人と比べてお金がない……そんな不安に押しつぶされないためには?
――「老後は2000万円が不足」――。メディアを賑わせた金融庁の報告に、多くの人が不安にかられ、動揺しました。“裏切られた!”と怒りに駆られる人もいれば、あきらめてしまう人
も……。老後のお金にまつわる不安を解消するには、どう向き合えばいいのでしょうか。
石原加受子さん:メディアの情報に踊らされて不安を募らせ、右往左往してしまう原因は、自分の中に“どう生きたいのか”という判断軸がないためです。とりわけ、他人や社会といった“自分の外側”に基準をおいて物事を考える人は、不安に陥りやすい傾向があります。
常に他人と自分を比較したり、世間体ばかり気にして、自分はそれより劣っているのではないか、負け組に転落してしまうのではないかと、勝手な妄想をしてネガティブな感情に飲み込まれてしまう。要は、自分ではなく、「他人」を基準に幸せを判断しているということです。特に今は、SNSの影響もあり、比較材料がたくさん転がっていますよね。ですが、これでは心がへとへとに疲れてしまいます。
考えてみてください。他人を基準にした幸せが、あなたが心から望む未来でしょうか。他人や世間を基準にする「他者中心」をやめて、「自分中心」に軸を戻すことが、将来の不安を打ち消すたった一つの方法といっても過言ではありません。
―― “他人や世間がどう見るか”を基準に考えるのではなく、“自分がどうしたいのか”を軸に考えることが大事だと。
石原さん:他人の顔色を窺ったり、相手の言動に左右され、他者を軸にして、物事の捉え方や行動を決めるのが「他者中心」の生き方です。「~しなければ」というべき思考の人は他者中心に陥りやすい。一方、「自分中心」というのは、自分の気持ちや感じ方を大切にする、優先するということです。他人ではなく、自分自身に関心を向けて、自分の価値を高めることを目指すものであり、私が長年提唱している「自分中心心理学」の考え方です。
――ですが、組織や集団の中で、自分の感情を優先するのは、“自己中”になりませんか?
石原さん:自分中心が、“自己中”と違うのは、お互いに「相手を認め合う」という点です。欲求をぶつけ合うよりも「話し合おう」とします。そのプロセスで理解し合ったり協力し合ったりできるでしょう。それに、⾃分を信じているから、欲求ややりたいことを素直に認められる。周りの雑⾳を気にせず、好きなことを楽しみながら継続できるから、成功への確率も⾼まります。
老後不安の問題にしても、ネガティブな面ばかりに焦点を当ててしまうと、視野が狭くなって不平不満でいっぱいになり、動けなくなります。ただし、社会環境を変えるのは難しくても、自分の環境は変えることができる。どうすれば自分を守れるか、大切にできるかという発想を常に持っておけば、不平不満をこぼすだけでなく、老後の不足分を埋めるために今できることはなんだろうと、前向きな発想がわいてくるはずです。
★第2回『イヤな仕事を辞められない・収入が上がらない理由は「心のクセ」にあった』に続きます
教えてくれたのは……
石原 加受子(いしはら かずこ)さん
心理カウンセラー。「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所「オールイズワン」代表。心理学校メンタルヘルス学会会員、厚生労働省認定「健康生きがいづくり」アドバイザー。独自の心理学で性格や対人関係、親子関係などの改善を目指すセミナー、カウンセリングを28年以上続け、老若男女にアドバイスを行う。『誰にも言えない「さみしさ」がすっきり消える本』『「あの人とうまく話せない」がなくなる本』『「自己肯定感」の高め方 「自分に厳しい人」ほど自分を傷つける』などのベストセラーも
取材・文/西尾英子
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