ハノーファー/ドイツ)、柴崎岳(デポルティボ/スペイン)、中島翔哉(ポルト/ポルトガル)、浅野拓磨(パルチザン/セルビア)の7人にとどまる。ケガから復帰したばかりの大迫勇也は、どちらのリストにも含まれていない。
さらにいえば、このところ日本代表に招集されていたMF板倉滉(フローニンゲン/オランダ)、久保建英(マジョルカ/スペイン)、堂安律(PSV/オランダ)の3人は、17日開催のU-22日本代表のテストマッチのメンバーに名を連ねた。東京五輪世代(※)の彼らを加えたチームで、来夏へ向けた強化が進められる。同じく東京五輪世代で日本代表のレギュラーポジションをつかんでいる冨安健洋は、10月のモンゴル戦で負傷したため今回はメンバー外となった。
指揮官が見据える現在と未来
2つのチームを編成した理由について、森保監督は「日程が出た時から、色々と考えていた」と説明している。複数の考え方が成立するなかで、指揮官は「現在」と「未来」を見据えた。「現在」とは2次予選を勝ち抜くことだ。9月スタートの2次予選で、日本はミャンマー、モンゴル、タジキスタンに3連勝している。グループ内で日本に次いで国際サッカー連盟(FIFA)のランキングが高い(そうはいっても、日本の28位に対して94位だが)キルギスを退けることで、3次予選に進出できる首位確保へさらに一歩近づくのだ。
「未来」には2つの意味がある。
1つ目は、海外クラブ所属選手の負担軽減だ。
キルギス戦後にそれぞれのクラブに戻れば、各国のリーグ戦にいつもより余裕をもって臨める。「選手のコンディションを考慮して、よりいい状態で自チームに戻ってもらい、しっかりとポジションをつかんでもらう、あるいはパフォーマンスを上げてチーム内で存在感を発揮してもらいたい」と、森保監督はその意図を明かす。
日本代表に合流直後のリーグ戦では、スタメンから外れる選手が少なくない。長距離移動や時差の影響を、各クラブの監督は懸念するのだ。ベネズエラ戦もチームに帯同する海外組については、チーム全体のポジションバランスを考慮したものと考えられる。
2つ目の意味は、チームの底上げだ。
ベネズエラ戦にはDF進藤亮佑(北海道コンサドーレ札幌)、荒木隼人(サンフレッチェ広島)、MF古橋亨梧(ヴィッセル神戸)、オナイウ阿道(大分トリニータ)が初招集された。昨夏のロシアW杯代表のMF大島僚太(川崎フロンターレ)、同バックアップメンバーのMF井手口陽介(ガンバ大阪)も、森保監督のもとでは初めてプレーする(大島は招集後に辞退したことがある)。「これまで招集する機会のなかった選手、初招集の選手にチームの戦術などを理解してもらい、個人としてもチームともにレベルアップにつなげることが、底上げになっていくと考えている」とは森保監督だ。
公式戦ではアウェイでも勝利を目ざし、テストマッチでは結果を求めつつ試験的要素も含める。なじみの薄いやり方ではあるものの、実際はかなり現実的といっていい。少なくとも格下相手の2次予選の期間中では、十分に許容されるものと考えていいだろう。
(※)男子サッカーの五輪競技は、開催時に23歳以下の選手に出場資格がある。それ以外に、24歳以上の選手(オーバーエイジ)を3人まで招集できる。