生活費で余った分を全額貯蓄したりはしません
自らの努力と工夫で数千万円の貯蓄を手にした方に、その極意を語っていただく「貯蓄の達人」。今回は、貯めるだけでなくしっかり使いながら、46歳で3500万円を貯めた「ちー」さんに登場してもらいます。★マネープランクリニック編集部では貯蓄達人からのメッセージを募集中です★
●基本データ
ちーさん(仮名)
女性・46歳・専業主婦
夫(40代/公務員)、子ども2人(13歳・11歳)
持ち家・一戸建て
夫の年収は手取り490万円で貯蓄は200万円!!
マネー相談の場でよく語られる笑い話があります。相談に来られた70歳代のご婦人は夫に先立たられ、今は一人暮らし。口座にはすでに1億円超の預金があります。悩みを聞くと「老後が心配でお金が使えません……」。このご婦人は、心配性が少々過敏に働いているレアなケースですが、不安だからお金を使わない、使えないという気持ちは理解できます。使わなければ、貯蓄額は減らず、さらに増えていく。単純ではありますが、確実かつ即効性のある貯蓄法ともいえます。
では、もしも使っているのにお金が貯まる、そんな夢のような方法があったらどうでしょう……。専業主婦のちーさんは、生活費で余った分を全額貯蓄したりはしません。その一部は何かに必ず使い切ってしまう。それでも年間200万円は貯蓄しています。ご主人の年収は手取りで490万円。中学生と小学生の2人のお子さんがいて、妻のちーさんはパートもしていません。一体、どう家計をやりくりすれば、そんなことが可能なのでしょうか……。
一般的4人家族より月10万円低いコスト
ちーさんの家計データで目を見張るのは、やはり生活費の低さです。月額16万8000円。小中学生を抱える4人家族であれば、プラス10万円は少なくともかかっているはず。ただし、この理由は明快です。まず、通常発生する、賃貸住宅の家賃もしくは住宅ローンが発生していません。12年前、住宅ローンは組まず、現金でご実家の土地にマイホームを建てました。費用はトータルで1500万円。お父さんが建設業を営んでいたという利点もあり、低コストで建てることができました。
家族が多いと高くなりがちな保険料、通信費、食費、水道光熱費、雑費が抑えられている点も、大きな要因です。
また、これは貯める人に共通する特徴でもありますが、ボーナスからの貯蓄率が高いということ。ボーナスからの支出は2台分のクルマの維持費(車検、税金等)と固定資産税。あとは家族のレジャー費を差し引いて、残りの80万円前後を貯蓄に回します。そもそも支給額が大きいこともありますが、生活費の補てんなど、ボーナス依存の家計になっていないことが貯蓄率の高さにつながっています。
食費・日用品以外の支出予定の予算をファイリング。「集金など必要なとき以外に触ることはありません」(ちーさん)
月5万円の予備費は「全額使う」が基本
しかし、この家計で注目すべきは、そういった貯蓄率の高さもさることながら、「貯蓄一辺倒」ではないということです。家計収支をあらためて見ると、毎月の家計黒字は15万2000円。うち貯蓄が10万円ですから、5万2000円の行方が不明です。当サイトの連載企画「マネープランクリニック」では、こういう場合、80%以上の世帯が何かしら支出しています。つまり家計漏れです。しかし、ちーさんはその分を予期せぬ支出に対処するための予備費として確保します。
「でも、何もなければ使わないというわけではありません。むしろ、全額使い切るという気持ちでいます。今年は春休みに子どもの卒業旅行として、仲の良いママ友と子ども達で、USJ(全員、ロイヤルスタジオパスを購入)と大阪観光旅行に行きました。交通手段は新幹線を使い、トータル20万円ほど。それと、猫の去勢や治療費用として約5万円を、やはりそこから捻出しました」
毎月の生活コストが低いと、毎月10万円貯めても、こういう余裕が生まれるのです。単純計算で予備費は5万2000円×12=年62万4000円。これが、ボーナスとは別に「自由に使えるお金」として用意されていることに。これはかなり贅沢な話ではないでしょうか。
キャンプ場「ふもとっぱら」での写真。「キャンプ場ではかなり少数派の軽自動車ですが、荷物のためにキャリアを装着してRVBOX3個分プラスαを確保しています」(ちーさん)
しかも、そのボーナスからも別途、家族旅行の費用として年間20万円を計上。昨年の夏休みは、キャンパーの聖地「ふもとっぱら」に3泊4日でキャンプを楽しんだとのこと。富士急ハイランドやサファリパークにも行きました。例年、家族でレジャー満喫中なのです。
お金で買えない幸福を実感する
とはいえ、現在の貯蓄額は2600万円、保有する投資商品の評価額は900万円。途中、住宅の建築費を現金で支払ったわけですから、当然、今の高い貯蓄ペースでもこれほどは貯まりません。ちーさんは、いわゆる「小1の壁」(※)が理由で、下のお子さんが小学校に入学した5年前に、勤務していた病院を辞めました。結婚後、最初の出産までの2年間は手取りベースで年収500万円。その後、2人のお子さんの出産と育児で連続して4年間の育休を取り、その後は外来勤務を2年間(同420万円)、短時間勤務を2年間(同240万円)。
この間、ちーさんの収入は基本的に全額貯蓄に回っていました。夫だけの収入で生活する。共働きにおけるもっとも望ましい家計管理を確実に実践したことが、現在の金融資産の多さの土台となっているのです。
しかし、専業主婦になった当初は不安もあったといいます。貯蓄があるとはいえ、まだお子さんが小さいときに、世帯収入がほぼ半減するのですから。
「ただ、働いているときは、もっと子どもたちのそばにいたいという思いもあり、葛藤していました。小学校に入れば、保育園のときより帰宅時間も早く、宿題を見るなど親の関わりも必要になります。ならば、悩みながら仕事を続けるよりも、今は育児をしっかりして、やり切ったら復帰すればいいと割り切りました。もともとスタミナがある方ではないので、自分のペースで家事、育児ができています。そして、何より、子どもたちと同じ時間を過ごしていることに、人生で一番の幸せを感じています」
自分の収入をすべて貯蓄していた時代から、それがゼロになる生活に急展開をしたおかげで、「お金では買えない幸せを実感している」と語るちーさん。下のお子さんが中学に上がったら、また正社員として働く予定ですが、それまでは家族との時間を楽しむ。だからこそ、しっかり貯めてしっかり使うのです。
(※)小学校の学童保育が定員オーバーで預かってもらえない、あるいは預かり時間が短いため、母親が正社員として働けない状態のこと。
ちーさんおススメの貯蓄技
「断捨離を勧めます。子どもたちがいると、片付けても片付けても散らかります。いかに家事を楽にするかを考えたとき、断捨離することにしました。といっても、ゆるーい断捨離ですが。使っていない不要なものを手放し一度スッキリすると、不思議と余計なものを持ちたくなくなります。結果的に本当に必要なものがわかるようになり、無駄な出費がなくなるだけでなく、〈足るを知る〉心境になりました」断捨離の途中経過の写真。「今ではこの荷物置き場だったソファもありません」(ちーさん)
なかなか貯蓄できない人へ、達人からのアドバイス
「コンスタントに貯蓄していくためには、予算を決め、食費、日用品の購入以外には現金を持ち歩かない。そして見栄を張らず、自分がいいと思うものを購入するようにしてみてください」★マネープランクリニック編集部では貯蓄達人からのメッセージを募集中です★
取材・文/清水京武 図版/引間良基
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